プロローグ…過去と現在…
「嫌、行きたくない」
それが私の口癖だった。今の私は嫌なものを拒否し、自分という大事な大事なものだけを守る、卵の殻のような存在だ。でも私はそれでいい。別に最後に困るのは私だけだし、周りの人に迷惑になったって他人なんて知るわけもないから。
1年前。それが全ての始まりで、終わりだった。幼い頃は優しかった父も景気の荒波に飲まれ、会社をクビになった。それから父は酒と暴力に明け暮れ、母も私もボロボロになった。毎日のように借金の取立てがやってくる。私と母はそれを影に隠れ覗いているだけ・・・。大好きだった父がお金を払えず殴られているのをただ無感動な瞳で見つめていただけなのだ。
ある日のことだった。それは突然で、心のどこかでは分かっていたこと。だからあまり驚きはない。しかし、胸にぽっかりと穴が開いてしまった。それは、恐れていた母の死。父が振り翳したナイフを、母が受け止めた。最初は私に向けられての刃が、母の奥に奥に、赤い染みを滲ませながら沈んでいく。それを、やはり感情のない表情で、小首を傾げて見ていたのが私。父はその後、どうなったかは分からない。そこから私の記憶はぱったりと途絶えているのだった。
私は今、義父母の家に住んでいる。義父母というのは、私は養子にとってくれた偽りの親だ。・・・偽りの親、なんていう表現は彼らに失礼かもしれないが。あの時、行く当てがなかった私を拾ってくれたことは感謝している。もっとも、私が本当に感謝なんていう気持ちをまだ持っているのかは分からないけど。自分でも自分のことを分かりきれていないなんて、なんと滑稽な話だろう。
義父母は本当の父と母の出来事を知った上で引き取ってくれた。しかし、彼らは私があの日のことを覚えていることは知らず、よって私が義父母のことを本当の父と母だと思っている、と思っている。だから必死にそれを隠そうとしている。それも私の前では無意味なのだが。
そして今に至る。現在の状況は不登校。そして無感情。私に残ったのは虚無虚像の世界のみ。偽りだらけの身体。
「なんかもう、笑っちゃうよね」
誰に聞かせるでもなく呟いた、この先真っ暗な私の人生。
ここまで読んでいただき、感謝します。いや、まったく短いですね。まあそれは仕方が無いということで見逃してください。見逃せない方は頑張って見逃してください、お願いしますごめんなさいごめんなさい!
今回は長めのあとがきですねー。
とにかくありがとうございました!実はこれはニコッとタウンで思いついたのですが、投稿したくなってこちらを本編としました。ニコッとタウンでの名前はマイページにて公開中ですので、よろしければお友達になってください。人格がかなり変わっていますがねw