青春と即落ち二コマ
隣の席の女子が授業中に育てた練り消しが、視界を遮るサイズになった。
恋も青春も、たぶんそこから始まる
「あのさ、さすがに学校でこれはまずいんじゃない?」
そろそろ視界を遮りそうなこの物体。
……。いや、物体の奥にいる渡辺さんに話しかけてみる。
「ね、これ、どうしたらいいのかな?」
そんなの俺が聞きたい。
「とりあえず。小分けにして学校全員に配ってみる?」
そう提案すると、渡辺さんは嬉しそうに、顔は見えないから声色だが。
「おー。佐藤くん、天才じゃん。ジーニアスってやつですねぇ。」
はは、ダブルミーニングですか?
同じ意味ですが。
放課後。その物体の解体作業が始まった。
「ここまで練り消しを育てられるなんて。すごいね。」
そう。これは練り消しである。ダークマターではない。
「まあ授業中とか暇な時にね?」
渡辺さんの短く切られた髪が照れた顔色を隠す。
お願いだからダークマターを制作する前にシャーペンをノートに走らせてくれ。
そう思いながら黙々と作業を進める。
「佐藤くんってさ。女の子に人気だよね。」
え?そうなの?え?誰がそんなこと言ってるの?俺ってイケメンなのかな?
いや、ここで質問攻めしたら人気である俺の名が廃る。
「コホン、そうなの?」
よし。だいぶスマートなはずだ。
「うん。なんか修学旅行で佐藤くんの話になって、それから噂になってるよ。」
まっじか!誰?俺彼女いないよ?
「はは、照れるな……。」
少し作業の手がぎこちなくなった彼女の顔を見ると、夕焼けに照らされ赤く染まっていた。
「あのさ、良かったら。私とその、付き合わない?」
……。……。
この俺にもついに春が……。
昇天しそうな心を身体に押し込み唾を飲み込む。
返事はもう決まっているのだ。
「もちろん。俺で良かったらぜひ。」
少しの沈黙の後、彼女の顔がパァっと咲く。これがほんとのダブルミーニングってやつだ。
その瞬間俺たちの目の前のダークマターが巨大な音を立てて弾け、その中からパレードの集団が列を成し、マツケンサンバを歌いながら軽快に出てきた。
『え?』
なんだこれは




