『経範の腫れ物、性信親王の加持にて平癒し、経範速記すること』速記談3048
平経範僧都がまだお若かったころ、耳の下に腫れ物ができた。治療を試みたが効果はなく、医者に言わせると、死に至る病だとのことであった。性信入道が、夕刻から深夜まで加持祈祷を行ったところ、腫れ物が破れて膿と血が流れ出て、たちまちのうちに治ったという。このときの膿と血で書いた速記文字が、経範の子孫に伝えられているらしいが、誰も見たことがないという。
教訓:誰も見たことがないというのは、見つからないとか、言い伝えが誤っているということではなく、何か気持ち悪いので誰も探さないだけのことである。