表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

宇宙会からの誘い

東京都大田区南千束、かの有名な東京工業大学の近くに建つ、緑色の一軒家。まるで北欧の家々を連想させるカラフルなお家に囲まれた家賃7万2,000円(共益費込み)の私の家は、付近では「幸せのお家」と呼ばれている。かと言って、住む人が皆大金持ちになって出て行ったとか、住人の仲が特段良いとか、祈れば子宝に恵まれるみたいな、言うならば一種の呪いのようなタグ付きのお家というわけではない。


摩訶不思議で、怪奇で、世にも奇妙な逸話が特段あるからという理由でなく、単に夏になるとつばめが巣を作るからだ。ちなみに余談だが、私の部屋のベランダには、スズメバチが巣を作ろうとしていたこともあったが、巣が完成する前に、なんとか決死の覚悟で阻止した。


とは言え、私が入居した10年前は、そこにそれはなかった。スズメバチじゃなく、つばめの巣の方だ。卵が先か、鶏が先か、なんて議論があるか、この場合、つばめの巣ではなく私が先だ。頭からお尻まで読むのに数十分はかかる契約書(その大半が理解不能)に捺印し、電気、水道、ガス等の営業電話に応対し、最後の砦、wi-fi開設を終え、やっとの思いで住み着いたのは私が先だ。その思いを君は知っているのか、つばめくん、そう思う。それと同時に、これがつばめではなく、ねずみやカマキリとかだったならば、スズメバチのように駆除されていただろう。幸せの象徴として崇め奉られる貴重な存在でなければ、駆逐されていたろうに。そんな身にも肉にもならないことをつらつらと考えていると、電話が鳴った。非通知だ。


「木南さんのお電話番号でよろしかったでしょうか?」


聞き覚えのない声に、私は若干たじろぐ。


「はい、木南ですが……」


「モンテローザでお電話いただいた田中です」


私ははっとし、急いでメモを開き、ペンを握りしめる。


「あ!先日は突然すみませんでした、宇宙会の方はどうですか?私は認められましたでしょうか」


半年前にカフェで言われた事は二つ。

①主催がメンバーを直接選抜すること

②最初の勧誘はTwitterのDMで来るため、宇宙会参加の意思をツイートしつづけること。その際は#宇宙会と#plzhmgの2つを必ずつけなくてはならない


小学生以来していなかった「遊び」をしているような、体験型ゲームに参加しているような感覚だった。ただし、私は正直この茶番に終止符を打とうとしていた。なぜなら、田中からの連絡がここ数ヶ月来ていなかったからだ。


「ごめんなさいね、色々あって連絡できていなかったけれど、おめでとうございます。選ばれたみたいよ。今日中にDMをするらしいわ」


田中の覇気のない声を聞くと、少しばかり不安になるが、同時に私はかつてない多幸感を感じていた。何かに選ばれた経験はあっても、結果的に周囲が評してくれていただけで、自分が能動的に行動した結果の功績でないことがほとんどだったからだ。気がつくと、電話は切れていた。電波でも悪いのだろうか、と機内モードをオンにしようとした時、スマホの通知が鳴った。


「おめでとうございます♪ あなたは宇宙会のメンバーに選ばれました。詳しくはポストをご確認ください」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ