第2話 アルブの森
アルブの森
それは、未だに全容が知られていない謎多き森。
原因は森の広大さに加え、多数の凶悪なモンスターが生息しているからである。
今まで、幾度となく人が足を踏み入れては返り討ちに会い、人々にとってアルブの森とは恐怖の象徴として知れ渡っている。
そんな森で、1つの戦闘が繰り広げられていた。
「前衛に人を当てろこのままだともたないぞ!」
「後衛に負傷者を運べ!」
「誰かこっちを援護してくれ!」
次から次へと来る騎士達の状況報告に聖女ユアは涙を滲ませる。
(もう、どうしたらいいの?)
「アルブの森を調査せよ」
との王命を受けて、アルブの森へ騎士達と来たユア。
最初は順調そのもので、噂に身構えていた騎士やユアも安心していた。
出てくるモンスターもビットというウサギに似たものや、スライム程度。
楽観視していた訳では無いが、緊張が緩んでいたまま森を進んでしまい………………
「正面からゴブリンが複数現れました!」
「後方からもモンスター出現。囲まれました!」
いつの間にかモンスターに囲まれ、逃げる事が出来ない状況に追い込まれていった。
戦闘が激化するにつれ、モンスターの数は増えていき、それに比例するかのように強さも増していった。
(もっと慎重にしていれば)
ユアは後悔するがもう遅い。
戦闘が始まるとユアは負傷者の手当を行う。
ユアは王国から認められた聖女であり、回復魔法を得意としている。
それ故、モンスターと戦う力は持ち合わせていない。
「ヒール!」
今もユアは回復魔法を唱え、負傷者の治療にあたるが
「前衛、負傷者多数!」
「動けるものは前へ出ろ!」
モンスターの猛攻により回復が追いつかない。
(私の魔力も少なくなってきた。このままだと皆さんが………………)
みるみるうちに状況が悪化を辿る中、
ギャギャギャーーー!!
前戦からうち漏らしたのだろうか、ゴブリンが1体こちらへ襲いかかってきた。
ユアは回復の魔法しか習得しておらず、護身用の武器も持っていない。
(殺される!!)
思わず目を瞑るユア。
それを見たゴブリンはニヤリと笑い、持っていたナイフを容赦なく振り下ろす。
しかし!!
ギィ!?
そのナイフがユアに届くことは無かった。
何時までも来ないナイフにユアは恐る恐る目を開く。
「えっ!」
視界の先には本来ユアに届くはずだったナイフが、1人の男によって弾き返されていた。