#43 「俺やります!」
「さて、中間テストも近づいてるが次の行事のお知らせだぞー」
児玉先生による気だるげなHRが進行する。
「せんせー、テストは行事じゃないと思いまーす」
「何言ってんだ。学生の本分は勉強だぞ? 勉強を放棄したやつに、遊ぶ資格はないと思え」
そんな脅しに、教室からは「きゃー」「先生きびしー」といったわざとらしい悲鳴が飛び交う。いつもながら愉快なHRだ。
児玉先生は、活発なグループに属する生徒からはタマ先生と呼ばれる、人気の高い教師の一人だ。距離感が近くはあるが、こうして締めるところは締めてくれる。風貌さえ無視すれば、いい教師なのだと思う。
それにしても、中間テストに続く行事とはなんのことだろうか。
去年を振り返らずとも、先生が答えを発表してくれた。
「今日は体育祭の実行委員を決めたい。興味があるやつ、いるか?」
声かけに反応する生徒はいない。さっきまで騒がしかった連中も、今は影を潜めている。
「いないなら、今朝サボってた――……おっと」
危うく俺が指名されるというところで、一人の生徒の手が挙がる。
俺を助けてくれた救世主は、なんと綾瀬だった。
「綾瀬か。自分から手を挙げてくれて、先生は嬉しいぞ」
「は、はい……! 頑張ります……」
ありがとう、ちーちゃん……!
心の中で綾瀬を崇め奉り、柄にもなくあだ名で呼んでしまう。
「じゃあ、女子は綾瀬で決まりだな。実行委員は男女一人ずつだから、あとは――」
「はいはい! 俺! 俺やります!」
児玉先生が再び俺に狙いを定め絶体絶命になった瞬間、拓斗の宣言が教室に響く。
ナイスだ! とこれも心の中で拓斗に称賛を送る。改めて考えてみれば、綾瀬に気のある拓斗なら立候補するのは目に見えていた。
運良く実行委員の手から逃れることに成功し、俺は机の下で拳を握り締める。
「分かった、矢川と綾瀬にお願いするな。困ったことがあったら遊佐を頼るんだぞ。あいつなら、どんだけこき使っても構わない」
「なっ……!」
「分かりました!」
「あ、えっと……いいんですか?」
俺、拓斗、綾瀬は三者三様の反応を見せる。
先生め、意地でも俺に仕事を押しつけるつもりだな……!
苦虫を噛み潰した気分で教卓に目を向けると、したり顔の児玉先生と視線がぶつかる。
……してやられた。今回は完全敗北だ。そもそも、日直を忘れて遅刻しかけた俺が悪いと言われればそれまでなのだが。
ここで下手に物申して、実行委員を強引にやらされても困るからな。最低限の被害だと言い聞かせ、泣き寝入りすることを決めた。
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