表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/64

#39 「今回の舞台は――」

 瞼を開ける。辺りを見渡す。この手の既視感は、回数を重ねれば重ねるほど強くなるものだ。

 どうやら俺は、三度夢の世界にやってきてしまったらしい。


「今回の舞台は――」


 馴染みのある白い床、規則的に並んだ机と椅子、群れる若人。懐かしさを感じる、一年D組の教室だ。生徒の衣替えも済んでおり、すっかり秋の装いとなっている。残念ながら喧噪はくぐもっていて、当時の再現は雰囲気止まりといったところだった。

 壁にかけられた時計は、十時半を指している。二限が終わったばかり、三限までの休み時間のようだ。


 さて、どんな夢を見せてくれるんだ?


『勇、とぼけた顔してどうしたんだ?』


 多少のワクワクから現実(といっても夢の中)に引き戻したのは、未だワイシャツだけの拓斗だ。


「あぁ、拓斗か。ちょっと考え事をな」


 知った顔に出会い、安心感を覚える。今回は夢の住人とも会話ができるみたいだな。ここで「今って西暦何年だ?」なんて聞けば、タイムリープごっこが捗るというものだ。

 俺の内心に反して怪訝そうな顔を浮かべた拓斗は、軽い足取りでさらに距離を詰めてくる。それから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


『なぁ勇さんよぉ、聞こえてるなら返事してくれって』


『あぁ、拓斗か。ちょっと考え事をな』


「……!」


 拓斗に返事をした相手、その声を聞いて弾かれるように振り返る。

 そこにいたのは、他の男子生徒同じく学ランに身を包んだ俺――一年前の遊佐勇だった。顔には靄がかかっていてよく見えないが、あれは俺だ。あの席、あの口振り、俺自身が俺だと保証する。


『考え事? お前らしくもないな』


『うっせぇ、俺だって考え事くらいするっての』


『本当か? どうせ神楽先輩との妄想とかだろ?』


 それをきっかけに、懐かしい場所での懐かしいやり取りに火が点く。半年程度の過去を「あの頃は良かった」なんて懐かしむつもりはないけど、ノスタルジーという気持ちは理解できた。


 この頃から色んなことが変わった。俺と拓斗は勉強に取り組んでいるし、伊沼と一つ屋根の下で暮らしているし、神楽先輩と話す機会も増えた。それに、俺の周りには悪魔がいる。あそこで話している俺には想像もつかない出来事が、この先彼を待っているのだ。


『拓斗、今日のノート頼んでもいいか?』


『なんだ、サボりかよ』


『そんなところだ』


『昼はどうすんだ?』


『来なかったら来ない』


 そりゃそうだろ! という拓斗のツッコミを背中で受け、俺(区別できないから、以後イサムとする)は教室を去ってしまう。

 どうしてだか分からないが、ついていくべきだという直感に突き動かされ、俺はその後を追った。


 イサムはあてもなく外に出て、気の向くままに校内を歩き回っている。

 どうして俺がそれを知っているかって? それはもちろん自分のことだからだ。俺も基本、ぶらりぶらりと気まぐれに散歩している。屋上の鍵が壊れているのも、散歩中に見つけたものだったりする。


『ん?』


 空中廊下の道中で、イサムが何か見つけたようだ。彼の目線の先は中庭、俺も身を乗り出して様子を確認する。


「あれって……」


 中庭の角のぽつんとした人影。いや、事情を知らなければそうとすら認識できないあれは悪魔の影、小さく身を縮めている伊沼だとしか考えられなかった。


「……驚いたな」


 これは夢だ。でもただの夢じゃない。魔法によって封じられた記憶、その再現だった。

お読みいただき、ありがとうがとうございます。

面白い、続きを読みたいと思ったら、☆評価や感想などを頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ