#27 「それは、面白い試みかもしれませんね」
「さて、今日君たちに集まってもらったのは他でもない」
一見、厳かな空気に包まれたようにも見える俺の部屋には、二つの違和感があった。
一つは、最近見慣れてきたもの。俺は顔を左に向け、こちらを見つめる伊沼に目をやる。やはり尻尾さえなければ、彼女がサキュバスであるとは思えない。
そしてもう一つは、全く慣れないもの。伊沼の反対側にぺたんと座るショートカットの人物……いや、吸血鬼の神楽先輩にも、一度視線を向ける。
どうしてこの二人が俺の部屋にいるのか。それは――
「今後の二人との接し方について、俺から提案がある」
「提案……」
「ですか?」
「俺は常々思ってたんだ。どうして伊沼と神楽先輩は、いつも争ってばかりなんだろうって。二人が戦いたい気持ちも分かる。でも、それじゃあ俺が二人のことを全然知ることができない」
先輩に対してタメ口なのは、同級生とごっちゃになっただけというわけでもない。ここでガツンと強めに言うことで、話の進行を握ろうという作戦だ。
二人はいつになく大人しいどころか、互いに顔を見合わせている。よし、この話し合いのペースは俺のものだ。
「そこで一つ考えた。俺が二人と別々に会うのはどうだろう。そうやって一対一で接することで、仲も深まると思うんだ」
「それは、面白い試みかもしれませんね」
最初に感触の良さそうな声を上げたのは、神楽先輩だった。
ふっと向けられた流し目が、狙いを定められたようで思わず身震いする。
「互いに邪魔されず、遊佐君にアプローチをかけられるってことですよね?」
「そ、そういうことになりますね……」
「私も賛成よ。それなら、この間みたいにデートの途中で、誰かさんの邪魔が入ったりすることもないしね」
思ったより前向きに検討してくれて助かった。これでひとまずは、喧嘩に頭を悩ませることはなくなりそうだ。
「二人ともありがとう。それで、分け方なんだけど……」
「曜日とかでいいんじゃない? 土日はそれぞれだとして、平日は前後半で分けるとか」
「私は構いませんよ。ただ……一ついいですか?」
「なんですか?」
「もうすぐテスト期間ですよね。せっかくなら勉強会を開きたいなって思ってたんですけど、これも別々になっちゃいますか? ……私、一度くらいやってみたくて……」
そういえば神楽先輩、周りから一目置かれてるとか言ってたっけ。意外とそういうことに憧れたりするのかな。
五月の中頃に控える中間テスト、その二週間前からが所謂テスト期間というものにあたる。部活をはじめとした放課後の活動が全て停止し、早く家で勉強しろと言わんばかりに帰宅を急かされるのだ。
そんな時の名物として、数人で集まる勉強会がある。授業を拓斗とサボり続け、前日一夜漬けだった俺にも無縁のイベントではあったのだが。
「テスト期間入ったら忙しくてそれどころじゃないと思うんで、実行に移すのはテスト明けでいい気がします」
「じゃあ、遊佐君に張り切って勉強教えちゃいますね」
ガッツポーズを構える神楽先輩は、気合いの入った様子だ。その姿に、さすがの伊沼も下手に口を出すことはなかった。
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