優しい彼女と元殺人鬼は幸せを半分にする
「ツミランダまでお願いします!」
若い女性が寄ってきた。
「ツミランダですか。30キロなので2000円もらいますね」
「はーい」
ツミランダ。
森林に囲まれた村で買い物とかになると他の街に行くしかない。
この女性も何か用があってここにきたのか。
それともツミランダを訪れたいのか。
馬車は動き始めた。
「今日も頼んだぞ。カルマ……」
と言っておでこをカルマの頭につけた。
俺は運転しながらお客様と喋るという方針でやっていこうと思う。
「24キロなので約70分ですね! 今日はツミランダになんの要件ですか?」
と俺が尋ねると女性はこちらを見て、
「私はツミランダの住人です!」
と笑顔で答えた。
「そうですか。じゃあカロットミンでは何を?」
「あー、母親が倒れていて……その薬草を買いに来たんです」
と暗い表情で女性が言った。
「ごめんなさい。深刻な話なのに……」
と俺が謝ると女性は、
「全然いいですよ! あなたのお名前は?」
と尋ねたので、
「俺の名前はミレイです」
と答えると、
「ミレイ! 素敵なお名前! 私は名前はセレナ! お願いしますね!」
と言ってくれた。
とても久しぶりに人の優しさに触れた。
「セレナさん……山を越えなければいけません。結構揺れてしまいますが大丈夫ですか?」
「全然大丈夫ですよ!」
そして坂道も凸凹道も、曲がりくねった道も乗り越えて山のかなり上に来た。
木々が沢山あるが先に少し木々が抜けているところがあったので、俺はセレナさんに、
「セレナさん! 絶景まで……3! 2! 1!」
と言うと、
「え!? 何何!?」
ととても戸惑った。
そして3秒後、木々から光が漏れてまるで、真っ暗なトンネルから出たかのような日光が差し込む。
そして周りを見ると山々が連なって、草原があったり、崖があったりした。
「すごい! 絶景!」
とセレナさんは感動していた。
そして山を降り、大草原に入る。
カルマも野生に戻ったかのように元気に走り、高スピードで草原を抜けた。
そして森林に入っていった。
「ミレイさん、ありがとうございました」
「はい、大丈夫ですよ」
「私、毎回あの街まで歩いて、近道とか知らないから2日間かけて歩いていくけど、あんなに涼しかったの初めてだったし、絶景も見れました! ありがとうございます! 楽しかった!」
「そう言って貰えて嬉しいです! 俺もあなたの幸せを半分味わえて幸せでした。福はお裾分けですね」
「福はお裾分け……すごい考え方! 参考になります」
と話している間に村に着いた。
家は主にツリーハウスで、畑が多かった。
「それじゃっ、ありがとうございました!」
「はーい!」
運び屋。
めちゃくちゃいい仕事だなぁ。
「カルマ……お疲れ様。ご飯にしようか」
今からまた……
カルマとも幸せのお裾分けだ。