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観光2

004



「なぁ、ミクレさんは?」

「え?ミクレ、まだ来てないの?」


え、いや、こっちの台詞だけど。あれ?集合場所はここだって言ってあったよな。何か、トラブってるのか?


「じゃあ、ミクレの家に寄りつつ、目的地に行こうぜ?な、ライル!」

「いでっ、あ、おう。」


ガシッと、肩を掴んでくる。

うん。痛い。

俺が大人だったら、そのくらいでも構わないんだが、まだ体は子供なんだ。

しかも、ここは王都のど真ん中なんだぞ。人は多いし、そんなことしてたら、変な目で見られるぞ。ほら、あんな風に。

ライルが視線を向けた先には、苦笑いで見てくる人たちが、いた。


「さ、この先をずっといけば、ミクレの家だぜ。あれ?ライル、お前、3年も一緒にいたのに、1回も行ったこと無いのか?」

「ああ。行ったことないな。ちなみに、王都から出たこともない。」

「マジか。それ、ヤバイぞ。」


ってか、行けねーよ普通!こんな子供が、一人で女子の家訪ねていったら、不審がられるわ!

そして、お前は子供の俺と話して笑っている、不思議な男子だ。いい年して、子供とじゃれてどうすんだ!最近なんか、馴れ馴れしいし。昔のラルギルが良かった…ちょっと、怖くてそれでも頼もしくて少し優しい。そんなラルギルが良かった…


「それにしても、どれにしても。おかしいなぁ…ミクレがおくれたりしするなんて、早々ないのに…何か、事件に巻き込まれたりしてないよね?」

「それは思ったが…」

「お兄ちゃん、浮遊使って、飛んでいこうよ!」


そう簡単に言ってくれるが、楽なもんじゃないんだよ。MPは、大幅に削れるし、案外疲れるんだ。


「俺のMPの事も考えてくれよな。」

「大丈夫!」


何が大丈夫なんだよ。


「これがある!じゃじゃーん!MPポーション!」

「……」


ほう、それで回復できるのか…って、知ってるわ!!俺も持ってるし。俺が言いたいのはそう言うことじゃないんだよ…全く、しょうがない。


「ほら、3人で1つで済むように大きめに作るから、待ってくれ。」

「お兄ちゃん、やっさしー!!」

「3人乗りか。俺は、そもそも浮遊ってのに乗ったことないな。ハハハ、楽しみだ。」


ラルギル…何か、気持ち悪いから、お前だけ走っていけ。


「行くぞ。落ちるなよ。落ちても拾わないけど。」

「おっけー!」

「おう!!」


いつもより、少し大きめの浮遊魔法が、ライルたちの足の下に出来て、ライルたちを運んでいった。



「道案内は頼んだぞラルギル。」

「おうよ!任せとけ!」


そんな、満面の笑みで答えられても、何か、安心できない。不安しかない。


「うおおお!?これ、思った方に進むのか!?凄いな!魔法陣の力って凄いんだな!!」

「あぁ、引き続き、道案内を。」



お、そろそろか。何か、バカでっかい屋根が見えるのは気のせいか…?


「着いたぜ。ここが、ミクレの家だ。」

「ここが…?」


さっきの屋根は、気のせいじゃなかったらしい。城のような、形をした家だ。これは、相当な金持ちだ。貴族だ。

──そう言えば、俺の前の家と比べると…いや、比べるまでもない。あんなぼろい家だが、あれでも俺のお気に入りで、この家には負けるが、自慢の実家だ。──

これは、入る気が失せる。こんな豪邸にこんな俺が足を一歩でも踏み入れても良いのだろうか…


「お兄ちゃん、行くよ?」

「あ、ああ。」


コンコン。


「すみません。ラルギルと申します。」


ガチャ


「何でしょう…」

「あ、どうも。ミクレさんはいますか?」

「いますが…今は出れませんね。」

「それはどういう…」


今日は、午後から観光しようって話をしていたのに、今は出れません?どういうことだ…?

深鈴は、じっと、屋敷のなかを見ている。

なにしてんだ?何か、見えんのか?

ライルは、中を覗こうとする。と、玄関でラルギルと話している冥土がその隙間を隠した。

何だ、あの冥土。何か、見られたくないもんでも隠してんのか?


「あの、どういう事ですか?」

「何ですか?無理だといっているんです。しつこいですね。そもそも、あなたはいったい誰なんですか?ミクレ様の何ですか?」

「あ?何ですかって、友達だよ。それ以外ない。」

「じゃあ、お帰りください。」


その対応は酷くないか…

ラルギルは、流石に頭に来たみたいで、キレる寸前である。

はぁ。でも、俺が行くと状況が悪化する。どうすれば…


「いいですか?今は無理なんです。帰ってください。」

「はあ?いい加減に、」


ヤバい。ラルギルがキレる。ああ!もう!


「待った。分かった。理由だけでいいから、教えてほしい。」

「…」


あ、またこれだ。

『何なんだこのガキは。偉そうに』

だろ?これは、俺が成長しないと解決しない問題だから、出来ればほっといて欲しい。


「お願いします。本当に。」

「はぁ、こんな子供に頭を下げさせる大人がいるのだとしたら、その人は相当な恥知らずななってしまうわ。」


と、嫌みったらしく言って、ラルギルの方を睨みながら、どうにか話してくれた。


「最近、ミクレ様は魔法以外のお勉強をなさらないのです。その理由が、冒険者として、魔法だけを学びたいと言うのです。あ、そう言えば…あなた方は…冒険者でしたでしょうか?」

「そうです…」

「じゃあ、あなた方が、ミクレ様をあんな風にしたんですね…」


だんだん声が低くなって、口調も変わっていった。

怒っている…ああ、悪い予感がする。






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