噂をされた。
002
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「くしゅっんっ!」
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ。」
今のは…くしゃみじゃない。くしゃみだけど、風邪の時のくしゃみじゃない。噂されているときのくしゃみだ。誰かが、俺の噂を……
「準備が整いました。もう、始めますか?」
「そうだな。静かにしていろと言っておけ。」
「はっ!」
まぁ、俺の噂をする奴なんぞ、俺に恨みを持った奴か、あと思い当たるのは…ま、そんなわけないがな。あいつは、そこまで引きずる奴じゃない。風の便りだが、あいつはもうこの世界にはいないだとか、そういう話だ。どっかから、流れてきた噂だから、信用ならんがな。
ギイィィィ…
「皆の衆!!よく聞け、理性が保てているのはお前らだけだ‼ここにいるお前らは、これから、世界のために尽くすんだ!」
「「「おおーー!!」」」
「お前らは、これから、この世界に災厄をもたらした、くそ野郎を倒すんだあぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「うおぉぉぉぉ!!」」」
はぁ。もう、疲れた。こんな風に、前に立っていたくない。
俺、もうこんなことしたくない……遊びたい。お米が食べたい。あの頃に戻りたい…
3年前。
あの頃、家族が凶暴化してしまって、気付いたら、俺も凶暴化していた。だけど、家族のように、その辺を暴れまわっておかしくなるような事はなかった。
だから、旅に出ることにした。
食料を求め、南へ、東へ。家がどこかわからなくなった頃、あいつに会った。
っていうか、あいつの食料にされるところだった。最初何を言っているのか分からなかったけど。段々、何か…俺を食いたいと言っていることに気付いた。
いや、殺す気か!?って、思ったけど、俺のように本当に食糧難に陥っているようだった。だから、協力した。困っている奴を、放っておけるような俺じゃない。
楽しかった。美味しい飯を食って、魔法をたくさん教えてもらって、、、
久しぶりに、家族といるという、そんな、幸せを感じた。
でも、長くは続かなかった。
砂漠で、嬢ちゃんに会って、あいつには返しきれない恩がある。だけど、あの兄妹の側にずっといれる訳ではなかった。俺には、限界があった。夜は、俺でいれるかいれないかの中間で、暴れまわるときもあった。それを、それで、迷惑をかけたくなかった。
だから、凶暴化していないように見えていた俺は、あえて、凶暴化したように見えるように振る舞った。
それで、あいつには、迷惑をかけないようにしたんだ。
あいつには、返しきれない恩がある。
ライル、いつかお前を助けるために、俺は今日も皆の前に立つ。
お前が、進む限り、俺は、お前を追いかける。
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