魔学生、嫌い。
001
「ねー、いい加減にはなしてくんない?」
「え?やだ。2年前のある日、学んだのよ。」
2年前…俺を放さない理由。あぁ、逃げたやつか。
2年前の今日、同じく皆で誕生日パーティーをしていて、同じく深鈴に連れ出され、放された瞬間、逃げたやつ。あれは傑作だった。
ズズズズズズッ
「深鈴さん。そろそろ、やめた方が…」
その通りです。ミクレさん…ウグッ…
「深鈴…のど…のどが死ぬ…息、いきがぁ…」
「ん?どうした?…あぁーーー!?兄ちゃん!大丈夫!」
深鈴がフードを引っ張って、いや、引っ張りすぎてライルの首に引っ掛かり、、、死にかけた。
「兄ちゃん!?大丈夫!?生きてる!?」
「生きてる生きてる。大丈夫。」
「兄ちゃん…死ぬかと思ったよぉ~」
お前が泣くな‼俺が死ぬかと思ったわ‼
ん、あぁ?何だ、あの、小学生は。魔法科学校の生徒か。あの目、俺嫌いなんだよなぁ。
「あ、ねぇ、見てよあれ。お姉さんを泣かせてるよ!お兄さんダッサ!」
「ねぇ、あれってさ、3年間ずっと休学中のライルっていう奴じゃない?何かどっかで見たことあるよぉ!」
「え!?マジで!!何それ、ズル休みってこと?うわぁ、ウケる!!」
ライルたちの横を、──ヒソヒソ話すような格好をとっているけど、全部会話聴こえてる。──二人組の少女が通っていった。
お前らは知らないのか?俺がこの国を救ったのを……実際、神様が女神を止めて一件落着っていう形なんだけど。
俺はこれでも、お前らより大人だし、俺はお前らの、『しあわせぇ~』を守る、土台なんだぞ。お前らを守ってるんだからな。もうちょっと尊敬しろ。
「お兄ちゃん?どうかしたの?あぁ、あの魔学生ね。そう言えば、ここを通るのを心底嫌って、いつも避けるようにして他の道を通っていたのは、あれに会いたくなかったんだね。」
うん。あってる。あってるけど、無駄に長いんだよ…なんの説明?
「そうだったんですね。ライルさん。そうとは気付かず…すみません。」
「あ、いや、3年間も言っていなかった俺が悪いんだ…」
て言うか、何で、ミクレが謝ってんの?ここは、深鈴が謝るべきところじゃないのか?
「ライル…あいつらの、言っていることなんか気にすんな。な?お前は正真正銘の、コドモダケド、勇者なんだからな!あんな!ガキと自分を比べるなよ!」
ん、んんん?何か、聞こえたんだけどなぁ。ま、気にしないでおこう。
「あぁ、うん。」
見た目が、子供なのはちょっとあれなんだけど。これでも動きやすくていいから、子供ってことは気にしないつもりだったのになあ。
子供ってのは嫌さ。特に女子。男子もそういうとこあるけど。
すぐ、くだらないことで、人の悪い噂をつくって、それを広めるんだ。それも、瞬間的な早さで広まるから、どういう連絡網持ってんだって思うけど。そこは、長所なんだから、長所を広めろよ。噂じゃなくてよ。
「……」
「な、何か、空気重くなっちゃったね。今日は、これでご飯にして、夕方は近くの町に観光でも行かない?」
「観光か、ま、たまにはいいんじゃない?深鈴が、レベル上げ、レベル上げって言って、いつもレベル上げじゃ、つまらないからな。」
「お兄ちゃん?そんなにレベル上げ嫌なら、カンストするくらいまで一気に上げちゃったら?」
あ、すいません。無理です。すいません、やります。地道にやります。はい。
「と言うことで、3年ぶりの、観光!!どこに行く?ミクレ!」
「え、わ、私ですか?じゃあ、深鈴さんの行きたいところで…」
「えー!?それじゃあ意味ない──」
深鈴が、ミクレに文句をいいながら、王都に向かって歩いていく。
3年間もずっとここで、レベル上げ、休んで、レベル上げ……ってやっていたのか。
お昼時か。太陽がギラギラと…暑苦しい。
太陽……そう言えば、ニト…今どこにいるんだ……