世界管理天使教
zzz…
*/*/6:00
朝の鐘がなった。
今日も仕事が始まる。
私は聖愛、聖なる愛にて世界を浄化するという意味だ。
かっこいいでしょ?
今日は第3005575951世界の点検をしに行く。
ざっと見てまわってその世界の発展具合をレポートにまとめる、それが私の仕事。
私が住んでいる第3世界は2次世界にあたる。
第0世界が最初につくった10個の世界のうちの1つだ。
そして、第3005575951世界は3次世界。
2次世界がつくった第0世界コピーのコピー。
世界の発展具合はそれぞれまちまち。
生物が発生している3次世界は約1億、文明が生まれたのが1000万。
なのに、どこも第3世界でいうところの中世程度の文明にしか発展しない。
理由はすべての世界が全力をあげてさがしているが、明確な理由はわかっていない。
世界というのはつながっているようで、たまに異世界に転移したり、転生したりする人もいるらしい。
*/*/9:00
転移の間にて順番を待つ。
私達に通勤電車はないけれど、転移待ちのこの時間はそれによく似ている。
転移にはたくさんの魔力を使う。
1人転移するのに30人の魔力が必要だ。
使った魔力を回復させるのに2時間くらいかかる。
転移の間の職員は、これを1日に60件程度こなすらしい。
*/*/10:00
ようやく第3005575951世界に転移した。
転移先は王都の教会だ。
まずは、情勢を確認しなくては。
「使徒様、ようこそいらっしゃいました!」
「ずっと昔にじいちゃんが見たっていう使徒様と同じだ!」
「奇跡じゃ!この国に奇跡がきた!」
転移した瞬間大勢に囲まれる。
「あー皆さん、私は使徒ではなく天使です。出迎えご苦労様です。」
とりあえず、異端民として追われることはなさそうだ。
なにより。
*/*/12:00
転移に問題もなく世界に異常もないようなので教会で昼食をとる。
中世らしくパサパサのパンに薄いスープ、お肉が入っているだけいいほうだ。
この世界に転生者、転移者はいないらしい。
世界の異常として、最もポピュラーなのは魔王の出現だ。
その場合、対抗策として第3世界から勇者を送りこむ。
次いで多いのが、勇者以外の転移者、転生者だ。
その場合、特になにもしない。
というか、対処のしようがないというのが現実だ。
転移者、転生者は世界の文化を発達させてくれる良い存在である。
内政チートバンザイなのである。
*/*/14:00
教会に怪我人、病人を集めて回復魔法を行使する。
恩を売り情報を集めるというと、聞こえはわるいが等価交換と言うには、私が与える方が大きい。
問題ない。
「学園に天才?とくに聞かないけど…」
「西の方はずいぶんときな臭いようよ」
「使徒様は、若くみえるのにさすがに魔法が達者さね」
特に転生転移といった出来事は何も起きてないようだ。
内政チートも起こってそうにない。
残念。
だってこのあとは、王宮で夜会に招かれているのだ。
でも、そこは中世ヨーロッパの文化。
美味しい料理には期待できなさそうである。
料理は美味しいに超したことはないというのに。
*/*/17:00
王宮の貴賓室で一休み。
回復魔法を使い続けるのも楽ではないが、簡単にこなしているように見せなくてはならない。
天使とはそういうものなのだ。
特に盗聴も透視もされていないようなので、今のうちにレポートの概要を作っておく。
いつも通り特筆すべきことはなし、と。
*/*/19:00
夜会が始まった。
貴賓席に座り皆から挨拶を受ける。
「私どもは海路を開拓しておりまして、ぜひとも天使のご加護をいただいたく………」
「それは大変ね。王国に天使の加護を」
「「わぁ!!」」
皆必死にアピールしてくるが、正直流している。
どうせ、二度とこない世界だし。
天使の加護というのもでまかせだ。
うまくいったら感謝されるし、うまくいかなくても100年後には衰退して直接文句を言える立場じゃなくなっている。
そろそろ、帰るための逆転移の魔法がかけられるはずなので、夜会を退出する。
ちょっと、最近労働時間長いんじゃないかな。
まあ、天使には組合も労組もないけれど。
zzz…
絶望した。
組織の歯車に成り下がっている『私』自身に。
こんな予知夢成立させてはいけない。
行動しなくては。
でも、何をすればいいの?
誰に相談すれば助けてくれる?
考えても答えは出ない。
ふと目をやるとそこには見たことのない魔法陣が描かれた本が1冊おいてあった。
読んでみると、どうも時空魔法についての考察らしい。
難しくて全然わからないけど。
とにかく、まずはこの魔法を調べることから始めよう。