第2話 出逢い!?
「兎にも角にも2人を見つけないと話は始まらないわ! それまでは一緒に行きましょ? その後のことはまたその時に考えればいいから」
「うん、そうする!」
「ところで、名前聞いてなかったね」
「私はリーフェス、これからもよろしくね唯お姉ちゃん!」
黒咲はリーフェスと一緒に路地裏から、大通りとは言い難いが、店があるような道に出た。
店があると言っても特に営業している様子はない。客など来ないのは分かっているので、そもそも営業する気もないのだろう。
なぜ客が来ないか知っているのかって?
そりゃ金持ってる人間なんていないからだ。ここガビューに金銭という感覚はない。弱肉強食。金を求めるのはほんのごく一部の人間だけだ。
ここの住民の主な活動領域は路地裏。このような人目に付く大通りには人が少ない。
「で、あれは明らかに私達狙いよね?」
「不審者かな?」
明らかに私達二人を待ち構えている青年がいた。彼の金髪はこの地ではあまりにも目立ち、この地に相応しくない輝きを宿していた。
「察しの通り、お前が探している2人の外の人間のうちの1人だ。名前を、ミシェル・ラヴクラフトという。『救世の敵』同士仲良くやろうじゃないか」
「私は」
「黒咲唯だろ、そこは知ってるから要らないよ。それよりもう1人ももうすぐ来るはずだ」
「それってどういうこと?」
いきなり現れて、怪しいヤツだ。
だけど、この世界に連れてこられている時点で普通でないのは承知済だ。何かしら、訳アリの霊格を宿しているのだろう。
「さっき、そこで見か
「ちょっ!? 避けなさい!!」
「えっ!? ちょっ、あぶね!?」
それは空から飛来してきた。訂正。
堕ちてきた。
「さっきそこで、なんだったっけ?」
「いや、なんでもないです」
ミシェルが何か言いかけている途中で、太陽に被さるようにして、地面に影を落としながら男が落ちてきた。
男と言っても青年、それこそミシェルと同年代だ。
ちなみに私、黒咲唯は17歳だ。
派手な土埃を巻き上げながら落ち、地面にヒビが入るほどの衝撃をその身に受けたはずだ。ピクリともしないということは開始早々に死んでしまったか?
「黒咲、人目に付くのはあまりよろしくない。場所を変えよう」
ここの住人は厄介事を避けるために接触はしてこないだろうが、それでも道の真ん中で長居するのは望ましくない。
怪我することは無いとしても、囲まれれば面倒だ。
「そうね。そこら辺の1つを貸してもらいましょ」
「そこら辺の1つ?」
「おあつらえ向きに店が並んでるじゃない? そこの1つよ?」
ミシェルの頭にはまだクエスチョンマークが浮かんでいるようだったが、理由が分からない。
「お邪魔しまーす」
「だっ、誰だ!?」
「少しの間でいいからここを貸してもらうわね。文句無いわよね?」
「ひいっ!? ありません!」
とりあえず、青年を布団に寝かせて、情報交換と共通認識でも確認しとくかな。あーでも、リーフェスのことも決めないと。彼と出会ってから何故か借りてきた猫みたいに萎縮しちゃってるし。
リーフェスは実はコミュ障とか? ……そんな訳ないか。
「なんでそんなに唖然としているの?」
ミシェルを見ると唖然として、口が半開きになったままポカンとしていた。
私に話しかけられて意識が戻ってきたのか、目をキッと細めて。
「お前はこの世界に染まりすぎだ!!」
と叫ばれてしまった。
はて? なんのことやら。
◇
「なるほど。つまりお前の元の世界でも弱肉強食主義はここと変わらないってことか。なら仕方が無いのかもしれないができるだけ止めてくれ。俺の良心がお前を攻撃しようとするかもしれない」
「んー、善処してみるわ。それよりも、起きないわね、やっと3人揃ったのに」
確かにこいつは俺の瞳でも何も映らない。超が3個くらいつく程の訳アリの霊格を宿しているのは分かる。
だが、それならあの白衣の8歳児は何だったんだ?
どちらにしてもこいつの目が覚めない限りは事態は進まない……か。
改めてその青年を見ると白髪は綺麗なものの、それ以外はどこか傷ついているように見えた。しかし、外傷はどこにも見当たらない。
服は囚人服。霊格以外にも訳アリのようだ。
「囚人服で思ったけど……やっぱりね。手足にアザがある。連れてこられるときに拘束でもされたのかしら」
黒咲は着目点は鋭く、賢そうに思えるが……どこかズレている。いや、俺の認識とズレているだけで彼女の元いた世界ではそれが普通の判断だったのかもしれない。
「………ん、ここは」
「起きたのね! 名前は? 自分がなんでここに居るか分かる!?」
おいおい、それだと尋問だぞ。と言いかけてやめる。
能力の性質上、俺は相手の瞳を見ることが多い。今、やつの目には文字やら数字やらが羅列して、一瞬にして消えた。
そこに羅列されていた言語はまず、俺の世界では見られないものだった。
そして、俺達は俺たちをここに連れてきた奴に不便しないように全ての言語を理解できるように霊格に刻み込まれた。
それが機能していない。つまり、奴の手の平からは外れているという事だ。
「システムエラーか? 機体番号0000、コードネーム、ゼツ。お前達は何者だ? おれ、はなやjwjqgak
かやゆは」
口を開いたと思ったらやけに機械的な声で話し始めた。だが、なんかバグり始めたぞ!?
「待て待て、落ち着けって! 1度口を閉じろ!」
「jgっ……。システム排除。見苦しいところを見せて済まなかったな。俺はゼツ、どこから来たかだったか?」
「ああ」
落ち着いたのか。 さっきのは何だったんだ? システムがどうとかこうとか。システム排除して良かったのか?
「……ここでは無いな。どこかは分からないが、もっと発展した場所だった」
「どこでもいいわ! ゼツ、これからよろしくね! 私は黒咲唯、こっちは」
「ミシェル・ラヴクラフトだ。よろしく」
「こちらこそ、助けてくれたんだろ? ありがとう」
「助けたと言っても何もしてないよ」
いきなり暴れ出すみたいなことは無さそうだな。
なら、本題に移らせてもらおう。
「本題に入るぞ。俺達3人は『救世の敵』。世界を救う英雄の前に立ちはだかり、英雄を殺して世界を滅亡させる可能性を持つ生命体。間違いないか?」
「そうよ!」
「ごめん、分からない」
ゼツは記憶喪失みたいだ。これがシステム排除によるものか、落下の衝撃によるものかは分からないが、長期的なものであれば面倒だな。
「ゼツは思い出した時でいい。世界を救うには二つの方法がある。まず1つは『救世の敵』である俺達が死ぬこと。もう1つは……世界を滅ぼす元凶、『原罪の悪』を倒すことだ!」
「うん、やる気出てきたわ!」
そう、俺達は世界を滅ぼす要因の一つ。元凶を潰せば、俺達が世界を滅ぼすことは無くなる。
それを成し遂げるためにここ、全ての可能性を殺せる神々の箱庭にきたのだ。