発光
カズマは早起きだ。
前日に遅くまで飲んでいたとしても朝六時には起床する。
今日も六時に起床して日課のトレーニングを始めていた。
昨夜のクラブでの出来事も一晩寝た事ですっかり頭の中から消えていた。
自分にメリットのないことは排除するからである。
トレーニングを終えた後シャワーをあびて朝食を食べる。
朝食の間にメールチェックをしてスケジュールをたてる。
ただ彼は表向きにビジネスの舞台には出て行かない。
ビジネスの仕組みを作りそれを他の人間に委任するだけだった。
それよりも彼は日頃から将来の危機に備えていた。
彼が住んでいる高層マンションの地下にはシェルターがあった。
そこでは約1000人が一年程暮らしていけるようになっており、水や食料も十分にあった。
『これじゃまだ足りない・・・』
それでも襲ってくる未来に対する不安と寂しさ。
カズマはそれらの感情を振り払う為にゲーム機を起動した。
VRのゲームをすることでカズマは気分転換をする。
それは現実からの逃避であったかもしれない。
カズマ:「さてと・・・」
ゲーム用のガンとゴーグルを装着し、ゲームをスタートさせる。
プレイするゲームはバーチャルシューティングゲーム「ゾンビハンター」
カズマはこの手のシューティングゲームを得意としていた。
ゲーム機にディスクをセットし読み込ませる。
その時何か別の機器の起動音が聞こえる。
ヴゥーン・・・
カズマ:「何だ?故障か?」
カズマはゴーグルを外しゲーム機を確認するが異常はなかった。
ヴゥーン・・・
だがなおも異音は続きカズマの周辺の空間が光を帯びてゆく。
カズマは自分の手や足、全身が光輝いているのを見て異音が自分から発しているのを悟った。
カズマ:「何だ?俺爆発すんのか?」
自分の異常に気づいても取り乱したりしなかった。
むしろかすかに心地よさを感じていた。
カズマ:「Knock-knock-knockin' on heaven's door~♪」
楽しげに口ずさむカズマ。
カズマは完全に光に包まれ、見えなくなった。
そしてギューンという音とともに光も消えて行った。
カズマの姿はそこにはもうなかった。