表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

狭い空

画像あります。作品右上の表示調整でオン、オフができます。画面が重い場合は、ご利用くださいませ。

2017/8/12 投稿

 今日は、川開きで花火が上がっている。

 ドン、ドンという音が、遠くで響く。

 客の入りも、いつもより少なくて、女郎たちはぼんやりと外を眺めている。


「今度の花火は、お前と一緒に」


 そう言った男の足が遠のいて、ふた月になる。

 女は、ひとり、遠い、その音を聞く。

 見上げる空は狭くて、暗い。華やかな花はどこにも見えない。

 男にはじめて会ったのは、昨夏の今頃。接待で常連客に連れてこられた――戯作者だという話だ。


「女郎は、身体は売っても心は売るな」


 その言葉を肝に銘じてきたはずなのに。

 いつの間にやら、男が描く戯作の女のような夢を見た。


――遊里はうつつで見る夢


 焦がれても、籠の鳥は、ただ、待つだけ。

 恋はまぼろし。儚い、夢。そして、夢は消えるもの。

 女は、来るはずのない男を、焦がれて待つ。

 空は狭くて。ひっそりと音は消えた。

 夜が更け――朝が来ても男は来なかった。


 待ち続けて。涙が枯れ果て――半年が過ぎた。


「花火には、間に合わなくて」

 少しやせた男が現れて。

 男は女を籠から連れ出した。

 見上げた広い空に、白い雪の花が舞っていた。


挿絵(By みてみん)


イラストは、デリリウム・トレメンスさまからいただきました。

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ