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8th.模擬戦闘は、鬼ごっこ?

何とか間に合ったぁ。


九月最後の更新。


とは言いつつも、ファンタジー大賞にはもう無理なので、通常更新と言うことで、更新しました。


本来なら、追記でお話していた通り、内容まで踏み込むつもりでしたが、冒頭のみと言う形にしました。


次からビュロー生たちの放課後ビュローを書いていきます。

 その頃、学園の戦闘領域ではいくつかのビュローが戦闘隊形や各人の戦闘能力の把握、簡易的な魔法の享受が行われていた。

「はい、では揃いましたね」

 その中で集団を作っている学園長が、揃った一年生を前に笑顔を見せる。

「では、本日のビュロー活動内容を説明します。よく聞いてくださいね」

 学園長の前に並ぶ生徒たち。みな他のビュロー生に比べ、家柄、経験などにより既に各々のバトルアスペとまではいかずとも、それなりの装束と装具、武具をあしらえていた。

「皆さんの能力を把握するのに、いちいち試合を見ても時間がかかりますので、今回は鬼ごっこをしてもらいたいと思います」

 学園長の爽やかな笑顔の一言に、空気が凍りつく。事情を聞いていた棗とルークも困惑の驚きを見せる。言っていることが違う。二人が顔を見合わせるが、学園長は続ける。

「ルールは簡単です。風椿棗、ルーク・スプリングフィールド両名には逃げ役を、その他の生徒諸君には鬼役をしてもらいます」

 唐突な申しに生徒たちは怪訝と小言が行き交う。

「はい、お静かに。鬼ごっこのルールをご存知ない方はいますか? ……いませんね」

 ほぼ有無を言わさぬ笑顔に、生徒たちは発言権を有していなかった。

「あくまで鬼ごっこですので、魔力、武力、作戦、罠などは各々の判断に委ねますが、戦技法ではないので、相手に大怪我を与えてはいけません。魔法学を各家庭に則り継承している子は、アカデミー魔法学第一般までの制限と、武術に関しては寸止め、もしくは簡易技まで。銃火器使役者は、模擬弾使用です。能力発動の難しい子もいるでしょうから、皆さんにはこの花を、頭、肩、胸のいずれかにつけて頂きます」

 学園長が配る花を、生徒たちがそれぞれ思い思いに、主に女子は頭に、男子は胸につけた。

「その花を落とされた者はバトルフィールドから離脱して下さい。攻撃の対象はこの花だけです。これは勝負ではありませんので、離脱したからと評価が下がるなどはありませんので、ご安心下さいね」

 淡々と説明をする学園長に、生徒たちの視線は何故か棗とルークへ。

「それから。これは各ビュローの進行状況も確認しますので、ビュロー生同士の行動を義務付けます。単独行動はくれぐれも起こさないよう、チームワークを発揮して下さいね」

 説明が終わったのか、学園長が生徒を見る。

「学園長先生」

 橘ビュロー生が問う。

「どうして、その二名なんでしょうか? これでは早々に終わると思いますが?」

 棗とルークを見て、そう言う。それはどこか挑発的にも聞こえる言い方。

「どうでしょう? それはやってみなくては分からないことですよ。スピリストを志す者であらば、少ない可能性でも、人々を守ることが出来ると判断できる以上、その可能性を捨てないことはとても重要なことです。我々スピリストは自己満足の為にあるわけではないのですよ」

 学園長の笑顔の言葉に、答えを見出せない生徒は、不満げだが、身を引いた。

「では、時間も余りありません。風椿、ルーク。君たちは単独行動をしても構いません。閉門時刻十分前がタイムリミットです。それまで逃げ切って見せるか、囚われるかの過程を見させてもらいます」

 ルークがそこで学園長に伝える。

「あの、僕らは二人で行動します」

「……話し合って、決めました」

 棗の後押しの一言に、少々意外そうに小さく口を開けるが、すぐに笑顔になる。

「そうですか。では、二人は逃げてください。十分後に他の皆さんはスタートです」

 学園長が杖を空に振るう。ウィンリードが空の彼方から翼をたたみ、落ちるように飛来し、地面すれすれで翼を開き、降り立つ。強風が生徒を波打たせた。

「私は空より健闘を見させてもらいます。では、二人はスタートして下さい」

「は、はいっ」

「……はい」

 ウィンリードに乗る学園長を合図に、ルークと棗が肯き合い、バトルフィールドの林の中へ駆けていく。同時に学園長も空へと舞い上がる。残された生徒たちは各ビュローごとに集まっていた。

 バトルフィールド内は様々な条件下を想定した作りになっている。森、荒野、水辺、岩肌、沼地、民間地、草原など広大な土地を有するセントパールアカデミーの特徴の一つ。モンスターも独自に繁殖し、生態系も存在する。より実践的演習を行える環境が整い、ガーディアンたちの監視もあり、安全確保もされている。

「……ルーク、君」

「はい?」

 森林に入ると、二人は行き先を直角に変える。場所を特定されない為に。

「……私たち、三十、三人を相手に、するん、だよね……?」

「そう、ですね。それもハーバリー先輩と同じ学園長先生のビュロー出身の同級生ですから、油断は出来ませんよね」

 二人の表情は、あまり良くはない。それはそうだろう。アカデミー屈指とされる四人のビュロー生たちと演習を交えた鬼ごっこ。遊びと言うわけには行かないことは理解しているのだろう。

「……作戦、考えよう」

「そうですね。ハーバリー先輩も言っていましたし」

 時間を見つつ、二人が速度を落とす。歩みは止めず、棗が背後を気にかける。

「……森林は、危ない、と、思う」

「僕らはどちらかと言えば、広域攻防向きですからね」

「……うん。だから、荒野、フィールドか沼地で、待つ、方が、良いと、思う」

 ルークが肯く。制服を着替えた二人は、ローブを深く被るルークと、フロンとは異なる袴姿の棗は、森林の中では異様にも映る。

「僕としては、多勢を相手にするわけですから、沼地の条件を上手く利用すれば、優位に立てると思うんですが」

 ルークの提案に、棗は小さく肯く。しかし、意見は深い。

「……アカデミーの沼地は、地盤自体が、弱い、から、私たちの動きも、制限される、かも」

 ルークが気づき、言葉を呑む。

「そ、そうですね。棗さんは槍術ですから、地盤の安定が必要でしたね」

「……ごめん、ね。魔法は、まだ、上手く使えない、から」

「い、いえっ。僕の方こそ、魔力コントロールが曖昧ですし、不安定な場所なら、余計に力が入っちゃいますから」

 ローブが揺れる。気を使われることが苦手なようで、相手が下手に出ると、あわわっ、と慌てている。

 そのとき、空からガーディアンの鳴き声が響いてくる。それが合図だと判断した二人は、顔を見合わせ肯きあい、荒野フィールドの方へ急いだ。

「……ルーク君。魔法はどんな種類を、使える、の、かな?」

「僕は、基本的には攻撃魔法系です。アカデミー魔法学第一般だと、防御系のシールアなら使えます。攻撃魔法系統はフレイヤですが、姉たちの手ほどきで、ブリズ、エレクト、ウィンブルまでは何とか発動出来ます。棗さんは?」

 名のある魔術師家系なのだろう。魔術師にはそれぞれが得意とする家系魔法属性がある。ルークにしてみれば、それは炎。だが、修練を積んだ者の手ほどきで、氷、雷、風属性の魔法も習得はしているらしい。それがほぼ確実と言う保証が無いだけで。

「……私は、効果属性で、風と土。基本は、槍闘術。でも、魔法学は、まだ……」

 効果属性とは、物理攻撃に伴う魔法効力。言わば、攻撃対象が雷系統者であれば、雷を吸収する土の攻撃は威力を増し、負荷をかける水系であれば、攻撃威力は減退する強弱点。棗は二属性らしいが、魔法攻防に関しての発動魔法は習得していないらしい。ルークとは正反対だ。

「いえ。まだ実技が始まってませんから、そんなに落ち込まないで下さい。僕だって戦闘術は何も出来ませんから」 

 魔法に長けるルークに引け目を感じたのか、棗が俯く。ルークが慌ててフォローをしている。

「と、とにかく、今の僕らはある意味で均衡が取れているんですよ。遠距離なら僕が攻撃出来ますし、接近されても棗さんの槍術があるんですから」

 二人して身の丈を越える杖となぎなたを持っている。施されている装飾と紋章は属性と家柄の印。お互いに実力は備わっている証拠だった。

「……うん」

 棗が取り直したのか、顔を上げる。ルークも、はい、と何故か頷く。

「……じゃあ、まずは、ルーク君の、魔法で、遠距離で払う。……それから、私が、出るから、交代、しよ」

「はい。では、棗さんが前に出た時は、援護します」

「……うん、ありが、とう」

 二人が森林を抜ける。そこに広がるのは、一面の肌色の土地と、荒野を行きぬくサボテンの数々。視界は開け、アカデミー方面の森林から鳥たちが飛び立つ。その上空にはウィンリードに乗る学園長が敷地内を飛び回っている。二人の上空を飛ばないのは、居場所を特定させるようなことをしない為のようだ。

「散開しているみたいですね」

 森林の動物たちとモンスターの騒々しさと、他地域からもビュロー活動している他のビュローとは異なる音が聞こえてくる。

「……すぐに、見つかる、ことは、ない、と思う。……でも、準備は、しておいた、方が、良いと、思う」

「そうですね。いつでも受けたてるようにしておきましょう。リースさんとハーバリー先輩の期待に応える為にも」

 ルークが魔術杖を立て、フードを深く被りなおす。表情に影が生まれ、魔力の解放に風の小さい中でローブが揺れ始めた。

「……頑張ろう、ね」

「はいっ」

 棗が髪を結っていた紐を一本解き、手首にはめていたゴムで垂れる黒髪を結い上げ、解いた紐で袖を捲り上げる。なぎなたの刃が日差しに輝く。

暗がルークだとすると、白と赤の袴姿の棗は明。そのコンビが、荒野の風に勝敗の時を待つ。鬼ごっこであれば、鬼から逃げるものだが、二人はその場で鬼を退治することを作戦とするようだ。

「で、でも、一斉に来られたら、恐い、ですよね……?」

「……その時は……その、時」

 だが、途端に新入生の不安が表れる。障害物に富む戦いの警戒心は常に消耗を促すが、ここは荒野。遮るものも、身を隠すものも無い広角平野ともあらば、総攻撃による一時の戦闘が激しい消耗を呼ぶ。それはそれで恐怖だ。



いきなり終わってますが、続きの展開的にあそこで終わらせてもらいました。


九月の更新も本作で終了です(九月最終日ですけどね)


次回より、通常更新しつつ、締め切りも無事に終わりましたので(追い込まれると意外と書けるタイプみたいです、自分ww)、趣味の賞応募作品と並行して、ここの作品の更新をします。


次回更新予定作は、久々に「ライブラリアン」です。

・・・かなり放置してましたので(^^;


どんなストーリーだったか忘れてしまったので、プロット探してからの更新ですから、十月五日頃に更新できればいいかなぁって感じです。


話は変わって、最近意味もなく浮かんだ青春系エンタメ作品と、仮想現実スパイ系と、どちらかといえばジブリ(魔女宅の世界観に近い)系朗らかファンタジー物を書いているんですが、暇があればここにupするかもしれません。要望があればですけど。無ければないで、一応本格的に仕立てている最中作品なので、賞応募用にでもします。

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