決闘!アランVSエディ!私のためにあらそわないで!?
「よし、決闘の時間だっ」
アランは目にクマを作ったまま叫んだ。
「アラン王子、おやめになってください」
「レイラ、下がってて。君は審判だ」
「らしくないですアラン王子!」
ムキになるアランには、レイラも違和感を感じたらしい。
それでもアランは食い下がらない。
「大丈夫。勝負はただのかけっこだよ。ケガも何もしないさ」
「アラン王子、走るの早いんですっけ?」
「そうだよ、自信がある」
(エディは……? エディはどれぐらい走れるの?)
鈍足とも速いとも聞いたことがない。すごく不安。
……仕方がない、あの手を使おう。
私は決意を固めた。
そして、決闘が始まった。スタート位置にふたりはならぶ。
「エディ、大丈夫?」
「オレは……勝たないとだから」
「リリアナ、僕にも大丈夫をちょうだい」
「アラン、もうあきらめてよ……こんないじわる、らしくないのに」
「だって、僕のリリアナだもんっ」
(アランは結構、独占欲が強いのよねー)
ゲームでもそうだった。普段は押しが弱いおっとり系なのに、レイラを取り巻く周りにはすぐやきもちを焼いていた。
それが、可愛いと思うんだけど……まさかこんな事になるとは。
「いくよ! レイラ、スタートを!」
「はい……スタートです!」
レイラの掛け声に、ゴールで私はふたりを待つ。
足の速さは、明らかにアランのほうが勝っていた。
アランも満足げに笑っている、その時だ。私が魔法を使ったのは。
(風よ! アランの足を止めて!)
そう念じた瞬間、風がブワッと巻き上がり……私のスカートがまくれ上がった。
「!?」
びっくりして立ち止まり、挙句アランは転んだ。エディも固まる。
私は慌ててスカートを抑える。絶対見られた! 私は顔を熱くしてしゃがみこんだ。
緊張で風の具合が狂ったらしい。
「リリアナ様! アラン王子! エディ様!」
レイラがあたふたしている。迷った結果、私のほうへ駆けてきた。
「大丈夫ですか? リリアナ様……」
「だ、大丈夫よ。ただの風だもの」
「ドロワーズをそろそろ下に履くようにしたほうがいいですね」
「それは何?」
「下着の上に履くものです、フカフカしてかわいらしいのですよ」
なるほど。スパッツみたいなものかな?
そして、鼻血を流した状態のふたりが私のほうへ歩み寄ってきた。正直怖い。
「勝負はもう一度やる」
「アラン」
そんな時、エディがポロポロと大きな涙を流し始めた。
ぎょっとして、冷静になった様子のアラン。
「エディ?」
私があわてて寄っていくと、エディはわんわん泣き出した。
「オレ、アラン兄さんと仲良くしたい……ひとりっこだから、お兄ちゃんできたみたいで嬉しかったのに、歓迎されないのはつらい……」
「……エディ……」
アランが罪悪感に満ちた顔をする。
ようやく嫉妬心からの暴走は収まったらしい。
「……悪かったよ、僕が……大人げなかった」
「アラン!」
「だって……リリアナ取られると思ったんだもん……」
アランまで泣きだす事態に、私は混乱する。
ふたりの男の子が子供丸出しで泣き出す状況に、レイラと私はウロウロするしかなかった。よく考えれば、まだふたりとも子供なんだから、泣くぐらい普通なんだけど。
さすがにその状況では、何があったのかとほかの使用人まで飛んできた。
「アラン王子! 大丈夫ですか!」
「大丈夫……なんでもないから……」
「ですが」
「使用人は戻ってて」
「……はい」
差し出されたハンカチで顔をふくアラン。そしてもう一枚のハンカチで、エディの顔を拭いてあげていた。すごく、アランらしいと思う。
「ごめんね、エディ……僕……」
「大丈夫だよ、オレ、怒ってない」
「本当に反省してる」
王子様に深々と頭を下げられて、動揺するエディ。無理もないと思う。
私とレイラはにこにことそれを見て拍手をしていた。
やっぱり、仲良しが一番だ。
そこで、私のお腹が鳴った。そろそろお昼であるから、当然だ。
「あーおなか減った。みんなでご飯を食べよう? レイラも!」
「ええっわたくしもですか」
「僕が許可する」
「レイラ、この国の王子の命令が聞けないの?」
「そ、そんなわけじゃあ……」
レイラの目がぐるぐるしだす。そして、笑いだす私達。
そこでだ、アランが急に真顔になってエディに聞いた。
「エディ、まさかリリアナの下着は見てないよね?」
「え、見た、白だった」
「……やっぱもっかい決闘しようか?」
ニッコリ笑顔でふふふと笑うアランは、すごく怖かった。