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リリアナ、火あぶりになる!?

 あれから数日が立つけれど、アランは一向に姿を見せなかった。

 街中は大騒ぎだ。王子様が大失踪したわけだから、後継ぎ問題にも発展するんじゃないかって噂だ。いつもの仲良しメンバーの空気もすごく重たくて、どこかお通夜な感じ。


「アラン兄さんどうしてるかな……音沙汰なさすぎだろう」

「まあ、アラン王子ならうまくやってるだろう」

「バイオレット先輩は何の根拠があって……」

「ちょっと、エディとバイオレット先輩落ち着いて。大丈夫だよ。アランは強いもん」

「そう言うリリアナ姉が一番やつれてる」 事実かもしれないけれどさ……だって、最近不安で眠れないし。そのせいか風魔法の制御ができなくて、よく勝手に風が巻き起こるんだよね。

 今も、勝手に書類が宙を舞ってるし。困るなあ。

 それを黙々と拾い集めながら、私はため息をつく。


「リリアナ姉の魔法絶不調だね」

「情緒不安定だからかな……私」


 やっぱり私にとっては、アランは大きな存在なんだなあ。

 ほかのみんながいなくなっても動揺はしただろうけれどね。

 目の下のクマを隠すのも、大変だよ。


「リリアナ様、しっかりしてください」

「ありがとう、レイラ。早くアランに会いたいな」

「きっと戻ってらっしゃいますよ!」

「うん、私も信じてる」


 それでもやっぱり、不安だよ……。

 そんな時、近くで雷が落ちた。当然のように停電が起きる。

 みんなで集まって、ろうそくを探す。

 そこで、バイオレットが火の魔法を起こす。

 ろうそくが火をともし、部屋は明るくなる。皆がため息をついた。


「びっくりしました、急に停電なんて」

「そんなときもあるよ」


 バイオレットはそう言って火を消さないように努力する。

 そのうち火は勝手に維持できるようになり、バイオレットは力を緩めた。


「ほかの部屋も、まだ放課後だからいるかもしれないし、わたしはろうそくをもっていてくるよ」

「いってらしゃい、バイオレット先輩」


 さすが生徒会長だなあ、しっかりしている。

 頼れる仲間をもって、本当に良かった。

 私がそう思ったその瞬間だった。私の風魔法が暴走したのは。

 炎が大きく揺れ、そこら中に火がうつっていく。

 気が付けば、生徒会は火の海だった。


「きゃああああ」 


 悲鳴を上げるレイラを引っ張り部屋から逃げる私達。


「水魔法!」


 混乱しながらもレイラは水魔法を使った。

 しかし、私の風魔法はまだ猛威を振るっており、彼女の魔法との力の差のせいでどうにもならないことになっていた。

「それは」



 どうしよう、私の風魔法のせいで、この学校は燃えてなくなってしまう……!?

 途中でバイオレットやほかの生徒とも落ち合って、私達は学校を出た。

 すると、学校は爆発し、近隣の住宅にも火を燃え移らせた。

 風魔法は、いまだ続いている。

 周りの視線は、私へと注がれている。私はその場から逃げて、被害を減らそうとした。

 しかし、逃げれ逃げるほど風魔法の被害は広まっていく。


「リリアナ様!」


 レイラが追っかけてくる。しばらくして、消防隊がやってきた。

 そして火は無事収まったけれど……歴史ある屋敷が、燃え尽きていた。

 そう、私の風魔法のせいで。


**********


「リリアナ・ローズを火あぶりにすることに決めた」


 国のお偉いさんが、そう言った。

 いつもはかばってくれるアランはそこにいない。

 王様たちは、ちょうど国を離れていた。



「歴史ある屋敷をあのようにしたのは、彼女の魔法のせいらしいじゃないか。幸い死人は出なかったが……血を流すものは多く出た。……リリアナ・ローズ。お前は火あぶりにされ、悪女として死ぬべきだ。私が王に首を断たれようと、私はリリアナ・ローズを殺す……! あの屋敷は、それだけの価値があったんだ……!」


 そう告げられた私は言葉をなくす。

 まさか、恋愛と関係ない流れで火あぶりエンドを突き付けられるとは思わなかった。

 こんな流れもあるんだな、とどこか冷めた気持ちで見ている自分に気が付く。

 ほんの数日前までは、楽しく皆で笑っていたのに。私はやっぱり火あぶりになる運命だったのだろう。お父様は損害賠償に追われているのに、私を責める雰囲気すらない。さすが優しい私のお父様だ。頭も上がらない。


「リリアナ・ローズ。反論は」

「ないです」

「アラン王子もいない事だし、もうお前をかばう人はいないだろう」

「…………」


 仕方がない、もうどうにもならないんだ。

 私はあきらめてそう言った。すると。


「リリアナ姉はわざとじゃないっ、魔法の制御がなぜかできなくなっただけだ!」

「そうですっ、リリアナ様は優しい女の子なんです。生きるべきです」

「わたしが火の魔法を使ったのが悪い。わたしを火あぶりにしてください」

「ボク、リリアナお姉ちゃんがいなくなるの嫌だよおお」

「皆……」


 泣きじゃくる皆がそこにいた。

 私なんかのために、泣かなくてもいいのに。

 悪役令嬢が、人生を楽しもうとしたのが悪いんだよ。

 これで、私の本来のエンディングなんだから……。

 そんな時だった。


「アラン王子?」

「嘘でしょ、失踪したって……なんでここに」


 ざわつく先を見ていると、アランがそこにいた。


「リリアナ、遅くなってごめん。僕はリリアナが何者か、調べてたんだ。リリアナは、この世界ではヒールとして存在してるらしいね、知らなかったよ。僕達が作られた世界の中の住人だってことも、なにもかも気が付かなかった」

「アラン……そうなの、私は貴方に釣り合わない存在なの。アランにはふさわしくない存在なの、本当はレイラと貴方が結ばれるべきなのよ」


 アランはその言葉ににっこり笑った。


「それでも僕はリリアナが愛しいいよ」

「!」

「結婚しよう、リリアナ。そうすれば、街の復旧は全部僕の家がするし、王家に逆らえる庶民なんかいないでしょ」


 そんな方法、使っていいの!?

 私があんぐり口を開けていると、その唇をアランが唇でふさいだ。

 長い時間、そうしていたように思える。黄色い悲鳴も当然聞こえた。


「リリアナ・ローズは、僕の婚約者だ。それでも火あぶりにするなら、王家が許さない」

「すみませんでした!」


 国のお偉いさんは叫んだ。そして逃げるように去っていく。


「僕がリリアナを火あぶりにはさせないよ」

「わたくしだって!」

「ボクも」

「オレも」

「わたしも、当然!」


 皆の声に、私は大粒の涙をポロポロ流した。

 私、皆にこんなにも愛されていたんだ。


「ありがとう、ありがとう」


 しゃくりあげながら、私は皆に頭を下げた。

 こうして、私は火あぶりを逃れることができた。

 けれど、本来のエンディングはまだ少し先である。

 果たしてそのころに無事にハッピーエンドを迎えれるのかが不安だけれど……それは、あと数日後の話。

 私と、アランの結婚式まで、あと五日。


明日の更新はいつもの18時ピッタリではない予定です。


そして! 明日の18時数分ぐらいには、新作を発表します。

可愛い獣人の男の子と異世界転生した主人公のほのぼの可愛いお話を予定しています。

「この異世界で私だけがもふもふに愛されている」 という題名です。

よろしくお願いします!

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