表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/69

エディ、結婚!?

 エディが最近よそよそしいのは気のせいではないはずだ。

 なんだかお母様たちも、ちょっとよそよそしい。


「エディ、何があったの?」

「リリアナ姉には関係ないよ」

「? 私じゃ協力できない?」

「……うん」


 そんな感じで、いつも上の空。

 私はエディが気になって仕方がない。

 アランに相談しても、わからないとのこと。

 そして、それから数日後。


「申し訳ありません、お母様。オレ、無理です!」

「エディ、私達に感謝する気持ちがあるならこの話を受け入れなさい!」

「感謝はしています。でも、オレ……」


 家の中で口論が聞こえる。

 慌てて私は中に入る。

 中ではお母様とエディが言い争っていた。


「貴方は優秀なのですから、そろそろ婚約の話をもっていってもいいはずです」

「オレはまだ十四ですよ?」

「もう結婚できるでしょう!?」

「できますけど」

「……貴方が間違いを犯さないか心配なのですよ……ってリリアナ! なぜここに」

「ちょっと気になって」

「リリアナ姉……」


 あ、なんか来ちゃいけなかった雰囲気?

 すごく歓迎されていないね。

 エディは気まずそうに眼をそらすし……。


「リリアナ、貴女も早くアラン王子と身を固めなさいっ」

「そんな……」

「そのうちアラン王子に逃げられてしまうわよ」

「それはないかな」


 ぼそりとつぶやくエディ。


「エディ?」


 お母様はエディを見る。


「とにかく! もうすぐお見合いをします! いいですね」

「はあ……」


 エディは困惑している様子だった。

 お母様はきつい表情をして部屋を出て行った。

 私はエディに駆け寄る。エディはぐったりした感じだ。

 私を見て、なぜか目をそらす。


「婚約なんかしたくない……オレ」

「どうして?」

「どうしてって……ここまで露骨で気が付かないのかよ」

「?」


 何が?

 私がニコニコしていると、エディがため息をついた。


「オレ、好きな人いるから……」

「じゃあその人を連れてくればいいじゃない! ここに」

「そんなことしたら大迷惑だよ、彼女に」

「……じゃあ、私が彼女のふりをしてあげる! レイラのメイクで、別人に化けてあげる」


 レイラなら、きっとうまくやってくれるだろう。

 エディはその言葉に深いため息をついた。


「リリアナ姉が……?」

「うん、大事な弟のためだもんっ」

「弟のため、ね」

「うん!」

「所詮オレは弟だよな……わかってんだよ」

「? 何当たり前の事言ってるの?」


 エディは大切な私の弟じゃん? それは昔からだよ。


「ありがとう、リリアナ姉。頼むよ」

「はーい」


 私は元気に返事をした。

 こうして、私はエディの彼女のふりをすることになった。


**********


 長い黒髪ロングの髪に、たれ目メイクをした私。

 私の名前は、アンナ・チュチュ。とある国の貴族の娘。

 旅行中にエディと出会って恋に落ちた。という設定。

 ……まあ、ほとぼりが冷めたら別れたって話にするんだけれどね。


「お母様、話があります」


 エディがお母様の部屋に入っていく。


「オレは好きな人がいるので、婚約の話は待ってくれませんでしょうか」

「あら、口だけじゃないの?」

「お付き合いもさせていただいてます。彼女を連れてきました」


 その言葉に、私は中に入っていく。


「アンナ・チュチュです」

「……はあ」


 呆れた顔のお母様。


「エディはやっぱりあの子の面影を追いかけちゃうのかしら……」


 え、何の話?

 私は首をかしげながらにこにこする。

 お母様はため息をついて頷いた。


「まあ、いいでしょう。あの子じゃないなら……正直、誰でも」

「ありがとうございます」

「エディ下がって」


 よかった! 私達は言われるがままに下がる。

 どこかお母さんが苦笑いしているように見えたのは、なぜか。

 ふたりで人の気配のない場所へ歩いていくと……。


「よかった、うまく行って」

「ああ」

「できれば、今度は本人を連れてきてね」

「このままずっとこうしてれればいいのに……」

「それは、好きな人にしなよ」


 私はエディにそう言って振り向いた。

 とたん、壁にドン、と押し付けられた。


「……それは、リリアナ姉って言ったら?」

「冗談でしょ? あはは」

「……冗談じゃなかったら?」


 真剣な表情。どこか泣きそうなうるんだ瞳。

 唇をかみしめて、私をじっと見るエディ。

 私は思わずきょとんとした顔をする。


「エディ、何してる?」


 そんな時、後ろからアランが現れた。

 手にはお土産が入ったバスケットを持っている。

 なんか、すごい表情が怖いんですけど。


「アラン兄さん……」

「リリアナをからかって遊ばないでくれるかな?」


 すごい、怖いです……アラン。

 私。ひぃって声あげちゃったもん。


「ちょっと冗談言っただけだろ、アラン兄さん」


 エディはなぜかせつなげに笑った。


「そうだね、兄弟で恋愛とか冗談にしてもひどいよね」

「……だろ? オレもそう思う」

「行こう、リリアナ。今日は果物を持ってきたよ」

「どんなの!」

「すっぱくて甘いやつ」


 私はアランに肩を抱かれ、大はしゃぎする。

 私を見るエディの目が甘く切なくて、なんだか不思議な気持ちになる。


「じゃあ、オレ、自分の部屋戻るから」


 そう言ってエディは苦しそうに笑うと、どこか逃げるように去っていった。

 私はあの切なげな苦しそうな目を思い出し、もう一度首を傾げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ