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リリアナ、事故にあう

 事件は突然起こるものだと、私はその時実感した。

 それは、皆で珍しく徒歩で帰ることになったある日。

 寄り道をして、私達は楽しく笑っていた。


「最近の授業は本格的よねー、レイラ」

「そうですねー。召喚魔法の話は興味があります」

「でも私達に魔獣はいらないわよね。すっごい平和だもの」

「わかりますよ、その気持ち。この国は平和ですから、戦う必要もない。だから、魔法もあまり使わずに生活できるんですよね」


 それはアランのお父様のおかげだと思う。

 のほほんと毎日を過ごせることに、マジ感謝。


「アラン達一般はどうなの?」

「まあ、普通かな」

「そっかぁ」

「リリアナさんたちも三年生になれば変わった魔法も覚えるよ」

「バイオレット先輩、本当?」

「そうだね、まあ、使う機会はほぼないけれど……。ほとんどが許可ないと使えない魔法ばっかだし」


 まあ、使い過ぎはいろいろ危険だから仕方がないよね。

 だけれど、魔法は使えたほうが後々よさそうだから、できる限り身につけたい。

 私は風がらみの魔法しか基本使えないけれど……。

 治癒魔法と科が使えれば、かなり有利なんだけど……。


(白魔法は上級なのよね)


「とりあえず卒業できればいいかな、私は」

「リリアナ様、目標はもっと高くもちましょうよ」

「えー」

「せっかく魔法の才能がおありですのに……」

「別に使い道ないし」

「そんな……もったいない」


 と、言われてもね。

 そう思いながら歩いていると、誰に押された気がして道に飛び出した私。


「危ない、リリアナ!」


 アランの声を聴きながら、私は固まるも、遅かった。

 鈍い音がした。馬車にぶつかり、私は足を怪我したのだった。


**********


 この程度のねん挫ですんだのは奇跡だと、医者は言った。

 そう、私は捻挫しかしないで済んだのだ。

 まったく、運がいいのか悪いのか。

 私は学校を休む羽目になった。あー暇だ。恋愛小説でも読もうか。

 ぺらぺらと本をめくり、暇をつぶす私。

 学校が終わる時間になり、皆がお見舞いに来た。やったあ、やっと退屈しなくなる!


「リリアナ、大丈夫?」 


 アランがお見舞いのお菓子を持って言った。

 ゼリーにヨーグルトって、私は病人か何か?

 ただの怪我人なんだけど。


「うん、足は痛いけど、自力で動けなくもないし」

「そっか、よかった」

「リリアナ様のぶんのノートはわたくしが取っておきました」

「ありがとう、レイラ。助かる」


 レイラは几帳面だから、ノートがすごく丁寧で見やすいんだよね。

 私はおおざっぱだから、正直ノートがキレイとはいいがたい。

 ちなみにほかのメンバーも、ノートはとてもキレイだ。

 特にアランは付箋がいっぱい貼ってある。

 エディは暗記がうまいのか、あまり書き込んでないあたりはすごいと思う。


「大事を取っての休みだから、すぐに復帰できるから、心配しないで皆」

「でも、頭ぶつけてたし……」

「大丈夫って言ってるじゃん、もう。アランってば心配しすぎ」

「女の子なんだから、顔にケガでもしたら大変だよ」

「私の顔に傷ついても、元が元だから問題ないよ」

「そんな事ないってば、リリアナ」


 もう、皆優しいなあ。

 私はヨーグルトを食べながらふと思い出す。


「そう言えば、私は誰かに押されて飛び出したのよね。いったい誰が押したのかしら」

「えっ、僕達の誰かが押したの?」

「それはないと思うわ、アラン。でも、確かに何かがあって飛び出たのよ」

「わたし、事故現場行ってきます。犯人がわかるかも何で」

「僕も行く」

「ここは魔法が使えるわたしが行ったほうがいいかと。王族の婚約者を狙う不届きものかもしれないし」

「なるほど、ではバイオレット先輩お願いします」

「まかせておいて。では、わたしは先にリリアナさんの家を出るよ」

「いってらっしゃいです」


 アラン達はバイオレットを見送って、私のほうに視線を戻す。


「それにしても誰が……まさかまた、僕の親衛隊とかなんじゃ……」

「解散したんじゃないのか?」

「それがね、エディ。隠れて活動してるって噂でね」

「怖いなあ、それは……」

「それだけアラン王子が人気だという事だ想いますよ」

「レイラ……僕は素直に喜べないよ。リリアナが危険にさらされるなんて……」

「それはそうですけど……」


 うーん、空気が重い。私は思わずヨーグルトを無言でかきこんだ。

 犯人が誰とか、考えたくないなあ……。

 それから一時間ほど、皆で討論が続いた。

 正直胃が痛かった。


「犯人はまず警察に突き出さないといけないね」

「アラン兄さん、まず犯人見つけないと」

「そうだね、エディ。聞き込みとかしようか」

「王族の権力を使って見せる」

「やめて! アラン!」

「未来のお妃様を傷つけるなんて、許せないよ」


 こ、怖いよアラン。このままじゃアランが殺人犯になってしまう……。

 まあ、エディがそばにいれば止めてくれそうだけれど。


「アランお兄ちゃんこわーい」


 メルはのんびりヨーグルトを食べていた。


「誰を突き出すって?」

「だから、犯人をっ」


 バイオレットの声にアランが叫んだ。


「これを?」

「え?」


 バイオレットが差し出したのは腐ったバナナの皮だった。

 その場が沈黙に包まれる。


「リリアナさんは、バナナの皮に滑って飛び出したみたいだよ。押されたってのは、気のせい」

「ええええええええええええええええ」


 思わず叫ぶ私達。なにそれ!? ギャグマンガかなんか?

 私が頭を抱えていると、アランはそのバナナの皮をゴミ箱に投げ捨てた。


「このバナナの皮を捨てた犯人を見つけてやるっ」

「サルかもよ? そしたらどうするの、アラン王子」

「それは……」


 バイオレットの言葉に少し冷静さを取り戻すアラン。

 私はアランの服の袖を引っ張る。


「アラン、落ち着いて。ヨーグルト食べよう。おいしいよ」

「でも……」

「私、気にしてないから。怒ったアランは怖くて嫌い」

「リリアナ……」

「おねがい、落ち着いて」

「うん……リリアナが言うなら」


 アランはため息をついてヨーグルトを手に取った。

 私の事故事件は、こんな感じで丸く収まった。

 アランはぶつぶつ文句を言っていたけれど、私がヨーグルトをあーんしてあげたら黙った。やっぱりおいしいものは皆で食べなくちゃね!



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