後夜祭は酔っ払い祭り!?
私達の世界のお酒の合法は、十五歳からである。
けれど、お酒は高価なため、なかなか十五歳でお酒は飲まない。
アランぐらいかな? 飲める立場なのは。でもアランがお酒を私達の前で飲んだのを見たことがない。どうも、あまり好きじゃないみたい。
で、後夜祭ではお酒がふるまわれるのだ。メルはさすがにお留守番。ごねてたけれど、お菓子をあげたら黙った。やっぱり子供ねー。
「ただいまから、後夜祭を始めます」
司会の言葉にみんなが盛り上がる。
この世界って結婚も十三歳から男女ともにできるし、色々変わってるのよね。
つまりは、学生の中にも夫婦とかが普通にいたりするのだ。
フォークダンスを皆で踊る。レイラの踊りも様になってきた。
アランが躍りたがるので、私はアランとペアを組んだ。
「リリアナ、文化祭楽しかったね」
「そうね、また来年が楽しみね」
「バイオレット先輩はいないけれど……」
「たしかにそれは残念ね、アラン」
しゃべりながらくるくる回る私達。
エディやバイオレット先輩とも踊る。着飾った皆は、すごくかっこよかった。
きれいな音楽をバックに、踊りまくる。
そうしているうちにフォークダンスは終わる。
そして、テーブルの前に飲み物が置かれる。ジュースとお酒数本と、コップだ。
当然のように私達は五人で固まっていた。
「お疲れさまでした! 皆」
私の声に、皆が拍手。ごちそうも運ばれてきた。あのチキン、おいしそうー。
わくわくしながら、私はジュースを飲みながらごちそうをつまむ。
皆にはお酒を注いで、テンションを上げていく。
「リリアナ、僕お酒は」
「いいからいいからっ。私が介抱するし」
「え……」
「皆もジャンジャン飲んじゃって!」
私、お酒って飲んだことないから怖いんだよね。
でも私、皆の酔った姿見てみたーい! 好奇心がうずくのだ。
まず先に酔っぱらったのはエディだった。
「あははははは、酒うまいな」
「エディは笑い上戸っと」
なんかエディらしいや、すごい楽しそうにお酒をエディは飲み続けている。
「なんだかすっげー楽しいんだ」
「それはよかった」
「僕はとても悲しいよおおお」
わんわんと泣き出すアラン。大粒の涙を流してぐずる。
「アランは泣き上戸!?」
号泣して抱き着いてくるアランを私はあやす。
「あはは、アラン兄さん子供みたいだなー」
「うわあああん、どうせ僕はお子様王子だー」
なんだこれ、カオスだ。レイラはお酒は飲まないつもりらしく、ちまちまジュースを飲んで苦笑いを浮かべている。
果たして、バイオレットはどうなんだろう? と思うと彼は黙々とお酒飲み続けていた。お酒強いのかな? 不思議に思っていると、のっそりアランに彼は近づき、キスをした。
「!?」
驚いて声も出ない私。放心するアラン。
なんだか黄色い悲鳴がレイラから上がったような?
あの、思ってたんだけどレイラって……。
ほかの女子も大はしゃぎでその様子を見ている。
「さあ、皆わたしとキスをしようか」
「あははは、男同士でキス!」
「うわあああん、男にキスを奪われたあああ」
(騒がしいなあ)
「エディ君も、キスしよう?」
「あははは、いやです!」
エディは笑いながらバイオレットを拒絶する。
なんだかんだで、エディは腕力が強いのだ。
「じゃあ、そこの君! キスしよう!」
バイオレットがそこにいた女子生徒の手をつかむ。
女子生徒は感激で呆然としてから叫んだ。
「きゃあああああ、バイオレット様とキスですってぇえええ」
なんだか大騒ぎになってきた。バイオレットを止められる人は、いない様子だ。
これ、思い出したら死にたくなるよね。
「さあ、皆わたしとキスをするのだ!」
「うわあああん、リリアナ、うわあああん」
「あははは、なんかいろんな人がいるー。超楽しいー」
「皆さん酔っぱらいすぎじゃないですか」
「まあ、そう言う場所だからいいんじゃないかな。先生も見張ってるし」
「バイオレット先輩のキスに犠牲に、先生方も喜んでなってますけどね……」
レイラが若干おびえてる気がするけれど、無理もない。
なぜか私を見てヒヤヒヤしてる様子を感じるけど、気のせいだろう。
私、食べて飲んでるだけだし。
バイオレットがキスを振りまいている中、レイラは恐る恐る私に寄ってきた。
「リリアナ様、大丈夫ですか?」
「何が?」
「たくさん飲まれて……」
「ああ、ジュースね。お酒って怖いんだなあって思ったよ、今回で。お酒は飲まないほうがいいんだねー。あー、ジュースおいしいー」
「あの、言いにくいんですが……その」
「ん? どうしたの、レイラ」
そう言いながら私はまたジュースをお代わりする。
うーん、おいしい。体がぽかぽかするね!
「リリアナ様、ずっと飲まれてるそれ、お酒ですよ? 五本も瓶をあけられていますが……リリアナ様は酒豪なのですね」
「えっ」
私はコップを落とした。当然、ガラスが割れる。
「これ、ジュースじゃないの?」
見た目も鮮やかな紫色だし、お酒臭くもないんだけど……。
「お酒です、わかってるものだと最初は思っていたんですが……」
がーん、知らなかった。衝撃の事実に頭を抱える私。
結局私は次の日も二日酔いに悩まされず、何もなかったように過ごした。皆の記憶がなかったのは、正直幸いなことである。




