文化祭開始! コスプレ喫茶と禁断の!?
「そろそろ文化祭ね、レイラ」
「出し物は好きなグループでできるんですよね。皆でできていいですね」
「そうね、普通はクラスごとだから、皆バラバラだし。それに、メルも参加していいんでしょう?」
「はい、特例で」
もちろんアランの力を使って黙らせたんだけど。
ちなみに出し物はもう、決まっている。
明後日にはもう、文化祭が始まる。
この国では、結構大きなお祭り扱いされているから、沢山の人が集まるんだよね。
私も学生になる前は、何度か顔を出したし、結構楽しかった記憶がある。
「楽しみね、レイラ」
「皆さんならうまく行きますよ」
「貴女も参加するのよ、レイラ」
「私はモブです」
いや、正ヒロインですってば。
私は苦笑いしながら、文化祭の準備の仕上げを行った。
**********
そして文化祭当日。にぎやかな声があちらこちらから聞こえる。
「コスプレ喫茶ねぇ、いかにもみんなが好きそうな感じだよ本当」
「そこで、アランはなんでうさ耳執事を選んだのかしら」
「え、リリアナがじっと見てたから」
「まあ、似合うと思ったけど」
アランはうさ耳を揺らしながら喜ぶ。
かわいいなあ、もう。
エディは王子様の格好してそわそわしている。
「何でオレは王子……」
「たまにはいいじゃない、アランの服いつも羨ましそうに見てるでしょ」
「そうだけどさ、リリアナ姉」
「わたしは騎士か……」
「似合ってますよ、バイオレット先輩」
「ボクは天使―」
「メルも」
「わたくしは妖精ですか、そしてリリアナ様は悪魔」
「ぴったりでしょ?」
私らしいと思わない?
なぜか周りには大不評だけど、似合いすぎてシャレにならなかったからかしら?
まあ、悪役令嬢ですから!
そして、喫茶店は始まった。
案の定アラン達のファンが写真をせがんでくる。
写真はオーダーしたお客様のみ、にしてみるとお店は大繁盛した。
「悪魔の子も一緒に写って―」
「はあいー」
私も似合ってるからか珍しく大人気。何故か特に女の子から。
満足げに笑顔でうつる私。なぜか彼女たちは私を見てヒソヒソしている。
何でかな? わかんないまま接客していく私。
理由はわからないけれど、アランが警戒していた。
そして休憩に入る。
「うーん、いい感じだねっ、客入り上々っ」
「そうですね、ケーキはアラン様の家で用意していますから……」
「文化祭で王室御用達のケーキは、豪華だよねっ。ありがとう、アラン」
「いや、別に」
「試食したけれど、どれもおいしかったなあ」
「それはよかったよ、リリアナが喜んでくれれば僕はそれでいいんだ」
「優しいね、アランは」
「そんな事ないよ」
どのケーキも味がすごく上品で、食べごたえあるんだよね。
飲み物はレイラが入れてくれている。レイラの紅茶は一流なんだから!
私はトイレに行きたくなったので、それを伝えて部屋を出る。
すると、トイレはざわざわしていた。
「あれが、噂のリリアナ・ローズ? 大したことないわね」
「アラン王子の許嫁って言うから、もっと素敵なのかと」
「あら、顔は結構きついけど可愛いんじゃないの?」
「でも、寸胴よ」
(……うわあ、入りいにくっ)
そうだよね、一般のお客さんの目当ての大半は王子様のアランだよね。
なんか、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
でも、どいて! 私トイレ行きたいっ!
「けれども、写真が手に入ったのは大きいわね」
「そうね、これで呪いがかけられるもの」
「ほほほ、これで王子はうちらのものよ」
(げっ)
私がもじもじしながら立ち尽くしていると、背後から誰かが現れた。
「アラン!」
「えっ、王子!?」
「何しようとしてるのかな」
「アラン、貴女のほうが女子トイレで何してるの!?」
「なんか、嫌な雰囲気がしたんで、尾行してきたよ」
いや、だからって入ってきていい場所じゃないでしょ!?
でも、アランは気にしないまま彼女たちに近づいて笑った。うさ耳が上品に揺れる。
「ねぇ、君達。その写真貸して」
「え?」
「貸して」
「はい……、王子」
渋々彼女たちは写真をアランに渡す。
そしてアランは……写真を破り捨てた。
聞こえるのは女の子たちの悲鳴。
「リリアナの写真で呪いとか、したら僕は君たちに何しちゃうかわかんないなあ」
アランの怖い笑顔に、女の子たちは半泣きだ。
一応彼女達アランのファンなんだけど、いいのかなあ。
「す、すみませんでした」
「リリアナ、行くよ」
バタバタと去っていく女の子たちを見てから、アランが言った。
だけど私は。
「ごめん、トイレ行きたい」
きっと真っ赤な顔をしているだろう私は、すぐに個室に入っていった。
「えっ、あ、ごめん。じゃあ、僕は先に行くよ」
ようやく顔を赤くしたアランは、女子トイレから去っていった。
**********
無事トイレに間に合った私を、皆が待っていた。
ああ、危なかった。危うくアランの前で限界を迎えるところだった。
さすがにそれは、一生立ち直れない。
「大変だったね、リリアナ姉」
「うん、まあ。アランにはびっくりだよ」
まさか、女子トイレにまで来るとはね。
「しかたがないだろ、話聞いた感じ」
「呪いぐらい別にいいのに。私がつりあってないのが悪いし」
「それはアラン兄さんが決める事だろう」
「そうかな」
アランはどう思ってるんだろう?
ちょっと気になるなあ。
悪魔の羽を揺らしながら、ため息をつく私。
「リリアナお姉ちゃん、皆で記念写真撮ろうねーって話が出てたんだよー」
「あ、それいいね。私も入っていい?」
「もちろん、真ん中はリリアナお姉ちゃんだよ」
「え? なんで? あっ、背の順? あれ? メルは?」
「ボクも前列だけどさ」
だよね。まあ、いいか。深く考えないでおこう。
そして、写真を撮る準備が整う。皆衣装を直して、ばっちり決めている。
そこに何もなかった可能ようにアランがやってくる。
「僕はリリアナの横ね」
「わかってるよ、アラン王子」
「じゃあ、行きますよー」
レイラがカメラ係の人に声をかける。
そして、皆で一枚の写真を撮った。皆が笑顔で、すごくすごく幸せそうな一枚に仕上がり、大満足だ。
だけどそのころは、まさか私とアランがあんなことになるなんて、思ってもみなかったんだ。




