混浴!? 露天風呂事件!
「ねぇ、温泉がこの辺にできたって知ってる? リリアナ」
「そうなの? アラン」
温泉かあ、意外な事にこっちの世界にも存在するんだよね。
旅館だってちゃんとあるし。アランがソフトクリームをなめながら言った。
「わたしのクラスの女子が行ったと言ってたなあ」
「バイオレット先輩、そうなんです?」
「リリアナさんも興味があるのかい?」
「まあ、ほどほどには」
なんか、色々な効能があるみたいだしね。
もともと、お湯につかるのは結構好きだし。何より女の子だもんっ。きれいになりたいよねっ。元の世界にいたときもたまに温泉行ったりしたなあー懐かしい。
「ボク、行ったことない」
「メル」
まあ、子供だからそんなものか。
「わたくしもありません」
「わたしも」
「レイラとバイオレット先輩も?」
「どうせなら、皆で行ってみない? 日帰りでできるし」
「アラン」
「馬車を走らせればすぐだよ」
アランの提案で、私達は放課後温泉に入りに行く事になった。
温泉の道具は、全部アランの家が用意してくれた。
**********
広い温泉宿は、人々でにぎわっている。若干和風な気がする建物に、ラフな服を着たお客さんがいっぱい。きっと温泉上がりなのだろう。おいしそうにアイスを食べていたりもする。
メルはそれを羨ましそうに見ている。
「いいなあ、アイス」
「上がってから、食べようか」
「はーい、アランお兄ちゃん」
「ちなみに、貸し切りだから」
「えっ!? アラン何してるの?」
いくら何でもやりすぎじゃない?
「一時間だけだけどね」
「なるほど……」
なんでまた……。
「でもまあ、本当楽しみだな。私、早く入りたいっ」
「わたくしも、ずっとそわそわしているのですよ」
「まあ、女の子同士仲良く入りなよ、僕達は僕達ではいるから」
そう言って、お風呂用具をアランは私に差し出した。
着替えも一応は用意してあるらしい。私の下着のサイズ、どこで知ったんだろう?
ちょっと恐怖を感じながら、私はレイラと温泉に向かう。
まずは着替えだ。するすると服を脱いでいく私にどこか恥じらうレイラ。
「レイラ、ここには私しかいないんだから、周り気にしなくていいんだよ」
「でも、なんか恥ずかしいです」
レイラは白い肌を隠しながらもじもじしている。
白雪姫のような白さに見惚れていると、レイラのきれいな胸があらわになる。
そして、思わず比べる自分の粗末な胸。まあ、いいや。気にしないでおこう。
女は胸のサイズじゃないぞっ。
「たくさん種類があるのね。美肌のお風呂もあるって」
「リリアナ様、走ってはいけません。転びます」
「はーい」
濁り湯に、透明なお湯に、ピンクのお湯に……ほのかに香りを感じるお湯もある!
私はワクワクしながら色々なお湯に入っていった。
正直貸し切りだから泳ぎたいけれど、我慢我慢!
なんだか落ち着かない私に対して、レイラはゆっくりとお湯につかっていた。
「気持ちいいね」
「そうですね、癒されます」
「男の子たちはどうしてるんだろう?」
「背中の洗いっこでもしてるんじゃないんですか」
「いいなあ」
「私達もしますか?」
「するするー」
私はお風呂から上がるとレイラに背中を向けた。
レイラの甘い吐息と柔らかな胸が背中に当たって落ち着かなかった。
私からはごしごし洗いすぎて、痛いと言われた。
そうこうしているうちにすべてのお湯に入り終えた私達は、外に続く扉を見つけた。
「なにここ」
「露天風呂ですね」
「うわー! いいなあっ、行こう!」
石で囲まれた、綺麗な温泉がそこにはあった。
きれいな自然が柵越しに見える。
私は大はしゃぎでお湯に入った。
「あー、すっきりする!」
「いいですね、露天風呂。風流で」
「本当! 温泉卵も作りたいなあ」
「リリアナ様らしいお言葉です」
だって、おいしいじゃん? 温泉卵。
あのとろんとした感じ、たまらないっ。
「ちょっとのぼせそうー」
「無理はなさらないでくださいね」
「でも、このお湯の効能っていっぱいだから、もっとゆっくり入ってたい」
なんか、長寿とまで書いてあったよ。
そうこうしているうちにざわざわした声が聞こえ始める。
え? 誰か来る? 貸し切りの時間終わっちゃったのかな?
私がそう思って立ち上がった時だった。
「アラン王子、意外といい体してるんだね」
「バイオレット先輩も、綺麗な体ですけど」
「とりあえず、皆一応前隠して」
「いいじゃんエディ。タオルなんか邪魔なんだからっ」
「メル……」
そこには、男子ご一行がいた。
「きゃああ」
悲鳴を上げてしゃがみ込む私。レイラは放心したように彼らを見上げていた。
さすがの男子達も、それで私達に気が付いたらしい。
慌ててエディがまず動いた。自分の裸を隠して、私達にタオルを投げつけたのだ。
私達は慌ててそれで裸体を隠す。
アランは固まり、バイオレットは目をそらした。メルはいつも通りの表情だ。
「リリアナお姉ちゃんどうしてここにいるの?」
子供らしく無邪気な顔で尋ねてくる。
羞恥心などまるでないようだ。
「女湯からきたんだけど、貴方達はどこから来たの?」
「男湯だよ。って、なんかあったかいものが上から……って、アランお兄ちゃん、鼻血出して放心してる!」
そう言われ、アランを見るとその通りの状況になっていた。お湯にはいっていないのが救いだろうか。エディがタオルをアランに渡すと、アランは冷静になった。
「あ……ごめん」
「アラン兄さん、大丈夫か?」
「大丈夫だよ、エディ。まさか露天風呂が混浴だとはね……知らなかったよ」
「とりあえず上がろうぜ。もう貸し切りの時間も終わるしな」
「そうだね、エディ。リリアナも、ほら」
「あ、うん」
私はそう言われて立ち上がろうとして……ふらつきその場に倒れた。
ダメだ、多分のぼせたんだ……遠のく意識の中、私はぼんやりそう思った。
**********
アランのドアップで目が覚めた。
そう、ここは温泉宿だ。私はアランの持ってきた服に着替え、ベッドに横になっていた。
ため息をついたアランが、私に水を差しだしている。
私はぼんやりしたまま、顔をあげてそれを飲んだ。
「ん……」
「大丈夫? リリアナ」
「うん、どうして私はここに?」
「僕が運んだんだ、着替えはレイラが」
「そう、ありがとう」
そう答えて、冷静になる。そう言えば、私アランに裸を見られたんだ!
アランだけじゃない、ほかの男子にも……なんて恥ずかしいのだろう。
顔を熱くして私はじたばたしたくなる。
「僕、忘れるから。リリアナの裸を忘れるから」
「アラン……」
「だから、気にしないで。そういうのは、結婚してからでいいと思ってるから」
「え……」
「落ち着いたら帰ろう。明日も学校だし、宿題もあるでしょ?」
「そうね、宿題まだ手を付けてないの。教えてくれる?」
「かまわないよ。帰りの馬車で教えてあげる」
「ありがとう、でも車酔いしないかしら……」
私は笑顔を見せて、ため息を隠れてついた。
馬車を待つ間、私達はアイスを食べた。シャリシャリしてソーダの味がして、とてもおいしかった。
しばらくして馬車が来る。それにみんなで乗り込んで、それぞれ帰宅する。
「じゃあ、またね。リリアナ。ゆっくり休むんだよ」
アランが心配そうな顔で言った。
私は笑顔を作って頷く。
「大丈夫だよ、アラン。さっきゆっくり寝たし、何かあればレイラがいるし」
「本当? ならいいんだけど……」
「じゃあ、また明日!」
「うん、またね」
名残惜しそうにアランは手を振る。なので私もぶんぶんと手を振った。
その日。私は用事が終わるとすぐに眠りについた。
夢には、アラン達の裸が出てきて、飛び起きたけれど、私って変態なのかもしれない。




