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戦え! リリアナ・ローズVSアラン親衛隊

 アランと私の関係は学校でも有名だ。

 主にアランが自分から広めてるように見える。

 アランには実は親衛隊がいるということを今知った。

 なぜ知ったかというと……。


「リリアナ・ローズ! ちょっと来なさい」

「貴女は?」

「親衛隊のリーダー、ベルーナよ!」


 華やかな褐色の髪色を二つで結んだ気の強そうな女の子だった。

 肌色も髪色よりも黒い。凹凸のある体に、どこかの化粧品の匂い。

 その派手な容姿は、どこかで見たことがある。

 たぶん、私の周りでよく見かけるのだと思う。理由は不明だけど。


「なんの?」

「アラン王子の!」

「えっ、そんなのあるの?」

「もちろんよっ! あたし達数百人が学校内だけでも所属してるのっ」

「はあ……」

「とにかく、アラン王子が来る前に廊下からいどうするわよ! リリアナ・ローズ!」


 私は言われるがままにベルーナに連行された。

 そこにはきれいな女の子がたくさん集まっていた。

 うわー、いかにも貴族令嬢って感じの子がごろごろ。

 舞踏会で交流したことある子もいる。


「ところで、何の用事!」

「リリアナ・ローズ! 貴女アラン王子の婚約者よね」

「そうよ、一応ね」

「じゃあ何で、男の子を侍らせているのよ。子供まで……」


 えっ、侍らせてなんかいないんだけど。

 確かに仲いい男の子は目立つ子が多いかもしれないけど。

 私がぽかんとしているとベルーナはたたみかけるように言った。


「まず、生徒会長のバイオレット。あの方はアラン王子の次に人気があるわ。色っぽいし、優しいし上品で、でもおうちは貧乏なのに頑張ってる。そこがとてもそそるって話」


 そそるって……何。


「エディ君は、貴方の義理の弟ね。運動神経はずば抜けてるし、割と落ち着いていて、しかも飛び級ではいるほどの秀才。見た目も麗しいし、言う事ないわね」


 なるほど、エディも人気なのか。まあ、我ながらよくできた弟だと思うけど。


「メル・ホークという子供。あの子は、とてもかわいく学校中で愛想を振りまいてるわ。その手の人には大人気よ。母性に訴えかけてくる何かがあるわね」


 メルまで……。


「ひとりにしぼったらどうかしら? リリアナ・ローズ。美男子ばかりに囲まれていい気になっているんじゃなくって?」

「そんなつもりは」

「いつもメイドを従えてるのも気に入らないわ」

「それは、彼女にも能力があるから」

「水の能力でしたっけ。貴女ほど強くはないのでしょう」

「レイラだって十分強いわよ」

「貴女は昔町中の洗濯物を風の魔法で乾かしたそうね」

「それが何か?」


 だいぶ昔の事だと思うんだけど……。


「いまだに伝説になってるのよ。小さな子供が、そこまでできるなんて、ちょっとした脅威よ」


 そうなんだ……全然知らなかった。

 基本的にスカートめくりだとかにしか能力使わなかったからなあ。

 あまり自分のスキルに関する関心がないのよね。


「みんなあなたの能力を恐れて、認めているからアラン王子の隣を許してるの。それなのに、アラン王子というものがいながら、彼だけを見ないなんて最低よ」

「そんな事言われても、皆大事だもん」

「なんですって!」


 バチバチ、と音がした。どうやらベルーナは雷の能力を持っているらしい。

 気が立ってる彼女はそのまま私に攻撃を仕掛けてきて……。


「あぶないっ」


 私をかばったアランに雷をぶつけてしまった。


「アラン王子!」

「アラン!」


 慌てて駆け寄る私達。


「いけない、あたしの雷はひどいときは記憶喪失になるの」

「そんな危ない事を私に使おうとしてたの!?」

「仕方がないじゃない、ほかの人をリリアナ・ローズが忘れてくれないと……アラン王子が幸せになってくれないもの」


 そうこうしているうちに、アランがくらくらしながら立ち上がった。

 ため息をつきながらベルーナをにらみつけるアラン。


「人の婚約者にいちゃもんつけないでくれるかな……」

「アラン王子、すみません、ただ、記憶を消すつもりで……」

「もう二度とリリアナにかかわるな。王子命令だ」

「そんなっ」


 ベルーナが泣きそうな声を上げる。ほかのメンバーも悲鳴を上げた。

 それでもアランは怒りをあらわにしたまま続ける。


「リリアナは事故で僕と婚約者になったんだ。迷いがあるのは当然だろう」

「ですが、アラン王子」

「口答えするな」


 こんなにきつい口調のアランは珍しい。

 いつも民衆に優しくて、にこにこしているのに……。


「親衛隊なんてものも、解散だ」

「嫌ですっ、あたし達アラン王子の存在が生きがいで……」

「僕にとってのリリアナもそうなんだよ、わかってくれる?」


 アランははっきりと言い切った。その言葉に、ベルーナ達は黙り込む。


「僕が勝手に好きなんだ。リリアナが大事なんだ。ほかのみんなも同じかもしれないね。でもリリアナの気持ちを強制する権利は誰にもないんだよ。そこは理解してほしい」

「アラン王子……」

「お願い、君たちは賢いはずだからわかってくれるよね?」

「……はい、アラン王子のお願いですから」

「ありがとう。君たちもボク以外に素敵な人を見つけるといいよ」

「そんな……」

「君たちは魅力的だからすぐに運命の人が見つかるよ」


 アランがにっこりとほほ笑む。

 ベルーナ達はうつむきがちに黙り込む。


「約束を守ってくれると、信じているよ」

「はい……」 


 ベルーナ達は力のない声で言った。

 私のはっきりしない態度も悪いんだろうけど……。


(恋愛に手を出して、悪役令嬢ルートに入るのが怖いのよ)


 アランは優しい瞳で私を見た。そしてそっと手をつないでくれた。


「僕がもしリリアナを忘れても、絶対に思い出す。リリアナが僕を忘れたら、絶対僕を思い出させてあげるよ。僕達は、そばにいる運命なんだ。それは、僕だけじゃなく皆もね」

「アラン……」


 なんだか涙が出そうになる。

 本当は私は悪役で、憎まれるべき存在なのに、皆は優しい。

 私を受け入れて、仲良くしてくれる。

 そんな皆に火あぶりされる運命は正直怖い。

 でも、皆には幸せなエンディングを迎えてもらいたい。

 そう思うと、時々胸が張り裂けそうになるんだ……。

 私はアランの手を力強く握りしめて、無言で頷いた。



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