ビックリ! 性転換!?
今日は休日。アランのお城に招かれて、皆がそろっている。
どうやら王様がおいしい果物をもらってきたら市区、それをごちそうしてくれるらしい。
メルなんか上機嫌に鼻歌まで歌ってるし、バイオレットはタッパーを持ってきている。
王家しか手に入らない高級な果物は、私もかなり期待している。きっとおいしいんだろうなあ。
「アラン様、果物が切れましたのでお持ちしました」
「ありがとう」
メイドが大きなお皿いっぱいの赤い果実を運んできた。
すごく甘い匂いがして、おいしそうだ。
よだれが止まらないけれど、レイラがお皿に取り分けてくれるので我慢する。
「うわあ、おいしそう」
「皆でせーので食べようか?」
「そうだね、アラン」
「じゃあ、せーの!」
皆で果実に口づけると……なぜか、ポンと言う音がした。
そして、周りを見ると。
「皆の性別が入れ替わってる!?」
私は口を大きく開けて叫んだ。
アランは可愛い感じの可憐な美少女に、エディは真面目そうなきりっとした女の子に、バイオレットは豊満ボディの若干パープルを思い出す美人に、メルは真ん丸お目目のロリっ子に。そして、レイラは妖精のような透き通る肌をした美少年に……私は、鏡を見てきつそうな男子になっていてなんだか悲しくなった。男になってもいかにもライバルって感じ……。
「リリアナ、イケメン……」
頬を染めながら言うアランこそ、美少女だよ!
きれいな深い青い髪が、サラサラで羨ましい。私なんか男になってもカールしてるし。レイラはキレイなふわふわヘア。いいなあ。
「って、そんなのんきに見とれてる場合じゃないと思うけど、アラン兄さん」
「エディ……確かにそうだけど、どうにもならないんだから楽しもうよ」
「アラン兄さん……正直オレこの体落ち着かないんだけど」
そわそわしながら顔を赤くするエディ。なんかもじもじしてる。
「服が一緒に変化してくれてたすかったけどね」
「確かに裸だったらどうにもならなかったですね、バイオレット先輩」
「なんで? アラン」
「…………」
あきれ顔を向けてくるアランに、私は首をかしげる。
すると、私はトイレ行きたくなってきた。
「ちょっとトイレ借りるね」
「まって! 僕もついてく!」
「えっ、なんで」
「目をつぶってね!? リリアナ! 僕が見ていてあげるから」
「何それ気持ち悪い」
何でトイレ中を見られなきゃいけないの?
そう思ってレイラを見た。レイラももじもじしていた。
「……リリアナ様、アラン様の指示に従うべきです。結婚前の女の子ですから」
「えー?」
「お願いですから下半身に触れないでください!」
「どうしてよ」
「……アラン様、お願いします」
「僕に言えるわけがないじゃん、理由」
アラン、真っ赤だなあ。紅葉張りに真っ赤だなあ。
「ねぇ、皆はどう思う?」
私は皆に振るけれど、沈黙。あのメルでさえも。
そうこうしているうちにトイレ行きたい欲はかなり上がってきて。
「アラン、わかったからトイレ行こう!」
「……なんかもう僕疲れたよ」
無事にトイレに駆けこんで、事なきを得たけれど、終わったころのアランはげっそりしていた。
**********
「ボクの胸ぺったんこー」
服を引っ張るメルが、戻ってきてすぐに目についた。
「バイオレットお兄ちゃんの胸触っていい?」
「いいけど……優しくね?」
「……何してるの、ふたりとも。リリアナに毒だからやめてくれる?」
「アランお兄ちゃんも自分の胸触ってみなよー」
「触んないからっ!」
真っ赤になるアランは、純情だ。エディは呆れた視線をバイオレットたちに浴びせている。
「ねぇねぇ、アラン。私アランの胸触ってみたいな」
「リリアナ!? ダメだってば」
「……えー、でもさ、このままだったら学校とかどうしちゃうわけ? 大騒ぎじゃない?」
「戸籍入れ替えってことになるね。でも僕は、ずっとリリアナの婚約者だよ」
「お姫様になるの? アラン。フリフリひらひらドレス、着るの?」
絶対似合うよ、アランになら。
そう言われたアランは心底嫌そうな顔をしている。
ぶんぶん首を振ったかと思うと、パン、と自分の顔を叩いた。
その気合いに、びくりと皆の肩が揺れる。
「僕、解毒剤作る! 皆はここにいて。紅茶でも飲んでて!」
責任感を感じたアランが飛び出していく。
なので私達は言われるがままにレイラに紅茶を入れてもらう。
甘い紅茶をたしなみながら、のんびりとトランプを始めるのんきな私達。
だって、焦っても解決しないもん。
暇を持て余し、紅茶をお代わりし続ける私達。そのうちカフェインの刺激でお腹が痛くなってくる。
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
そう言いだしたのはバイオレットだった。メルもついていくのだという。
私もトイレにはいきたかったけれど、まあ、急ぐ必要はないし。
のんびりとトランプの後片付けをしながら、レイラを見た。
「レイラもトイレ行きたいの? そわそわしてる」
「実はさっきからずっと……でもこの体ですし」
「エディついていきなよ」
「えっ、無理無理」
「わたくしもお断りします。しかたがないです、目をつぶって用を足しましょう」
はあ、と顔を赤らめてレイラが言った。
なんだか落ち着かないなあ。
「殿方の体に触れる機会など、めったにありませんから緊張してしまいます」
「触ればいいじゃん」
「リリアナ様、そう言う問題じゃ無いと思うんですけど」
「オレもそう思う。リリアナ姉、無神経」
「えー」
そんな、減るもんじゃあるまいし。
しばらくしてどたどたと言う音が聞こえた。
扉が開いて、私達は口を大きく開いたまま固まった。
だって、そこには元に戻ったふたりがいたから。
「バイオレットも、メルも男の子に……!?」
私は思わず叫んだ。
「消化されたってことですね、あまりきれいな話ではないですけど」
レイラが困惑したように言った。
「アラン様にもお知らせしないと」
「アラン王子も元に戻ってるんじゃないかな? わたしが見に行ってくるよ」
「バイオレット先輩、おねがいします」
レイラがぺこりと頭を下げる。メルはどこかがっかりしてる。
エディは慌てておなかを痛くしようと紅茶を飲み始めた。
私も再度トイレに向かい、戻ってきたころには案の定いつものリリアナ・ローズに戻っていた。
なんて簡単な戻り方なのだろう。アランも恥ずかしそうに男の子に戻って現れた。
「はあ、ビックリした……僕の解毒剤ももう少しだったのに」
「わたくしもお手洗いをお借りしますね」
「いってきなよ、レイラ。私、ちょっと残念だなあ」
「え? 何言ってるのリリアナ。戻ってよかったよね? 男の子の体のリリアナとか、放っておけないよ。僕は」
放っておけないのは、どうして? 別に性別が変わるだけで、体の具合が悪くなるわけでもないのに?
「出せば戻るんでしょ、じゃあまた食べていいよね! わあい、いっただきまーす!」
「リリアナ!?」
私は先ほど食べた果実を、むしゃりとかじった。
甘い果実が口の中で広がって、最高においしい。
あんぐりと口を開けて固まるアラン。
「んーおいしいおいしい。一度男の子になってスポーツしたかったんだよね!」
やっぱり女の子じゃできることも限られてるし?
男の子っていいよね。走り回っても怒られないし、むしろ元気だねって褒められるんだから。エディとか、よく走り回ってるけれど、まねをしては私は小さい頃よく怒られたもの。
せっかく私の家の庭は広いのに、私はお花をいじることさえ許されない。
お転婆なぐらい、許してほしいのに。
「リ、リリアナ」
アランが涙目になる。プルプルと手足も震えている。
周りはなぜか苦笑い。皆も食べればいいのにね? これ、すっごいおいしいのに。
「アランも食べなよ、おいしいよ」
「僕はいい。それより早くトイレ行って来て、リリアナ」
「そんなすぐ消化されないよ」
別にいいじゃん。戻るんだからさ。
何でそんなに気にするんだろうね? アランは。
私はもぐもぐと果実を食べていった。
「リリアナのバカ……」
がっくりと項垂れるアランは、今にも熱を出しそうな顔をしていた。
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