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ファッションショーをしよう!

「うわあ、すごい綺麗! アランこれに出るの?」

「そうだよ、リリアナ。ファッションショーに僕は出るんだ」


 私達は生徒会室でとあるパンフレットを見て騒いでいた。

 今度やる大きなファッションショーに、アランがモデルとして出演するらしい。

 有名なデザイナーがやる、大注目のショーだ。


「すごいね。このブランドって世界が注目してるやつでしょう?」

「バイオレット先輩。そうですね。でも、僕は多分王子だから誘われただけですよ」

「そうかな? 君はモデルに見合ったルックスをしてると思うよ?」

「ありがとうございます。バイオレット先輩ほどではないです」


 たしかに、バイオレットはモデル向きのルックスをしていると思う。

 でも、アランだって負けてない。白い肌に、綺麗な瞳……つやつやな髪の毛。

 街ではアランは大人気だって噂だ。愛想もいいし学校でもファンクラブがあるらしい。

 婚約者の私には隠れて作ってるって噂だけど……。


「ボクはー? ボクはー?」

「メルはまあ、子供向けなら」

「むー、ひどいよリリアナお姉ちゃん!」

「えーだって子供じゃん」

「おっきくなるもんっ」


 ぐんと背伸びするメルは可愛い。目はくりんくりんだし、小動物みたいな。

 個人的には、小さいままでいてもらいたいなあ。

 ずっと皆の弟では、いてくれないんだろうなあ。


「オレはモデルとは縁ないな」

「そうかな? エディも身長高いし行けるんじゃない」

「顔地味だし」

「え? 地味なの? 周りが華やかすぎるだけじゃない?」


 エディも、だいぶ整ってる方だと思うけど?

 筋肉もそこそこあって、いい感じだし。


「今日の夕方にショーだから、皆おいでよ」

「行く行くー! 私超楽しみ!」

「打ち上げは、きっとすごいごちそうが出るよ。リリアナ」

「ごちそう!!」


 じゅるり、と思わず唾液を飲む私。

 王子様が来るイベントって、たいていすごいごちそうが出るんだよね!

 だからすごく楽しみ!!


「わあい、早く授業終わらないかな」

「まだ昼休みだよリリアナ」


 アランが呆れた声で笑った。

 目の前には食べかけのお弁当が置いてある。



「一日が長い!」


 私は興奮気味に叫んだ。


**********


「アラン王子様!」


 ショーの準備に向かう途中、知らない人が駆け寄ってきた。

 人込みをかき分けて真っ青な顔をして近づいてくる。

 ごちそうの帰りにプールによるつもりで、私達は水着も持っていた。

 速足で歩いていた私達は足を止める。


「デザイナーさん」


 アランの言葉で、彼がデザイナーだと分かった。

 四十代ぐらいだろうか、変わったひげをしたおしゃれな男性だ。

 目がちかちかしそうな、カラフルなシャツはいかにもデザイナーと言う印象。


「どうしたんですか?」

「モデルが食中毒で倒れた」


 泣きそうな顔をしてデザイナーが嘆く。

 それは……最悪の事態である。


「えっ……」

「それも大多数だ。どうしたらいいんでしょう、アラン王子……」

「ええと……」


 アランがおろおろしている。そして私と目があった。


「今回のモデルは若いモデルさんが多かったですよね? デザイナーさん」

「そうですね、ティーンが中心でした……」


 がっくりとした様子のデザイナーさん。

 そこで私はひらめいた。


「私達じゃモデルになれませんか?」

「! 貴女は……?」

「リリアナ・ローズです。アラン王子の婚約者です」

「貴女が噂の……!」


 噂になってるんだ? 


「きれいな金髪ですし、いいですね。他の方も美形ばかりだ。アラン王子様、どうですか?」

「皆が承諾してくれるなら」


 アランが心配そうに皆を見た。


「ボクはいいよ」

「オレも」

「わたしも構いません」

「わ、わたくしでいいんですか!?」

「だ、そうだよ。アラン」

「よし、よろしくお願いします」


 こうして、私達はショーのモデルになることになった。


**********


「わ、わたくしはやっぱり無理ですぅ」

「レイラ落ち着いて。レイラも大事なモデルなんだから」

「こんな目立つ役ダメですよおお」


 開始直前。レイラが青い顔をして震えていた。

 泣きそうな顔で上目遣いをする彼女は、すごい可愛い。

 きれいなうす紫色のドレスを着て、まるで妖精のよう。

 ピンクの髪とのコントラストがとても可憐だ。


「大丈夫だよ、レイラ、私も一緒だもん」

「そうそう、ボクもだよー」


 メルはかわいらしい天使のような羽をつけて、白いふわふわとした服を着ている。

 私は赤いドレスを着ている。いかにもヒールと言う感じ。

 まあ、悪役令嬢なんですけどね!


「オレにこんな豪華な服似合わない……」

「そんな事ないよエディ」


 エディは貴族っぽい上品な皮でできた服を着ていた。


「今回は、選りすぐりの服だけだから、なおに豪華だね」

「バイオレット先輩」


 バイオレットは和服を着崩したような独特の服を着ていた。

 やっぱりお色気担当なのは誰が見ても変わらないらしい。


「そうですね、でも僕は何でフリフリひらひらなんでしょう……」

「あらんすごい! 王子様みたい! あ、王子様だった!」

「恥ずかしいよ……」


 アランはいかにも王子! と言う印象の白いフリルに高そうなパンツを合わせ、そのパンツには金の刺繍が入っていた。

 靴だって、どう見てもこのメンバーで一番お金がかけてある。でも、私のも宝石が散らばっていて、かなり高い。

 レースも重ねてあり、ひっかけそうで怖い……。


「さあ、皆で素敵なショーを作ろう!」


 円陣を組んで、皆で「おー!」と叫んだ。


**********


 ショーがスタートする。

 きれいな音楽とライトアップに合わせて着替えてはくるくるめぐる。

 さっき着た服は、ラストに着るもので、今は違う服を着ている。

 華やかなものから、悲しげなものまで、それでも数は少なめなんだけどそれでも多彩さを感じられる。

 プロのデザイナーはすごいなあと思わず鏡をみて、見とれてしまうのだ。


「次が最後だよ」


 そうサポート役の人に言われて、私達は気合を入れる。

 でもレイラがガタガタ震えているので、私は彼女を抱きしめた。


「大丈夫だよ、レイラ」

「リリアナ様……」

「いいなあ……レイラお姉ちゃん」

「メル、集中して」

「はあい、アランお兄ちゃん」


 メルが納得いかない様子で言った。

 そしてショーのラストが始まる。

 リズムを踏み、私達は歩き出す。

 きれいに歩けた! と思ったころ、悲鳴が聞こえた。レイラが躓いたのだ。

 その結果、ドミノ倒しになり……後ろにいたアランが私を引っ張り私のスカートが破れた。


「きゃああ」


 思わず叫ぶ私。そしてとっさに私を抱えるアラン。

 そして走り出すアランに驚きながら抱えられる。追っかけてくるレイラたちが見える。

 デザイナーさんは叫んでいるし……。

 裏に回り人気のつかない場所にたどり着くと、アランがタオルをかけてきた。

 レイラは泣きじゃくっている。


「大丈夫だよ、アラン、落ち着いて」

「だって、し、した……下着見えてるし……結婚前の女の子だしっ」

「……これ、水着だよ? プール行くし、着てきたほうが効率いいかなあって……」

「よかったあ……」


 へたり込むアラン。それに、ほっとしたため息を吐く皆。 

 パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

 レイラが私が元着ていた服を渡してきてくれた。

 慌ててそれに着替えると、アランもため息をついた。


「本当にほっとした」

「アラン……」

「ボクだって心配したんだよ?」

「メル」

「オレだって、ビ、ビックリした!」

「エディも?」

「わたしもですよ」

「ごめんなさい、バイオレット先輩」

「わたくしもです!」

「レイラ、ありがとう。ショーはめちゃくちゃになっちゃったけど……」


 そう、それが問題である。一応衣装は全部見せれたけど……。

 デザイナーがそこにひきつった顔でやってきた。


「皆様」

「はいっ」


 異常なぐらいピンと背筋を伸ばす私。

 アランすらもビビっている。デザイナーの満面の笑顔が怖い。


「衣装代、弁償してくださいね? これ、高いんですよぉ……製作期間も三か月かかったんですよ、赤いドレスには。ね、リリアナ様?」

「……はいっ」


 泣きそうな顔になる私。すでに泣いてるレイラ。

 これからしばらくは、お小遣いなしになりそうだ。



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