水着であそぼ!
最近あったかくなってきた。なので、私達は今、プールにいます!
学校のプールよりも広い、大きなアランの家のプール。
「か、かかかかわいいよ、リリアナ」
「アラン顔真っ赤―」
「だって、水着とか小さい頃以来だから……」
たしかに、アランとプールに入ったのは幼少の頃かな? レイラに至っては、一緒にプールに入るのは初めてだけど、彼女は水泳ができるらしいのでびっくりした。
アランはシンプルな純白の水着を履いて、ほかのメンバーはしゃれっ気のない黒い水着を履いていた。どう見えても値段に差がありそうな水着だ。アランのはきっとブランド品なのだろう。なんかキラキラしてる気がする。
バイオレットは顔色が若干悪かった。髪の毛をひとつに束ねてはいるけれど……。
(なんか遠いところを見てるように見えるけれど……誘いも乗り気じゃなかったし……わたしの頼みだから的な事を言ってたけれど……)
「リリアナ様の水着は、アラン様と対照的な黒のワンピースでとても似合ってますよ」
「白同士のレイラとアランのほうがセットみたいだけど」
「そんな! 気のせいですよ!」
「気のせいだよリリアナ! 僕と白黒でセットみたいだってば!」
ちなみにレイラの水着は私が買ってあげた。清楚可憐な純粋っ子レイラには白でしょ!
そして悪役令嬢の私には、やっぱり黒が似合う。バラ模様の刺繍にレースも黒で入っている。フリフリひらひらなスカートの部分は全部レースで、高い。
レイラは白のシンプルなワンピースに、胸元に大きなリボンだ。髪を二つに高い位置でくくっている。 ヒュー! 超かわいい。私が男なら、悩殺されちゃうレベルだわ!
「リリアナ姉似合ってるよ」
もじもじした様子で早口で言うエディ。
「エディ、ありがとう」
「わたしもそう思う」
「ボクも」
逆にふたりは落ち着いている。
「バイオレット先輩も、メルもありがとう」
私たちがいるプールはお城の中にある、温水プールだ。
アランは水泳が得意なようだけど……。
「どうなら、ビーチバレーみたいなのしない? プールの周り広いし」
「そうだね、リリアナ。人数も多いし。僕はリリアナと同じチームね。リリアナにボールは向けられないから」
「はいはい、じゃあレイラは女子だから敵チームね」
「ええっ」
「じゃないと平等じゃないし……あとはグーとパーで別れましょ?」
結果、メルが味方になった。あとのふたりはレイラと一緒。
なんかすごい動揺されたけれど……ゲーム開始!
「えいっ」
「リリアナ、頑張れ」
私がビーチボールを投げるとレイラがわざとあたりに来た。
「何してるのレイラ」
「えっと……」
「ぶつかるふりなんかせずに、気を遣わず思い切り投げなよっほら」
「ええ……えっと、えいっ」
やっぱり力の入ってない感じ……レイラ、手を抜いてない?
私は頬を膨らませて、ボールを受け取る。
そして思い切り遠くまで投げた。
「本気出してよ、皆」
「だって、リリアナ様にボールを投げるなんて」
半泣きで言うレイラ。遊びに上下関係は関係ないわ。
後ろではバイオレットがボールを追いかけている。
そして……プールに足を滑らせて落ちた。
「バイオレット先輩!?」
じゃぶん、と間抜けな音がした。慌てて私は中に入る。
そしてバイオレットを無理やり引きずり出した。
「リリアナ、僕が運ぶのに」
「人工呼吸覚えたから、やってみたい」
「!? そんな」
真っ赤なのか真っ青なのかよくわからない顔をするアラン。
私はゆっくりと、バイオレットを人工呼吸しようとして――本人に止められた。
「意識あるんで、わたし」
ぐい、と手で私を押しのけるバイオレットの顔は赤い。そして見た目で誤解していたけれど、彼は結構握力が強いらしい。男の子なんだなあ、と実感する。
ゴホゴホとむせ返るバイオレット。水を吐いてため息をつく。
「もう全然、大丈夫っ」
ふう、と深呼吸するバイオレットは、それなりに健康そうだ。
ほっとして、飲み水を彼に渡していく。
「そうなの?」
そんな時、じゃぶんという音が聞こえて……なぜかレイラ以外プールに入り、皆がおぼれていた。
「…………」
呆れた顔をしているバイオレット。固まる私。
「リリアナ!」
「リリアナ姉!」
「リリアナお姉ちゃん!」
アランが叫ぶ。ほかのメンバーも私の名前を叫んでいる。
私は立ち上がったものの、誰を優先していいか悩み動けない。
って言うかここのプール、溺れるほど深かった? メルが入れるほど、浅かったような……深い場所もあるけれど、それはもっと奥の方。
「……アノヒトタチヲタスケテアゲレバイインジャナイ」
「バイオレット棒読みー。そうね、のんきに驚いてないで助けなきゃ……」
そう思って私はとりあえず、プールに飛び込もうとしたら……。
「アラン様! ご学友様!!」
バタバタといかつい男性たちが駆けてくる。護衛の人だろう。
いつでも中に入れるように、水着を下に着ていたらしく、今は水着に着替えている。
なんか、プールの入り口に立っていたような気がする。
それに気が付き目をかっぴらいた男性陣。バイオレットだけが余裕の笑みを浮かべている。何故?
「今、助けますよ! アラン王子、ご学友様! 自分、人工呼吸のプロなんで! 安心してくださいっ」
「いい! 僕は足釣っただけで、もう大丈夫だから!」
声を裏返らせてアランが叫ぶ。ほかのメンバーもあわてて顔を上げた。
え? 何おぼれたふりだったの? どうして? なんで? 意味が分からない。
「オレも」
「ボクも」
「なんなの? 皆……」
「罪な人だよね本当、リリアナさんは」
バイオレットも、何なの? 私は首を貸したけれど、アラン達は大事を取って退場させられていった。レイラはくすくす笑ってるけど、笑うシーンあったっけ?
「では、私と一緒に日光浴でもしようか、リリアナさん」
バイオレットがそっと私の手を取った。
「そうね。日焼けってほど日光強くないし、気持ちいいはず」
「わたくしも参加しますー!」
珍しくレイラもかけてきた。
なんか、遠くで誰かが舌打ちしたような気がするけど、気のせいだよね!
私達は日光浴をして、そのまま軽く眠ってしまった。
起きたらみんなが戻ってきて、近くで円陣を組むように眠っていて、笑った。