ようこそお城へ!
ある日私達は、王家の展覧会に招かれた。
アランが送迎をしてくれて、いつも通りのメンバーがお城に集まった。
豪華なお城がさらに豪華にデコレーションされている。隊離任のお花に、豪華な来客。
あの人って有名な歌手や官僚じゃない? しかもほかの国の王族も見えている。うわあすごいよおっ。
「ようこそ、皆」
着飾ったアランが改めて私達に言う。
ゴージャスな衣装に着られてないのがさすがだと思う。
メルやバイオレットは、割とシンプルな礼装だけど、私とエディはそこそこにおしゃれしている。レイラはメイド服だ。
「すごいね、展覧会とか」
「そうかな? リリアナ」
「うん、アランの肖像画とかあるんでしょ?」
「そうだけど……みられるの恥ずかしいなあ」
まあ、そりゃそうだろうなあ。結局は自分の似顔絵がいっぱいなわけでしょ?
私でも、友達を招待したくない。なんか昔私も描いてもらった気がするけど。
私達はアランの案内で、綺麗なお城の中を見て回った。
大きな石像とか、怪しい壺とか……どれもこれも、壊したら大変なことになりそうだ。
音をたてないようにひっそりと歩く私達。
「このネックレスは初代の王様が御妃様に送ったものだよ」
「ふむふむ、アランは沢山勉強したんだね」
「これは僕が将来受け継ぐものだからね、リリアナ、君もだよ」
そうなのだ、私は一応王家に嫁ぐ予定なのだ。
いまいち実感はないけれど……正直荷が重いけれど。
こんな財宝、どうしろって言うのだろう? 私は安いネックレスや安いドレスで十分なのだ。なくすし汚すし……。壊さないようにそっと使うのは、ヒヤヒヤする、
「僕の国は平和だし、進んでるから、きっとリリアナも自慢の国だと思うんだ」
「そうね戦争とは無縁だし、貧困問題もないし……」
「それはお父様の努力の結果だから、僕も頑張らないと……」
「期待してるわ。未来の王様!」
「リリアナも王妃様なんだよ?」
「私なんかにできるかなあ」
「リリアナ以外にできないよ、むしろ」
そうこう言っているうちに、私はアランと私の肖像画を見つけた。
懐かしい、幼き頃の私達。写真もあるけれど、肖像画は時間がかかる分価値がある。
ピンクのドレスを着た私と、しっかりとした王族に伝わる礼装をしたアラン。
「これがリリアナと、僕の思い出だよ」
アランはどこか得意げに笑っている。背景は私の家のバラ園だ。
大輪のバラに、綺麗な太陽の日差しがキラキラして見える。
なんだかバラの甘い香りが漂ってきそうだ。
「どれどれ……」
「!? エディ!? 危ないっ」
とっさに声をあげた私。エディが物珍しげに前に出て……思いっきり転んだのだ。
「きゃあ!」
思わず叫ぶ私。だって、肖像画に傷がついたのだもの!
これは大事件だ。ぶつかった部分部分が、肖像画を削り、アランと私の顔に傷がついている。エディは結構しっかりした体格をしているから……こういう時大惨事になる。
「あ……」
言葉をなくすエディ、固まるアラン、血の気が引いた顔をしたレイラ。
「アラン兄さん、すみません……」
「いいんだ、これぐらいなら修復可能だから……」
言葉ではそう言いつつ、かなり落ち込んだテンションだ。
アランの性格上、エディを責めることはないだろうけれど、それを理解しているエディもかなり反省していた。そこでだ、私は思いついた。
「皆で肖像画を描いてもらいましょう! 今日の記念に」
私は必死で思いついたアイデアを言った。
これなら、しょんぼりモードのアランも元気を出すだろう。
「リリアナ、それはいいね。一生の思い出になる」
「ボクもいいの?」
メルが一番はしゃいでいる。一般市民の子供にとっては、肖像画なんてあこがれるものでしかないのだ。
「もちろん、いつものメンバーでやらなきゃ記念にならないわよ」
「わあいわあい」
「あの、わたくしは……」
レイラが恥ずかしそうに顔を隠した。なので強引に私は彼女をひっぱる。
「レイラも!」
「メイドですのに……」
「メイド以前に私の親友よ!」
「もったいないお言葉……」
レイラは今にも泣きだしそうだ。
そしてアランは肖像画を描く画家を呼び出した。
大人数での依頼に、少し困惑していた画家だけど、なんだかんだで王子様の命令である。快く受け入れるしかないのだった。
「真ん中にはアランよね」
「王子様だからね、アランお兄ちゃんは」
「メルも小さいから前の方」
「わあい、最前列!」
「リリアナ、僕の隣に」
「はーい」
わいわい騒ぎながら、肖像画に写るポーズを決める。
レイラはとにかく端っこに行きたがった。
「では、このポーズでお願いします!」
私は皆で立ち位置を決めると、そう宣言した。
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それから数時間後。いい加減足が痛くなってきた。
「まだ終わらないの?」
「あの、リリアナお嬢様、動かないでください」
私の言葉に画家が言う。
「仕方がないよ、この人数だもん……」
苦笑いするアラン。
よく考えれば、人数が多ければ多いほど描くのに時間がかかって当然なのだ、
私はそういえば、肖像画が一枚しかない理由を思い出した。
私が書いてる時間を待つのを我慢できなかったのだ。
「トイレ行きたいよおおおお」
「我慢してくださいっ!」
画家の悲痛な叫びに、私は限界までトイレを我慢する羽目になるのだった。