表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/69

女装男子はお好きですか?

題名変更しました。


「ねぇレイラ、この髪型素敵じゃない?」

「そうですね、リリアナ様によくお似合いですよ」

「流行の髪型が乗っている雑誌は、やっぱり見ていて退屈しないわね。大きなリボンは、永遠の乙女の憧れね」


 私とレイラは、ファッション雑誌を片手に生徒会室で暇をつぶしていた。

 レイラは手先が器用なので、よくヘアアレンジをしてくれる。

 自分の分もすればいいのにとは言うのだけど、彼女は自分がメイドだから目立ちたくないのだという。なんて健気なのだろう。

 生徒会室はほぼ、なんでもありの部屋になっており、ヘアスタイリング関係どころか、衣装までそろっている。


(だって、無駄に広いんだもの。アランがいるから、お金にも全く困らないし……)


 私はレイラにやりたい髪型を伝えて、髪を結ってもらった。

 編み込みをたくさんした、可愛い髪型だ。


「何をしてるんだ?」

「バイオレット先輩。レイラに髪をいじってもらってるんですよー」

「へぇ、綺麗だね。すごく似合ってるよ」

「ありがとうございますっ」


 バイオレットは荷物をテーブルに置いて、にこにこしながら私達を見た。

 目を細めて愛しいものを見るように見つめてくるので、どこか恥ずかしい。


「ふたりとも、可愛いから何でも似合うと思うよ」

「そんな、バイオレット先輩も似合いますよ! ……そうだ、バイオレット先輩の髪の毛もいじってもらいましょう! ね、レイラ」

「いいですねー」

「……わたしは男だけど、まあいいか。どうせ身内か先生しかこの部屋を訪れないし」

「わあい」


 バイオレットが承諾したので、私の編み込みが終わるとレイラはバイオレットを椅子に招く。

 そのままバイオレットは半笑いの表情で席に座った。レイラは若干嬉しそうだ。

 バイオレットのほうが、私より長くてコシのある髪をしているし、いじりがいがあるのだろう。ブラシで丁寧に髪を整えてゆっくりと巻いていく。


「何してるの?」

「メル。遊びに来たの?」

「そうだよーリリアナお姉ちゃん。髪の毛くるくるだねー」

「メルもあとでしてもらう?」

「いいの?」

「いいわよね、レイラ」

「いいですよー」

「やったあ、ボク可愛くしてね?」

「元からメルは可愛いよ」

「そうだったあ」


 キャッキャとはしゃぐメルの頭を撫でる。

 メルの髪は男の子にしては長いし、結構アレンジがききそうだ。

 そのうち着々とバイオレットの髪の毛が出来上がってくる。まるで宝塚みたいな、グリングリンの巻き髪スタイル。


「どうせならメイクもしちゃいなよ―レイラ」

「えっ」


 バイオレットが不満そうに声をあげた。


「そうですね、しちゃいましょうか。メイクセットください、リリアナ様」

「はーい」


 そこで暴れて拒否しないあたり、バイオレットは大人だと思う。

 ため息をついてされるがままになっている。

 メルは面白そうにそれを眺め、自分の番を待っていた。


「ドレスもありますし、順序は逆ですが着てみましょう」

「いいね! レイラ」

「紫のドレスとかどうでしょう? バイオレット様らしいかと思われます」

「わーわくわくする」

「わたしはげんなりしているけどね」

「えー? 面白いじゃないですかあ」

「それは女子達だけだと思うよ?」

「ボクも面白いよ!」

「それはメル君が子供だから」

「そんな事ないもんっ」


 メルが不満の声をあげた。

 そしてバイオレットは妖艶なる貴婦人に変身した。

 扇を持ってオホホと笑えば、完璧だろう。


「すごい―美しい! 次はメルね」

「かわいらしいツインテールにしましょう。そして毛先を巻いて」

「わ、それいいね!」

「ボクピンクの服がいいなあ。だって、ボク可愛いから似合うでしょ」

「たしかに、淡い色が似合うわねー」

「女子達はすごいなあ……わたしはおとなしくお茶をしているよ」


 きゃっきゃしながらメルの髪を結い、リボンでまとめていくレイラの目は輝いている。

 全体をピンクと赤でそろえた、可愛い感じの女の子が出来上がった。

 私がロリコンだったら、誘拐しちゃいそう。

 鏡を与えるとメルは満足そうに笑った。


「わー可愛い、さすがボク。写真も欲しいな」

「撮ってあげるわ」

「わーい」

「バイオレット先輩も、ほら」

「えー……」

「嫌そうな顔じゃなく、笑顔で」

「はいはい」


 そうこうしているうちに、来客が来た。アランとエディだ。


「リリアナ―……ってなにこれ」

「オレ帰る」

「待ってよふたりとも、Uターンしないで!」


 逃げようとするとふたりをバイオレットがつかんだ。


「わたしだけなんてことは、ないよね、後輩君たち」

「げっ」

「……でも、僕は王子なので」

「アランの女装きっとかわいいよ? 見たいなあ」

「じゃあ、しようかな」


 即答するアラン。ぎょっとするエディ。


「アラン兄さん軽いっ超軽いって!」

「リリアナのかわいいおねだりだよ? 断れる? エディ」

「うっ……それは……」

「腹をくくって女装しよう」

「うん……」


 こうして、ふたりも女装することになった。

 アランは水色を基調とした清楚可憐な感じの美人さんに、エディはオレンジを中心にした活発で元気な感じの美少女に仕上がった。ふたりともイメージに合ったドレスを着せたけれど、とても似合っていた。

 そこでだ。


「この格好で出かけてみない?」

「えっ何言ってるのリリアナ……僕嫌だよ」

「オレだって」

「わたしも」

「ボクはいいよー」


 元気よく返事をしたのはメルだけだった。まあ、そうだろうけど、これって絶対楽しいじゃん!? 私はグイ、とアランの手を取った。


「お願いアラン」

「わかったよリリアナ」

「どこまでも軽いアラン兄さん……」

「仕方がないだろエディ。リリアナは天使の生まれ変わりなんだから」

「私はただの人間よ」

「前世の記憶はないから仕方がないね!」


 何を言い出すのだろうアランってば。

 私の前世は日本の女子高生よ。

 エディは呆れた目線でアランを見る。


「しかたがない、オレも付き合うよ」

「エディ、大好きよ!」

「僕は?」

「大好き!」

「……リリアナさん、大好きを安売りするのはやめたほうがいい」

「バイオレット先輩だって大好きよ?」

「!」


 あ、バイオレットが真っ赤になった。わたしは思わず子供のように笑う。


「年上をバカにするのはやめたまえ!」

「はーい、じゃあ、出かけようか」

「それは決定事項なのか……」

「バイオレット先輩なんか言った?」

「別に……」


**********


 熱い視線をあちらこちらから感じる。

 みんなが私達を見て何やら言っている。


「何あの美女集団」

「ちっちゃい子もかわいい」


(ふふふ、さすがレイラよね。みんなの美貌をさらに磨いてくれちゃって)


 女の私が見ても嫉妬しちゃうぐらい、みんなかわいい。

 それぞれの個性が残る美人揃いだ。


「視線が恥ずかしい」

「何言ってんのエディ。もっと堂々として! メルみたいに」

「あいつは子供だからできるんだよ……」

「それに、声もかわいらしくね?」

「無茶ぶりだっての」


 エディが眉間にしわを寄せる。私はアハハと笑う。

 そんな時、軽そうな男達から声がかかった。


「ねぇ、君達。おれと遊ばない?」

「ナンパだ……」

「すみません、お断りします」


 目を丸くするエディに、にこやかに対応するバイオレット。

 アランは私の腕を引っ張った。でも多分彼らに私は眼中に入ってないと思う。

 メルは男たちの下をくるくる回っている。


「お兄さん、なんか奢って―」

「メル君!」


 レイラが叫んだ。男達は満足げに屋台で杏子飴を買ってくれた。

 一応私の分もある。メルは大喜びで彼らに頭を下げた。

 杏子飴は甘くてすっぱくて、すっごくおいしかった。 

 そしてそれから数分後。


「おーい。そこの美人さん達、おれらとお茶しない? あ、そこの金髪で小さいのは却下。可愛くない」

「なんだと!?」


 アラン、荒ぶる。それをエディが取り押さえる。

 私は思わず苦笑いするしかない。


「こんなにかわいいリリアナが眼中にないなんて……」

「リリアナお姉ちゃんが一番かわいいのにねー」


 アランとメルが不満を述べるけど、そんな事ないのに。

 私は少しうれしくなってアランの肩を叩く。


「大丈夫だよ、私は悔しくないしっ」

「そんな事……僕はすごく悔しいよ」

「だって、私、かっこいい男の子にはいつも囲まれてるもん」

「誰!?」


 アランが食い入るように私を見つめた。

 私は噴き出す。それで大きく笑いだす。

 ほかのメンバーは不思議そうにするけど……だってねぇ。


「皆の事だよ?」


 かああ、と顔を赤くする皆。笑うレイラ。


「皆さんはとてもかっこいいですよねー」


 レイラも同調する。


「ねー」


 そう言って私とレイラは手をつなぎ歩き出す。

 男子勢はどこか恥ずかしそうにのろのろ歩いていたけれど、さらにまたナンパをされても、にこやかに返事を返していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ