レッツゴー!新入生歓迎パーティ!
新入生歓迎の宴が始まる。紫のカクテルドレスを着た私は、白いショールを肩に巻いていた。それに対してレイラは、ピンクのシンプルなドレスを着て、大ぶりのイミテーションパールのネックレスをつけている。まさにヒロイン、な装いだ。
それにしても私の悪役っぽいセンスはどうにかならないのかしら、お母様が選んでくれたものなのだけど……。でも、鏡を見れば、すごく似合っているのよね……。
お母様のセンス自体は、間違ってなくて断れないというか……。
「リリアナ様、わたくし、やっぱりダンスなんか……」
「大丈夫よ、レイラはキレイよ」
「そんな事は、リリアナ様のほうが美女って感じです! ……アラン王子達も、絵になってますし、相変わらずゴージャスですね、アラン王子の衣装。金の糸とかふんだんに使ったのが、定番だなんて」
「キラキラしてるわね」
アランは白地に金をベースにした、いかにもな王子様ルックでたたずんでいる。
エディは質素な深緑色の服を着ているけれど……。
「紫でお揃いだね、リリアナさん」
「バイオレット先輩」
「メル君は?」
「さすがに今回は来ないみたい。学生オンリーのイベントだしね」
すごく行きたいと駄々こねてたけれどね。
あの子は、踊れるのかしら? 器用そうな印象はあるけれど……。
緊張しているレイラを励ましながら、音楽の前のあいさつを聞く。
音楽が鳴り出すと、踊りだす私達。私、ダンスは得意じゃないけれど、数をこなしたから人並み程度にはこなせるようになったの。まあ、たどたどしいけれどね……。
「きゃあ」
レイラの悲鳴があちらこちらで聞こえる。
よく見ると、相手の足を踏んでしまっている。そこそこの貴族の子供もいるからか、かなりレイラはおびえた様子だ。
(頑張って、レイラ……)
「いてぇ」
「すみませんすみません」
「これだからメイドは……」
そんな会話が聞こえる。いたたまれない、と思ったけれど……そこに
「そこ、初心者をエスコートするのも紳士のたしなみじゃないのかな?」
「アラン王子!」
「わたしもそう思うね」
「生徒会長!」
学園の権力者ふたりに言われて、レイラの相手役は顔を青くする。
そしてその後は静かにダンスを皆が踊っていた。
これで丸く収まったと思ったのだけれど……。
**********
「ダンスが終わったわね。レイラは?」
「そういえば見かけないけど……」
「お友達に呼ばれていたけれど?」
「バイオレット先輩、レイラに友達はいないはず……」
しまった、油断していた。レイラは今、何をされているのだろうか。
「多分上の階から見渡せば、外ならわかるはずだよ」
「ありがとうバイオレット先輩! 私最上階の五階に上がってみる」
「僕も行く」
慌てて走り出す私達。そして、校庭の片隅に、女の子の集団を見つけた。
「いたっ、いたわよっ」
「急いで戻ろう、リリアナ」
「ええ、アラン!」
またマッハで走っていく私達。たどり着くと私は風で女の子の達のスカートをめくった。
その途端、レイラのスカートめくれ上がりそうになり、焦る。
すぐに私だって察してくれて、スカートを押さえてくれたけれど。
「私達のレイラをいじめるなんて許せないわ!」
「あ……リリアナ様に、アラン王子……」
ガタガタ震えるいじめっ子達に、ため息をつくレイラ。
「リリアナ様。わたくしは大丈夫ですから、落ち着いて。こういうのは、勉学の実力でどうにかするのがいいと思うんです」
「なるほど、さすが優等生レイラ」
私は思わず感心する。そうね、ケンカするよりはよっぽどいいわね。
アラン達もフムフムと言った様子だ
「特に魔法は、わたくし自信ありますし」
「レイラ・ローズ……見てらっしゃい! あたし達も勉強じゃ負けないわ! そしてあんたのこのポジションを……」
「ええ、お互い頑張って成績をあげましょうね」
「ぐぬぬ……」
満面の笑顔のレイラは、やっぱり頭がいい。
そうすることで学校中の学力があっていくし、いいことだらけだ。
ハッ!? バカな私にとっては全然よくないんじゃ……。
顔色をころころ変えている私を見て、レイラは笑った。
「大丈夫ですよ、リリアナ様。わたくしはリリアナ様の家庭教師もやりますから。なんのために、メイドなのに学校についてきたと思います? 貴女のためですよ」
「えっ、そうなの!?」
「じゃなきゃ、学費を出していただいてまで就学するのは申し訳ないですから」
知らなかった……たしかに、アランは魔法は使えないし、授業のサポートは無理だもんね。
魔法を使えるレイラと同じクラスってだけで、課題はほぼ同じ。
一緒に勉強すれば、卒業も容易だろう。
「では、ごきげんよう」
「レイラ・ローズめっ、うう、悔しい」
いじめっ子達はハンカチを噛んで私達を見て泣いた。
そういえば、ここはゲームではアランのイベントだったんだわ……まあ、いいや。
レイラは上機嫌だし、ほかのメンバーも満足そうだしね。
「でも、嬉しかったですよ。皆さんの気持ち」
「レイラ……」
「そばにいて恥ずかしくないように、これから魔法の勉強をしようと思います。リリアナ様もどうですか?」
「いいわね! 私もやるわ。アラン達は別室にいてちょうだい。魔法に巻き込んだら嫌だから」
「そう、それなら……僕は魔法が終わった時に食べるお菓子を買いに行こう」
「オレもついていくよ、アラン兄さん」
「わたしは、ドリルでも作っておきますかね、リリアナ様が辞めてしまえば、アラン王子もきっと学校を去るでしょうから」
「ありがとう! 皆!」
「リリアナのためなら……ねえ?」
そう尋ねるアランに、皆が頷く。ああ、なんて優しい友人達。
私は上機嫌に鼻歌を歌いながら空き教室に、レイラと向かった。
何もない、殺風景な教室を見つけてウキウキしながら入る。
そして私達は構えあう、
「さあ、魔法の特訓の始まりよ! 行くわよレイラ!」
「はい、リリアナ様! ではっ……水!」
「風よ……」
全力で勢いをつけて魔法を使う私達……そこら中からバキバキと言う音が聞こえて冷静になった。魔法の特訓は外でやるべきだったのだと。
当然のように先生たちが駆けてつけてくる。
「おい!? 何事だっ」
「うわああああ、すみません先生! 魔法の特訓をしていました!」
「外でやれ! 大迷惑だ! 学校が揺れてるんだぞ!?」
「申し訳ございません、悪いのはわたくしですっ」
私達はこっぴどく叱られ、逃げるように外に出て行ったのだった。