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否日常ハイスクール!  作者: はり
第1章
9/15

「あーそうそう、言っとくけどあの人には注意した方がいいね」

 階段を下りながら、前を歩いていたはぐみが唐突に振り返った。

「あの人って、生徒会長?」

「そーそー。うかつに近寄らない方が身のためよ。こわいこわーい人だから」

 人差し指を両方立てて頭に載せ、ツノを作ってみせるはぐみ。

 本来なら近寄ることもなかったろうに、近寄らせたのはどこの誰だよ、なんて思いながらも「あっそう」と簡素に答える。

 そりゃ、このずれた学園のゆがんだ生徒たちをまとめ、率い、統括しているのだ。

 生徒会長がただものではないことくらい、わかっている。

「でも、そういうはぐみは会長にだいぶ喧嘩売ってるみたいじゃないか」

 ピッキングして侵入したり、情報盗んで売り飛ばしたり。普通の学校なら退学処分並のはずだ。

「あたしは平気なの。ほら、史上最強の女だし」

「ほらって言われてもね」

 なにを根拠にそんなこと言ってるんだか。

「あれっ」

 呆れと共にため息を吐き出したところで、前を歩くはぐみが突然立ち止まった。華奢な背中にぶつかりそうになってつんのめる僕。

「なんだよ急に」

「いない」

 はぐみの後ろから、彼女が指差す先を見る。いつの間にか死体発見現場まで戻ってきていたらしい。だけどはぐみの言うとおり、廊下にごろりと寝転がり、通行の邪魔をしていたはずの死体はどこにも見当たらない。

 あれ? と僕も首をかしげる。

「ここだったよね、死体落ちてたの」

「うんそう。ここで仰向けにどーんと、アジの開きみたいに」

 両手を広げて口を開けて、さっきの死体のものまねをしてくれるはぐみ。

うーんなんでいなくなってるんだ。まさかあの死体はほんとは死体じゃなくて、ただ廊下で眠っていただけの生体だったとか?

 疑問符を飛ばしながら、近くで談笑していた女子生徒に声をかける。

「ここにあった死体知らない?」

「死体って、私服で転がってた絞殺死体のこと?」

「そうそれ」

「それなら、さっき持ってかれちゃったよー」

「持ってかれた?」

「うん、なんかスーツ着た男が一人で持ってった」

 スーツ着た男? 女子生徒の言葉に思い当たる節がなく首をかしげる。

もしかして、その人が会長の言っていた死体売買人だろうか。それとも、あの死体の仲間?

「よかったねー手間が省けて」

 僕の隣でぐーっと腕を伸ばし、伸びをしながらはぐみが言う。

「処理の必要もなくなったし」

「いやそういう問題じゃ」

 ないだろ、と言いかけて口をつぐむ。

 いや、そういう問題か。僕は死体をどうやって片づけるかで悩んでたわけだし。

 うーん、いいのかなあ。あの死体がいったい誰で、誰が殺して、誰が回収したのか、調べないと後々面倒なことになりそうだけど。

 行場の無いもやもやした感情を持て余す僕のシャツの袖を、はぐみがぐいぐい引っ張ってきた。

「さつきごはん、ごはん食べ行こごはん。早くしないと昼休み終わっちゃう」

「あ、うんそうだね」

「あとこれ、入界届。サインしよサイン」

「しません」

 手渡された入界届をびりびりと破いてから、僕らはようやく食堂へと歩き出す。


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