第一話 僕
この小説は残酷な表現を含みますので苦手な方はご遠慮ください。
僕は人が避けそうな裏道を通学路として利用している。表通りは避けている。少し遠回りになるが、僕にとってはとても楽だ。なにせ観衆に注目されない。そんな風に裏通りをたまに走ってくる猫達を避けながら僕は少し昔の記憶を思い出していた。
「世の中にはいじめる側の人と、いじめられる側の人がいる。」と、幼い頃父親が言ってた。でも、僕は違うと思う。あと二つ「いじめられる側を守る人」と「見て見ぬ振りをする人」だ。僕は「いじめられる側」だった。それも、多分一番酷い方だと思う。
僕は容姿がほかの人と違っていた。
.....いや、正確には男性とは違っていたと言うべきだろう。僕の顔は中性的を通り越して、女性のような顔つきだった。
とは言っても、別段いじめられるということは無く、友達やクラスメイトからもからかわれる程度だった。
だが、あの日から僕の周囲から放たれるほぼ全ての視線が変わった。
中学校二年生の夏休みの初日、正確には2010年7月21日、僕の髪の色は、銀髪に変わった。原因は不明。とにかく朝起きると銀色になっていた。母親と父親は「いつ染めたんだ!」と、怒りながら聞いてきた。でも、僕自身でも分からなかったので知らないとだけ言っていた。母親がヘアカラー剤を買ってきて元の黒髪に染め直そうとしたが無駄だった。
結局、病院で検査を受けることになった。医者に見せるとたいそう驚いていたが、しばらく診て、DNA検査をする事になった。一週間後の昼過ぎに向かうと、医者は苦い顔をして親と話していた。簡単に言うとDNAが書き換えられているそうだ。解決策も無いと言われ、僕はこの容姿のまま一生暮らしていくことを余儀なくされた。
夏休みが明けると僕へのいじめが始まった。友達やクラスメイトからは気味が悪いと避けられ、代わりに「いじめる側の人」が僕の周囲には増えていった。吸いもしないタバコを持ってきて僕の肌に当てる奴や、体操服が女物に入れ替えられていることもあった。殴る蹴るは当たり前で毎日出血していた。教師達は何も言わなかった。自分のクラスで深刻ないじめが起きているなんて言ったら大問題になるからだろう。親もあの日から僕を避けていて火傷を作って帰ってきても何も言わなかった。
でも僕は特に何も思わなかった。僕自身も僕の身体がおかしい事ぐらい分かっていたし、何より「いじめる側の人」を特に気にしなかったからだ。だがそんな態度を快く思わなかったのか、いじめは日々エスカレートしていった。今では、水泳の授業中に溺れさせることや金銭を奪っていくことも当たり前となっていた。
それでも教師には相談しなかった。無かったことにされるだけだと分かっていたから。
それでも現在中学三年生の僕はこうして学校に通っている。理由は至極簡単で出席日数の規定を守るためだ。退学させられたら負けた気になりそうだから。でも三分の二以上の出席率をキープすればいいので火曜日と水曜日は休んでいる。教師も特に文句は言わない。何故なら文句をつければそれは僕へのいじめがあると認めることになるからだと僕は推測する。でも、もうじきこんな世界とはおさらばだ。僕には関係なくなるこの世界の青空に僕は笑いかけた。
初作品です。誤字脱字等ありましたら教えてください。よろしくお願いします。