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Experience Point  作者: にぃ
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第五十八話 実は前々から行ってみたかった場所があるんです

今年最後の投稿です!

今月は色々ありすぎて更新が4、5回しかできなかった……

来年はもっと更新速度上げたいですが、12月と同じペースになりそうな雰囲気もありありと……

どうかごゆるりとお待ちいただけると嬉しいです。

あと、今回はカオス回です。

 結局夕暮れまで歩き回り、月羽への誕生日プレゼントは無事購入できた。

 あの子のことだから高すぎる物は委縮して喜んでもらえない可能性がある。下手すると受け取ってもらえないかもしれないという懸念があった。

 しかし、安すぎるものはそれはそれでプレゼントしてどうなんだ、という前提以前の問題だ。

 僕の財布の中身の限界も考えて、ベストなのは千円前後の代物。且月羽が喜びそうなものを必死で探した。

 だけどあの子のセンスはどこかズレている所がある。黒い霧の出るカキ氷器みたいな変な物を欲しがりそうだ。


 そこで、僕は一つの名案を思い付いた。

 変な物を探すのであれば変な店に行けばいいということを。

 例えば、一回使ったらもう録音することの出来ない録音機が置いてある店……とか。

 あのじゃがいもスター録音機を売っていたあのお店。僕はそこで月羽への誕生日プレゼントを手に入れた。


 そして、翌日。

 午後2時。

 駅前のいつもの場所。

 そこに今日の主役が柱の陰にチョコンと立って待っていた。


「こんにちは月羽。安定の早さだね」


「こんにちはです一郎君。一郎君より早く到着することが私のモットーですので」


 相変わらずの謎こだわりだった。


 制服姿以外の月羽の格好。

 二人きりで出かけることは多くなったが、月羽の格好は毎回違った。

 制服に似た感じの地味な感じの私服だったり、季節感がまるでないけど妙に似合っている服だったり、子供っぽかったり、大人っぽかったり、と統一感はまるでなかった。

 今日の月羽の格好はまたどれにも属さない。

 上下真っ白のシャツとスカート、上には水色の布地を重ね着している。

 月羽にしては季節感あった服装だ。それも当然のように似合った着こなししていた。黒髪長髪だから薄めの色の服の方がカラーが合っていて似合うなぁ。

 なんか……休日に会うたびに可愛くなっているような?


「……? どうしたんですか? 一郎君」


 月羽が不思議そうに尋ねる。

 その問いかけにハッと意識を戻した僕は慌てて弁明した。


「ああ、ごめん。普通に見惚れていたよ」


「……へ?」


 弁明――というより、正直な感想が口からこぼれ出た。


「あ、えっ? あ……あの……その……あ、ありが――」


「ところで、早速だけどさ、月羽、今日誕生日だよね」


「普通にお礼くらい言わせてください!」


 おや? なんか話のタイミングミスったか?

 やっぱり誕生日の話題は別れる間際に言うべきだったか? いや、でも月羽も自分の誕生日くらい自覚しているはずだし、変な期待を持たせたまま一日を過ごすより良いと思ったんだけど。


「もぅ……もういいです。えっと、誕生日の話でしたよね。確かに今日は私の誕生日ですが……一郎君覚えててくれたのですか?」


「もちろん」


 結構前に、屋上で誕生日のことを話した日があった。


    ――『ち、ちなみに誕生日はいつなんです?』


    ――『8月1日だよ』


    ――『ちなみに月羽の誕生日は?』


    ――『私ですか? 7月25日です』


 懐かしい。確か初めて中間テストの勉強を二人で行った時だっけ。もう二ヶ月以上も前の話だ。

 あの時から密かに決めていた。生まれて初めて誕生日プレゼントなるものをこの子に送ろうと。


「あ、ありがとうございます。そ、その、嬉しいです」


 照れ臭そうにやや俯きながらはにかむ月羽。

 よし、プレゼントを渡すならこのタイミングだ! 喜んでいる今、喜びコンボだ!


「ここでこのプレゼントのターンだ!」


「え!? は、はい! ぇ?」


 あ、アレ?

 僕の喜びコンボ、なんかイマイチか?

 喜びを通り越して戸惑いが見える。


「あ、ありがとうございます一郎君。なんか会って三分足らずにこう何度も嬉しいことが重なるとは思いませんでした」


 一応は喜んでくれたみたいだ。喜びコンボは不発気味だったけど、一応喜んでくれたならいいか。

 ただ、問題はプレゼントを開けた後の反応だな。

 月羽さんの謎センスが変な方向に光らなければいいのだけれど。


「き、綺麗にラッピングされてます! 感動です!」


 今日一番の良い顔をする月羽。

 その感動は僕の褒め言葉やプレゼントよりもラッピングに向けられていた。


「開けるのがもったいないです! で、でも開けたいです!」


「いいよいいよ。開けちゃって」


「いいんですか! で、では早速っ!」


 言いながらベンチにプレゼントを置き、慎重に慎重に包装紙を剝いていく。

 貰い物の包装紙とか綺麗に保存するタイプの子だな、月羽は。

 前々から思っていたけど、動きが小動物みたいだ。


「うわぁぁ。わぁぁ! 綺麗です。可愛いです。美しいです。可愛いです! ブローチです!」


 言動が怪しいけど、しっかりと喜んでくれているようだ。なぜ可愛いを二回言った。

 僕がプレゼントに選んだのはブローチ。

 といっても高級品ではない。あの怪しいおもちゃ屋に置いてあった代物。故にこれはただのおもちゃだ。

 しかし、オモチャにしてはそれなりの値段がした。価格にして780円。

 満月を中央にその両サイドに安っぽい白い羽根を填め込んだだけのブローチ。

 だけど月羽にピッタリだと思った。

 月に羽を括り付けるセンスが月羽の名前と一致していたからだ。

 これを見つけなければブーメランこけしをプレゼントする所だったけど、こっちを送って正解だったみたいだな。


「大切にします! すごく大切にしますね。一郎君」


「う、うん」


 ここまで喜ばれると逆にこっちが委縮してしまう。

 でも目を子供みたいに輝かせている月羽を見ていると、何だかそれだけで微笑ましい気持ちになれる。

 これも月羽の大きな魅力の一つなんだよなぁ。


「えへへ~、早速つけてみました~!」


 プレゼントしたブローチを胸元に着け、嬉しそうに僕の周りをクルクル回る月羽。

 ますます子犬っぽさが増していた。


「防御力が3くらい上がってそうだね」


 素直な感想を述べてみた。


「不意にピストルで撃たれてもこのブローチが私の命を守ってくれそうです!」


 防御力+3どころか、神アイテムと化していた。


「賢さや美しさも上がっていればいいんだけど……」


「大丈夫ですよ! 私、ブローチを付けてから頭の中がスッキリしたような気がしますもん」


 呪いのアイテムだった。


「きっとオートヒール効果が私の脳を活性化させているんですね!」


 やっぱり神アイテムだったようだ。


「一郎君のおかげで今日の私は防御力+3、かしこさ+5.美しさ+3、オートヒール+オート蘇生効果を手に入れました。ありがとうございます!」


 やたら具体的な数値が出てきた。

 780円の割にはかなり優秀な防具のようだった。


「私、一郎君の誕生日、ちゃんと覚えていますからね。ブローチ以上のプレゼント、送りますから!」


「う、うん。ありがとう」


 さりげない一言だったけど、内心かなり嬉しかった。

 プレゼントうんぬんよりも誕生日を憶えててもらえたことが嬉しかった。


「じゃ、行きましょう! デート♪」


「あれ? 経験値稼ぎはしないの?」


「んー、経験値稼ぎの気分になったらやりましょう! 今の私はデートの気分です」


 この子も変わったなぁ。

 前までは僕が引っ張っていく形が多かったけど、今は月羽に引っ張られることが多い。

 でも負けてられないな。

 とりあえず、今日は目一杯楽しもう。


「そういえば今日はどこに行くの? また呪いのサイコロで電車移動する?」


「だから呪われていません! 今日は電車移動無しでいきましょう」


 てことは地元探索か。

 もしかして初めて二人で出かけた時以来じゃないか?


「実は前々から行ってみたかった場所があるんです」







 ミニテーマパーク『ネメキ』。

 遊園地みたいな巨大なアトラクションはないが、飲食店、娯楽施設、劇場、屋台等々を一つに集めた場所がこの街にはある。

 ……が、それほど繁盛はしていない。

 その理由として、第一に立地条件の悪さ。駐車場も無く、何故か街外れにある故に足を運びにくいのだ。

 現に僕らもバス移動だ。歩いていける距離でもあったけど、この暑い中それは勘弁だったので、250円叩いて快適バスの旅だ。


 次に、娯楽施設のしょぼ――渋さ。

 妙にレトロなゲーセンや駄菓子全般を売っている飲食店、劇場も歌舞伎舞台にしか使わない、若者よりも老人受けしそうな施設なのだ。

 だけど――


「実は7月の頭にリニューアルオープンしていたみたいなんですよ。お店もオシャレになったってクラスの人達が話していたのを聞いてました」


 話していたのを『聞いた』というのが泣ける。


「リニューアル記念で入場料もお手軽価格♪ という事情も聞きました」


 月羽さんの盗み聞き自慢だった。

 ともあれ、話を聞く限りでは期待できそうだな。楽しい誕生日になればいいな。


『まもなく~、ミニテーマパーク前~、ミニテーマパーク前~』


 タイミング良く、バスのアナウンスが響く。

 煌びやかなオブジェがバス停となっている。

 おお。本当にオシャレだ。なんか外国チック! 外国のオブジェとか見たことないけど。


「一郎君! 今日は楽しみましょうね!」


「うん。今日はずっとここで過ごそう」


 夏休み初日。

 月羽の誕生日。

 このめでたい日の思い出作りの場所が決定した。







「こんにちは。ごきげんよう。そして今日の日をありがとう。テーマピャーク『ネメキ』にいらっしゃいネメ♪」


 戦隊モノのレッドの格好をした人のお出迎えがあった。

 いきなり帰りたくなった。

 何戦隊のレッドなのかは特定できないが、ヒーローにあるまじき語尾を使っている時点でウケつけないというか……なぜ可愛いらしい語尾を付けたのか……


「パンフレットをどうぞネメ」


「は、はぁ……」


 ネメネメ言うレッドさんからこのミニテーマパークのパンフレットを受け取った。

 中の人も大変だろうなぁ。暑いし。僕だったら絶対に中の人はやりたくない。


「どんなことが書いてあるんです?」


 僕の肩に手を添えながらパンフレットを覗き込んでくる月羽。

 パンフレットにはこんなことが記されていた。




 入場門で僕と握手

   ↓

 魔女の館で魔女と握手

   ↓

 モブ子ハウスでモブ子と握手

   ↓

 ンイオウヤのお部屋でンイオウヤと握手

   ↓

 喫茶魔王城で魔王様と握手


 この順番で回ってくれなきゃ、レッドちゃん泣いちゃうネメ!




「「…………」」


 今ほどパンフレットなんてもらわなければ良かったと思った瞬間は無かった。







「ヒ~~~~ヒッヒッヒ! 魔女様の館へ~~ようこそ!!」


 魔女の館。

 一目見た感想はオカルトルーム。

 魔女様の背後に並ぶ不気味な般若面の数々、西洋を思わせる剣や盾がサイドに並び、部屋全体が真っ暗だ。

 それに何よりもオカルトなのが魔女様自身だ。

 ハロウィンでもないのに白雪姫に出てくる悪役みたいな恰好をしている意味が分からない。雰囲気作りだろうが、入場門に居たレッド並に訳が分からない。


「魔女度チェック、足相占い、相性占い、七味唐辛子一気飲み占い等々様々なことを見てやるよ。どれにするかい~ひっひっひ!」


 何からツッコめばいいんだお婆ちゃん。

 個人的には魔女度チェックが気になる所だけど……


「一郎君。足相占いと七味唐辛子一気飲み占いのどちらに――」


「相性占いをお願いします」


 月羽の言葉を遮って、一番マシな選択肢を無難に選ぶ。

 月羽は月羽ですごく残念そうな顔を向けているが、気にしない。


「相性占いねぇ……ヒッヒッヒ……いいだろう。二人とも手を繋いでみなされ」


 言われ、魔女様の言う通りに手を繋ぐ。

 相変わらずひんやりとした冷たい手だった。


「……ふむ」


 魔女様はその繋いだ手をじっと見つめながら何かを考えている。

 しかし占いという割には道具も何も使わないなんて珍しい。


「すんなりと手を繋いだね。ためらいもなく、繋げるところを見ると互いに大きな信頼関係を築けているのは見える」


「そ、そうですか?」


「えへへ~」


 何か占いという割には心理的な見透かしをされている気分だ。


「そ、それで、私達の相性はどうですか!? 軽く親友レベルを超えていますか!?」


 結構食いつきよく魔女様に尋ねる月羽。

 逆に僕は傍観者のように成り行きを見守っていた。

 やっぱり女の子の方が占いとか好きなのかなぁ。


「ワカンネ。相性は今からコンピュータ使って調べるから待ってなされ」


 まさかの機械に丸投げだった!

 魔女様は推理するだけみたいだ。


「ホレ、二人とも手を繋いだままでもう片方の手をこの台に乗せなさい。あとはこのノートPCが結果を出してくれるからの」


 オカルトな空間にデコ満載のノートPCが現れた。

 なんかもう、オカルトな雰囲気がこれだけで台無しだった。


『いよ~~~! ポン!』


 不意に魔女様のPCから一本締めの音声が鳴り響く。

 ちょっとビビった。


「結果が出たようだよ。今プリントアウトするから待ってるんだよ」


 先ほどの一本締めは占い結果が出た合図のようだった。なぜ一本締め? とかそのセンスは何? とか今更過ぎてツッコむ気力もない。

 それよりもデコりまくって虹色しているプリンターの方に僕はツッコミたかった。一応自重しておくけど。


「……ほぉ」


 魔女様が僕らよりも先に結果を一見し、小さく感嘆を漏らしていた。


「どうなんですか?」


「……まぁ、もうちょっと黙っていなされ」


 なぜか勿体ぶり始める魔女様。

 結果はすでに手元にあるのになぜ勿体ぶる必要があるのだろう?


「……やややっ!?」


「ど、どうしましたっ!?」


「……もうちょっと黙っていなされ」


 月羽も僕と同じように遮られてしまう。


「…………」


「…………」


「…………」


 無言の時間が進む。

 某クイズ番組を彷彿とさせる無駄な無言タイムの緊張感がそこにあった。


「アンタらの相性度は78%じゃったよ」


「「不意にアッサリと発表しないでください!」」


 今までのタメを全く活かしきれていない発表に僕と月羽のツッコミが重なった。


「しかも78%って……どうなの?」


「んー、悪くはないですが……偉く微妙な気がします」


 『相性抜群! キミ達の相性度は100%だ!』と言われるよりは現実味ある数値で良いかもしれないけれど、『78%じゃったよ』と言われてもこれはこれで反応が困る。


「ほっほっほっ。魔女様の占いは一組に対し一日一回までじゃ。次のスポットへ進むが良いぞ」


「は、はぁ……」


「で、では、行きましょうか」


 若干消化不良感が残ることが否めないが、魔女様が黙りこくってしまったので僕らは魔女の館を後にする。


 魔女様は僕らが居なくなったタイミングを見計らって、再度二人の相性度の結果がプリントされた紙に視線を移した。

 そして今一度表情に驚きを浮かべていた。


「この意地悪相性チェッカーに78%もの高数値を出させるとはのぉ。50%超えすら滅多にないと言うのに。ほっほ。珍しい物を見せてもらったよ。お二人さん」







「チュートリアルを聞いて行きますか?」


「「…………」」


 モブ子さんの家。

 その玄関先にて女の子が開口一番チュートリアル指南をしてくれた。

 たぶんこの人がモブ子さんなんだろうけど……


「えっと、チュートリアルって……何のですか?」


 おそるおそる聞いてみる。


「武器防具は装備しないと意味ないわよ」


「「…………」」


 話に繋がりが見えない。

 なんだこの不思議空間。

 魔女様の館とはまた違うシュールさがこの空間には存在していた。


「……っと、いう訳で、この家では貴方のモブ度をチェックしていきます」


「「なぜですか!?」」


「新しいサービスの提供みたいだよ。親会社の社長の意向らしいの。法人支店は上に逆らえないのがつらいのよね」


 モブ子さんが急にぶっちゃけた。

 たぶん上司にバレるとやばいことを言いまくっているような気がするけど、とりあえず気にしないことにしておこう。


「でも確かに面白そうですね♪ 一郎君、モブ度チェックしてもらいましょう!」


 出た、月羽の謎センス。

 おかしな物事にやたら突撃していきたがる月羽さんのアグレッシブっぷりにはとてもかなう気がしなかった。


「いいけど……モブ度チェックって具体的にはどんなことをするんですか?」


「ふっ、よくぞ聞いてくれたわね。モブ度チェック! それは貴方のモブっぷりをモブマスターであるこのモブ子さんが直々にその素質を伝えてあげようというサービスよ!」


「は、はぁ」


 つい迫力におさえてしまった。モブマスターと自称する割には存在感の強い人だ。


「具体的にはね、私がさっき唐突に申し出た『モブっぽいセリフ』を考えてもらって、この場で叫んで欲しいの」


 モブ子さんがいう『モブっぽいセリフ』というのは、開口一番叫ばれた『チュートリアルうんぬん』、『武器防具うんぬん』のアレか。

 言われてみればモブが言いそうなセリフのオンパレードだ。

 なるほど。モブっぽいセリフか。面白そうだ。


「容姿的には貴方達は中々モブっぽい顔をしているわ! きっと素質あると思うの! だからモブセリフで私を感動させてみて!」


 モブ子さん的には褒めてくれているのだろうけど、全く嬉しくないという不思議。


「よーし。モブ子さん! 私から行きますよ~!」


 月羽が意気揚々にモブ子さんに挑む。


「いいわよ。彼女。私をモブ動させてみて!」


 変な造語が生まれた。

 『モブっぽいセリフで感動させてみて』という意味だと勝手に推測する。


「そ、それは、まさか古の剣! やはり貴方が勇者様だったのですね!」


 ……事情を何も知らない人がこの言葉を聞いたら、ただの痛い子としてみられるんだろうなぁ。

 して、モブ子さんの評価は?


「んー、イマイチね。貴方の言葉は『主人公と共に苦楽を共にした仲間』が放つ言葉よ。モブがいう言葉じゃないわね。『主人公の仲間』と『モブ』の区別を付けるところから始めなさい」


 モブ子さん的には『無し』だったようだ。

 この人のツボってイマイチ分かりづらいなぁ。


「ぅう……駄目でした。一郎君、仇を取ってくださいぃ……」


 超悔しそうな表情で僕に訴えかけてくる月羽。

 この子はモブになりたいのだろうか?

 心情はともかく今この場に必要なのは主人公でもヒロインでもはい。モブなのだ。

 今の僕は一流のモブを目指すべきなのだ。


「学食で新作でたらしい。早く行こうよ」


「駄目駄目!! 主人公の親友ポジだよ! メインキャラクターの一角じゃない! 失格!」


 採点基準が分かりづらい上、厳しかった。


「どうしたの? もう終わり? 貴方のモブ魂はその程度なの!?」


 煽るなぁ、モブ子さん。人を煽るモブってどうなのだろう?

 ともあれ、このままではちょっと悔しい。


「さ、再挑戦します!」


「僕も!」


「良い目ね! 挑戦を許すわ! それと、モブならそんなキラキラした目をしちゃ駄目よ! 死後一ヶ月くらいの魚の目をしなきゃダメ!」


 なるほど。表情にも注意しなければいけないのか。勉強になった。

 よし! 絶対モブ子さんを納得させてみせるぞ!


「その銃かっこいい! 僕も撃ちたいZE!」


「駄目駄目! まだキャラが濃いわ! モブなら撃つ方よりも撃たれる方!」


「私、ステージの端っ子で頑張って踊ります!」


「駄目! ステージに立てる時点でそれはメインキャラの一角! 一歩間違えればその子は主人公に成りえるわ!」


「いらっしゃいませー。雑貨屋へよーこそー」


「悪くないわ! その一言を言う為に生きてきたような悲壮感! もっとやる気無さそうにいえば更にモブっぽくなるわ」


「ぃー! ィイー!」


「グッド! 昔の真っ黒な戦闘員を彷彿とさせるモブ敵っぽさ! 量産戦闘員はモブの鏡よ」


 ………………

 …………

 ……


 最終的に僕らはモブ子さんより『モブ準二級』の資格を与えられた。

 履歴書には書けない資格だよねぇ、これ。


見てくれてありがとうございます。


どんどんカオスになっていく誕生日デート。

この怪しげなテーマパークデートの後半は来年、なるべく早めに更新したいと思います。

なぜか僕が書く日常回は妙にカオスになっていく不思議……

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