第五十七話 経験値稼ぎ、開始、ですよ
イケメンもさりげなく凄いけど、小野口さん無双の回
7月23日。夏休み二日前。
ついに全教科の試験が返ってきた。
つまりようやく例の経験値稼ぎができる。
各教科で平均の10点以上を取ったら20EXP獲得、二人とも100位以内に入ればボーナスで40EXP獲得。 中間試験の時はボーナスポイントは得られなかったが、二教科だけ結果を得て40EXP獲得できた。
期末試験は中間の時以上に濃厚な試験勉強が出来た。
しかも中間の時とは違い、教科数も倍近く増えている。
早速今日の放課後、屋上で月羽と一緒に経験値稼ぎだ!
――と、思っていた矢先だった。
~♪ ~~♪
メール?
月羽かな。
マナーモード中のケータイを取り出しディスプレイを開く。
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From 小野口希
2012/07/23 12:46
Sub ヾ(*´∀`*)ノ
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明日の放課後 旧多目的室にしゅーごー☆
試験用紙を全部持ってくること!
月ちゃん 青士さん 池君も来るよん(^_^)v
-----END-----
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まさかの小野口さんからだった。
月羽以外の人からは初のメールだな。
顔文字多いなぁ。
~♪ ~~♪
……っと、またすぐにケータイが鳴った。
ディスプレイの表示を見るに今度こそ月羽からのようだった。
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From 星野月羽
2012/07/23 12:48
Sub (・_・)
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小野口さんの提案で 皆さんで
試験結果を確かめ合うみたいです。
勉強の成果を見たいとかで……
屋上での経験値稼ぎは中止ですね
でもでも経験値稼ぎはちゃんと実行
しますからね♪
-----END-----
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今まで貰った月羽のメールの中で最も長い内容のメールだった。
なるほど。二人きりの経験値稼ぎは中止になったわけか。
でもちゃんと期末試験の経験値稼ぎは行うみたいだな。
まぁ、皆の試験結果も正直気になる所でもあったし、これはこれで楽しそうだな。
しかし、どうでもいいけどサブタイトルに顔文字を付けるのが流行っているのだろうか?
~♪ ~~♪
また携帯が鳴る。今度もメールだ。
今度はどっちからのメールだ?
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From 池=MEN=優琉
2012/07/23 12:49
Sub ( -`д-´)
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↑の顔文字、なかなかの
イケメンだとは思わないかい?
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パタンっ。
さて、明日の放課後は皆集合だな。
楽しみだ。
7月24日、夏休み前日。
本日は終業式と通知表返しくらいしかやることがないので、午前で上がりだ。
一応学校は午後も開いているが大抵の生徒は夏休み気分ウキウキで下校するだろう。
いつもの僕だったら下校組の一員になるのだが、今日は例の特訓メンバーが集まることになっている。
なんかこの扉を開けるのも久しぶりな気がする。実質それほど経ってないのに。
ガラガラっ
「よう、セカンドイケメン。相変わらずの重役出勤だな」
イケメンの出迎えがあった。
全員揃っているようだ。西谷先生以外。さすがに先生はまだ仕事中か。
にしても、またしても僕が最後の登場だったみたいだな。
ていうか全員早いな。僕が遅いわけじゃないはずなのに。
「一郎君。試験用紙は持ってきましたか?」
「うん。ばっちしだよ」
全9教科分の試験用紙が僕のカバンに入っている。ついでに通知表も。
僕がいつもの席に着こうとすると、その前に月羽が駆け足で僕の前まで寄ってきた。
そして誰にも聞こえないようにこっそりと話をする。
「(経験値稼ぎ、開始、ですよ。後でメールもしますから)」
経験値稼ぎ。
ついに期末試験経験値稼ぎが始まるのか。
なんか二人だけの楽しみをコッソリとやるってワクワクするなぁ。
僕達五人の世界と僕と月羽の二人の世界の二つが存在しているようだ。
「つーか、今日の集まり意味あるん? 前も似たようなこといったかもしんねーけど、テストの答え合わせとか、点数見せ合いとか無意味じゃね?」
「無意味じゃないよ。今までの頑張った成果を見せあうのは励みになるよ」
優等生の見本みたいな言葉を放つ小野口さん。
「頑張った成果って……センセの特訓以外の時間はほとんど雑談だったじゃねーか」
そして正論を放つ青士さんだった。
「すぐに勉強に飽きる青士さんのせいだったでしょ!?」
「ちげーよ。アタシを飽きさせた小野口が悪い」
「絶対私悪くないよね!? 理不尽極まりないよね!?」
「もっと伏線とか欲しかったよな」
「試験勉強になんの伏線が必要なの!?」
あの二人は本当に仲が良いよなぁ。
勉強会を始めたばかりのギスギスした空気がもはや懐かしい。
「痴話喧嘩はそこまでにして、早速本題と行こうではないか。試験結果を見せ合おう」
「「どこが痴話喧嘩だ!」」
池君が仲裁に入ると何故か不思議な理不尽さを感じる。
それにしても息ピッタリだな、青士さんと小野口さん。
「えっと、じゃあまずどの教科から?」
「数学から行きましょうか♪」
うぉう。
月羽さんが早速僕の弱点から攻めていらっしゃる。
「一郎君も最初に一番酷い点数を見せておいた方が気が楽ですよね?」
「う、う~ん……」
月羽なりの気遣いだったみたいだけど、正直微妙だ。
でも彼女の言うことにも一理あった。
「どーせ、最後には全部見せ合うんだから何からいいんじゃね? さっさと行くぞ。スーガクの答案だせ、皆」
抜群なリーダーシップで青士さんが話を進める。
ええい、もう覚悟を決めよう。
「それじゃみんな、心を合わせて一斉に掛け声を出すよ! 掛け声の後に答案を出すんだよ」
「え? あ、わりっ。もう出しちまった」
「ぅおおおい!?」
本当だ。机の上に青士さんの数学の答案がチョコンと提出されている。
「一人、フライングしないの! って、44点!?」
「おう。おかげ様で赤点は逃れたぜ。どうだ」
「なんでこの点数でドヤ顔できるの!?」
なんていうか、いきなり青士さんが絶好調だった。
この人、何気に美味しいポジションに居るよなぁ。
「ほら、おめーらも見せろ。アタシが掛け声掛けてやる。ほい、いっせーの、へい!」
突然青士さんからの合図が出され、つられるように皆一斉に答案を机の上に置く。
各々の試験用紙にそれぞれの点数が並ぶ。
〇数学(平均70点)
高橋一郎 : 60点
星野月羽 : 71点
小野口希 : 100点
青士有希子 : 44点
池=MEN=優琉 : 94点
「な、なんか仰天することが二つあります」
月羽が呆れ顔を浮かべたままため息交じりに言う。
「一郎君が数学で60点も取るなんて……」
「そこ!? まずそこを驚いたの!?」
「ええ。前回より1点も上がっています!」
僕が数学で点数アップしたことがそんなに仰天なのか。
月羽の中で僕の数学音痴はどんなことになっていたのだろう。
「それじゃ、次行くよ~、えと、次の教科はね……」
「「待った待った!」」
さっさと次の答案を見せようとしている小野口さんを遮って、僕と月羽が待ったを掛ける。
「ツッコまずには居られないのは小野口さんの答案の方です!」
「そうだよ! 何100点って!? 何サラッと最高得点叩き出してるの!?」
「いやー、今回は勉強頑張ったからねー。でも100点は数学だけだよ?」
それでも100点を取った理由を『勉強頑張ったからねー』で片づけられる所がさすがだった。
大物だなぁ、小野口さん。
「それじゃ次は世界史! 準備はいい~?」
「ほい、いっせーの、はい!」
「また私の掛け声遮られた!」
いいコンビだなぁ。青士さんと小野口さん。
青士さんの合図と共に、また一同は慌てて世界史の試験用紙を広げた。
〇世界史(平均70点)
高橋一郎 : 92点
星野月羽 : 80点
小野口希 : 99点
青士有希子 : 44点
池=MEN=優琉 : 90点
「をぉ!? 皆、高得点じゃん!」
「だろだろ! アタシが暗記系で赤点じゃなかったのって久しぶりだぜ! これは自画自賛してもいいだろ!」
「貴方以外だよ! 青士さんは赤点じゃなかったら高得点なんかい!」
「ったりめーだろ! 一年後期の時、八教科赤点を余裕で叩きだせたアタシに死角はねーぜ」
「一教科分死角あるでしょうが! しかも駄目な方向に死角が出来てるよ!」
なんかこの二人の漫才を見ているだけでその日一日笑って過ごせるような気がする。
飽きない面白さがこのコンビにはあるなぁ。
「大体おめーこそなんだよ、その点数。99点って! たしかに100点じゃねーけど、アホみてーに超得点出してんじゃねーかよ!」
「いやー、今回は勉強頑張ったからねー」
「さっきも聞いたわ! そのセリフ!」
今度はボケツッコミが逆になっている。
テンポいいな、このコンビの漫才は。もっと見ていたい。
「ここでイケメンインターセプト! 次の教科は家庭科だ! いっせーのー、HEY!」
「「わわわっ……」」」
二人の漫才をボーっと眺めていたら、今度は池君が不意打ちの合図を出してきた。
どうして皆無駄に急ぐのだろうか。ええっと、家庭科家庭科……あった!
〇家庭科(平均72点)
高橋一郎 : 58点
星野月羽 : 58点
小野口希 : 91点
青士有希子 : 75点
池=MEN=優琉 : 96点
「お、家庭科は俺が一位か。さすが家庭的イケメンである俺だな。新時代のイケメンたる者、やはり家庭科くらいはマスターしておかないとな」
池君が急にテンションMAXになった。
しかし、池君の点数も安定して高いな。さすが中間試験学年22位だ。それ以上に安定なのは言うまでもなく小野口さんだが。
このペースなら二人とも10位以内に入れるんじゃないか?
「うーん。おかしいですねぇ。女子力はマスターしたはずなのに、家庭科の点数が上がらなかったです」
「そうだね。僕達の女子力なら80点は堅いと思ったんだけど……」
まさか、僕達が身に着けた女子力がまだ不十分だったなんて……
いや、そんなことあるはずないか。だってあんなにも見事な技だもんなぁ。
「家庭科試験と女子力はほとんど関係ないよ! ていうかキミらのいう女子力ってアレでしょ!? 傘の閉じ開き! それをマスターしても家庭科はできないよ!」
「ふぅん。傘の閉じ開きをマスターしたか。やるじゃん。女子力たけーよおめーら」
「うむ。さすがセカンドイケメンと星野クンだな。その技、ぜひ俺にも伝授頂きたい」
「否定しているの私だけ!?」
池君と青士さんも僕らの女子力を認めてくれた。
いつか小野口さんにも認めてもらいたいものだなぁ、うん。
「それにしてもメンタルイケメンも中々の点数じゃないか」
「そうだよ! やればできるじゃん!」
「いや、よゆーで90点以上叩き出してるお前らに言われてもな……」
だろうね。
捉え方を一歩間違えれば嫌味にしか聞こえないかも。
ひねくれたままの青士さんだったら軽くキレていたかもしれない。
「青士さんは家庭科得意だったのですか?」
「あん? まー、得意っちゃ得意なのかもな。何故か家庭科だけは点数たけーんだ。そんなにベンキョーしてねーのにな」
青士さん自身が不思議そうに語る。
無意識の内に家庭科で高得点をたたき出した青士さん。もしかしたらこの中で一番女子力の資質が高いのは彼女かもしれない。
「よーし、この調子でドンドンいくよー! 次は~……」
この調子で僕らは全ての教科を披露してゆく。
残りの教科はダイジェストで割愛させて頂こう。
〇化学(平均69点)
高橋一郎 : 79点
星野月羽 : 71点
小野口希 : 97点
青士有希子 : 41点
池=MEN=優琉 : 97点
〇英語(平均72点)
高橋一郎 : 72点
星野月羽 : 88点
小野口希 : 98点
青士有希子 :50点
池=MEN=優琉 : 100点
〇保険(平均75点)
高橋一郎 : 77点
星野月羽 : 80点
小野口希 : 95点
青士有希子 : 52点
池=MEN=優琉 :89点
〇美術(平均83点)
高橋一郎 : 82点
星野月羽 : 84点
小野口希 : 96点
青士有希子 : 45点
池=MEN=優琉 : 96点
〇日本史(平均71点)
高橋一郎 : 88点
星野月羽 : 77点
小野口希 : 96点
青士有希子 : 50点
池=MEN=優琉 : 86点
「さて、ラスト一教科となったわけだけど」
今までの試験結果を一見するとやはり小野口さんと池君の点数が突出している。
その下に僕と月羽、ギリギリ赤点回避ラインに青士さんが居ると言った感じだ。
「残す一教科は結構自信あるよ」
「奇遇ですね。私もです」
「あー、アタシも」
「ふっ、俺も当然ながら自信ある」
「――だよね。実は言うとさ。この教科を一斉に見せ合うのが今日の楽しみだったんだ」
皆、一斉に含みのある笑いを浮かべだす。
「ここに先生が居ないのが残念ですね」
残す一教科は現国。
これは全員が自信ありげだった。
「それじゃ、いっくよー! いっせーのー、はい!」
小野口さんの掛け声と共に五人の現国の試験用紙が広げられる。
〇現国(平均77点)
高橋一郎 : 98点
星野月羽 : 98点
小野口希 : 98点
青士有希子 : 72点
池=MEN=優琉 : 95点
思った通り、全員が高得点だった。
当然だろう。
ここに居る五人は他の誰よりも最強の現国教師から授業を受けていたのだから。
「まさかあの面白授業特訓が僕達の成績をここまで伸ばしちゃうとはねぇ」
「俺のアドバイスの眼力モードのおかげで重要ワードは自然と頭に入ったからな」
確かにあのドヤ顔で強調された授業は凄く印象的だったし、頭に残った。
いや、あの授業特訓自体が濃い内容だった故に物凄く記憶に刻まれていたのだ。
そのおかげでテストの解答欄もスラスラ埋められた。
「先生に感謝♪ ですね」
「本当だよ。こんな点数初めて取れたかもしれない」
現国はもともと得意な方だったけど、この期末試験を得て更に得意科目となったかもしれない。
本当に西谷先生が担任で――そして僕らと仲良くしてくれて良かったと思う。
「さて全教科見せ終わったな」
「そだねー。でもさ、せっかく集まったんだからもう少しお話してから帰ろうよ」
「ふっ、賛成だ。俺のイケメン武勇伝を存分に聞かせてやるぞ!」
その後、今日の集会はいつものように雑談メインの内容に移行し、僕らは再び楽しい時間を五人で過ごしたのであった。
ふぅ、楽しかったなぁ。
明日から夏休みだ。
アルバイトは確か明後日だったよな。本当に何をすることになるのやら。
まぁ、バイトはともかく明日は一日フリーの時間があるわけだ。
「バイトの前に……もう一つイベントがあるんだったっけ」
僕はそのイベントに必要な物を準備する為、直帰せずに商店街へ寄っていた。
~♪ ~~♪
おっと、メールだ。
現在、僕のケータイには八件のアドレスが搭載されている。
誰からのメールなのか、それを確認する時が少し楽しみになっていた。
今回は――おっ、月羽か。いつも通りだ。
でも何だかんだいって彼女からのメールが一番うれしかったりするんだけどね。
――――――――――
From 星野月羽
2012/07/24 16:49
Sub おめでとうです そしてありがとうです
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経験値獲得のお知らせです♪
今回、見事40EXPを獲得しましたので
ここに記します。
-----END-----
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さっきの期末試験経験値稼ぎの結果か。
結局平均点の10点以上獲得できたのは現国と世界史だけだった。
ちなみに学年順位も僕が103位、月羽が102位とニアピンだったが、100以内というボーナス経験値枠に入ることはできなかった。
うーん、順位は格段に上がったけれど、経験値獲得数が中間の時と変わらないとなると何だか微妙な感じがするなぁ。
とりあえず僕もメールの返信をしてみる。
ついでだから明日のイベントについて臭わせる内容にしてやれ。
――――――――――
From 高橋一郎
2012/07/24 16:55
Sub ありがとう そしておめでとう
――――――――――
総経験値は440EXP!
500EXPの大台も近いね
それはそうと明日、午後2時頃に
駅前のいつもの場所に集合ね
-----END-----
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この後、すぐに月羽から戸惑いながらもOKのメールが届き、内心ほっと一安心する。
後はこちらで用意するものを商店街で購入すればいいのだけれど……
「さてさて、何を買ったらいいのやら……」
目移りするような良品が並び、どれを買うべきか長考する。
「誕生日プレゼントなんて何を送ったらいいのかわからないや」
明日、7月25日。
夏休み初日。
そして、星野月羽の誕生日でもあった。
見てくれてありがとうございます。
正直学年100位以内とかかなり難しいですよね。
280人中100位以内って秀才レベルじゃないだろうか……
でも今回の高橋君と星野さんは惜しかったということで。
それはそうと今回の期末試験の纏めを簡易表にまとめました。
高橋一郎 :【数学】60点、【世界史】92点、【家庭科】58点。
星野月羽 :【数学】71点、【世界史】80点、【家庭科】58点。
小野口希 :【数学】100 点、【世界史】99点、【家庭科】91点。
青士有希子:【数学】44点、【世界史】44点、【家庭科】75点。
イケメン :【数学】94点、【世界史】90点、【家庭科】96点。
平均点 :【数学】70点、【世界史】70点、【家庭科】72点。
高橋一郎 :【化学】79点、【英語】72点、【保険】77点。
星野月羽 :【化学】71点、【英語】88点、【保険】80点。
小野口希 :【化学】97点、【英語】98点、【保険】95点。
青士有希子:【化学】41点、【英語】50点、【保険】52点。
イケメン :【化学】97点、【英語】100点、【保険】89点。
平均点 :【化学】72点、【英語】72点、【保険】75点。
高橋一郎 :【美術】82点、【日本史】88点、【現国】98点。
星野月羽 :【美術】84点、【日本史】77点、【現国】98点。
小野口希 :【美術】96点、【日本史】96点、【現国】98点。
青士有希子:【美術】45点、【日本史】50点、【現国】72点。
イケメン :【美術】96点、【日本史】86点、【現国】95点。
平均点 :【美術】83点、【日本史】71点、【現国】77点。
見辛い表で申し訳ないです。
特に携帯の方はもっと見づらいと思います。
作成してから気付いたけど、エクセルかなんかで作って画像として貼り付けた方が見易かったなぁって……
獲得経験値:+40EXP
総経験値数:440EXP