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Experience Point  作者: にぃ
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第四十三話 どうして突然授業が始まったんですか

出イケメン

「イケメンとして問おう」


 ……そうか。昨日何か忘れていると思ったら池君の件を放置していたんだった。


「G組に真更光という人は居なかったぞ! どういうことだ!?」


 どういうことだと言われても、架空の人物なのだから居る訳がないのだ。


「そもそも一学年にクラスはA~F組までしかないじゃないか!」


 そこに気付いたか。やっぱりイケメンは違うな。

 ……というよりすぐに気付かれなかったのが奇跡レベルだ。

 さて、どう切り抜けるか。

 正直に月羽のことを紹介する?


 ……うーん。やっぱりなんかやだなぁ。


「池君。僕が言ったのはG(じー)組じゃなくてD(でぃー)組だよ」


「なるほど! イケメンである俺としたことが聞き間違いをしてしまったのか! いやはや、すまない。一時的とはいえキミを責めるようなことを言ってしまった。御詫びに今度、俺のイケメンを分けてあげるよ」


 イケメンって分け与えられるものだったのか。


「そうだ。今度一緒にイケメン組体操でも――」


    ピンポンパンポーン


 池君の言葉を遮るように校内放送が鳴り始める。


『二年A組の高橋一郎くん。二年A組の高橋一郎くん。至急職員室の西谷先生の所までお越しください』


「おや」


 いつかのデジャブのように西谷先生から呼び出しが掛かった。


「おっと。西谷女史がお呼びのようだな。それじゃあ俺は失礼するよ。じゃあなセカンドイケメン」


 そのセカンドイケメンというのは僕の呼称なんだろうか? 正直やめてほしい。

 まぁ、いいや。今日は引き下がってくれたし。

 でも一難去ってまた一難って感じだな。西谷先生の呼び出しか。嫌な予感しかしない。


 そうだ。先生の所に行く前に月羽にメールしておかなきゃ。




  ――――――――――

  From 高橋一郎

   2012/06/30 16:01

  Sub イケメン力+1

  ――――――――――


  西谷先生に呼ばれちゃったから、

  今日は先に帰ってていいよ。

  過去の経験から、あの人に呼び

  出されると長くなるから


  -----END-----


  ―――――――――――




 これで良しっと。



  ~~♪ ~~~♪



 うお。返信はやっ!

 でもなんかメールを開くのが怖い……




  ――――――――――

  From 星野月羽

   2012/06/30 16:01

  Sub またですか

  ――――――――――


  ま た で す か

  

  -----END-----


  ―――――――――――




 単調な文面だが、これ確実に怒っていらっしゃる。まぁ、分かってはいたけどさ。

 一難去って二難ってところか。僕悪くないのになぁ。







「失礼しま――」


「良く来たわね。高橋君! じゃ、早速場所移動しましょう!」


 挨拶すらさせないままに、西谷先生は僕の背中を押して隣の相談室へ移動させられる、

 いきなり捕らわれた!?

 西谷先生の成すがままに、僕は隣の相談室へ運ばれた。

 そして先生は何故かドアに鍵を閉めて、なぜかカーテンも閉じる。

 一瞬で退路を断たれてしまった。

 とりあえずフカフカのソファに腰を下ろす。


「高橋君っ!」


 西谷先生は前のめりになり、机をバンッと叩きながら僕の名を呼ぶ。

 なに? さっきから何なの? もしかして僕怒られるの?

 と、とりあえず謝っておこう。


「す、すみませんでした。中ボスなんて思っていて……さらに最近空気とか思っちゃって……」


「なんの話よ!? そんな風に思われてたの!? 私!」


 うお。更に怒量を上げてしまった。

 駄目だ。相変わらずこの先生は何を考えているかわからない。さすが中ボス。


「そんなことより! 高橋君に聞きたいこととお願いしたいことがあるの!」


「はぁ……」


 もしやまた『イジメられているんじゃないかー』とか『さっさと友達作れー』とか余計なお世話全開なことを言われるのではないかと身構えていたのだが……


「私の授業……どう思う?」


「――はいっ?」


 身構えていた内容とは全く違うことを言いだした西谷先生に思わず間の抜けた声を出してしまう。


「だからー。私の授業ってどう思われているのか……正直に教えてほしいの」


 と、言われても。

 西谷先生の担当科目は現国だ。

 先生の授業風景を頭に浮かべて思い出してみる。


「別に……普通だと思いますけど……」


 そう、普通。

 『普通』としか言いようがなかった。


「やっぱりぃぃ」


 西谷先生はそれを聞いてなぜか露骨に落ち込んでいた。


「授業が普通だと何か問題があるんですか?」


 むしろ授業なんて普通でなんぼだと思うのですが。

 まぁ、授業の合間に行う雑談が面白い先生は『人気』が付いてくるけど、西谷先生の場合は外見や性格が良いからその点は授業で稼ぐ必要ないだろうし……


「みんなそういうのよー。私の授業はつまらないーって」


 年相なく、ふてくされるように唇と尖らせてヘコみ始める西谷先生。

 別に『つまらない』とは言っていない。あくまでも『普通』と言っただけで。

 まぁ、そんなことを今の様子の先生に言っても伝わらないかもしれない。


「でも他の先生の授業だってそう変わりませんよ?」


 むしろ、西谷先生の授業は他先生に比べるとマシな方だ。

 前に出されて問題解けーとか言わないし、要点はしっかりと説明してくれるし、声綺麗だし。


「ぅぅう……生徒に励まされてる私って……」


 駄目だ。口を開くべきじゃなかった。更に落ち込んでしまっている。

 やっぱり先生にとって自分の授業がどう思われているかって重要な所なのかなぁ。

 そんなことを思っていると、西谷先生は再度前のめりになって顔を近づけてきた。


「そこで! 高橋君にお願いがあるの!」


 精神の浮き沈み激しいな。まぁ、突然ラップをやりだす人でもあるからな。油断はできない。


「私にどうすれば面白い授業ができるか教えてほしいの!」


 ……何を言っているのか、3秒くらい理解できなかった。


「あの……それ生徒に聞くことじゃないような気が……」


「だって、他に相談できる人居ないんだもん」


 唇と尖らせて拗ね出す西谷先生。

 この人まさかのぼっちだった!?


「それでも他の先生に相談したらいいじゃないですか。たぶん皆喜んで相談に乗ってくれますよ」


 自覚はないみたいだけど、西谷先生は先生と生徒の両方から人気のある人だ。

 たぶんこの人に話しかけられただけで皆跳ね上がる勢いで喜ぶだろう。

 だけど――


「駄目よ! そんなことしたらまた『新米教師』扱いされるわ」


「実際新米教師じゃないですか」


 この人、たしか今学期に赴任してきたばかりの先生だったはず。学校への在籍歴なら僕の方が上なはずだ。


「とーにーかーく! 他の先生には相談したくないのよ。私にもプライドがあるの!」


 そのプライドを捨てて、以前ラッパーになったのは誰だ。


「それに、まーた田山先生に嫌味言われるのやだし……」


 後半ボソリと呟いた方が何だか本音っぽかった。


「とにかく! お願い! 高橋君! 先生を本物の先生にして!」


「……ですからどうしてそれを『僕』にお願いするんですか。先生に相談できなくても、もっと頼りになる生徒だっているでしょうに……」


「あら。私にとって高橋君以上に信用出来て頼りになる生徒は居ないわよ。星野さんを守った時のように私も守って欲しいなぁ」


 たぶんカンニング疑惑の解明の時を指しているのだと思うけど、それは買いかぶり過ぎだ。

 月羽の存在があったから最後まで頑張れたんだし、小野口さんの協力が無かったらたぶん詰んでた。

 でも周りから見れば僕が『守った』風に見えるのかもしれないな。実際は二人で『乗り切った』というのが正しい見解なのに。

 真実はどうであれ、西谷先生は僕を充てにしているということか。


「えっと、まぁ、相談に乗るくらいならいいんですけど」


「ほんと!?」


 嬉しそうに身を乗り出す先生。


「だけど、僕だけだと忍びないので友軍を呼びたいと思います」







 翌日。



  ――――――――――

  From 高橋一郎

   2012/07/01 12:30

  Sub 友軍召集

  ――――――――――


  放課後 文化塔二階の旧多目的室へ来たり 


  -----END-----


  ―――――――――――



 友軍その1、星野月羽。

 彼女なら有無も言わず、きっと協力してくれるだろう。



  ~~♪ ~~~♪



  ――――――――――

  From 星野月羽

   2012/07/01 12:32

  Sub (´Д`)イイデスケドー

  ――――――――――


  昨日西谷先生と何を話して

  いたのですか?

  

  -----END-----


  ―――――――――――




 あ、あれ?

 なぜか不服そうでいらっしゃる?

 なんかあの子、僕が西谷先生と接触する度に機嫌悪くなるなぁ。

 もしかしたらあの先生のこと、苦手なのかもしれない。


 ま、まぁ、とにかく月羽の招集は済んだとして。

 今回はもう一人、とても強力な友軍に協力を仰ごうとしていた。

 だけどそれには一つ問題がある。


「あの人のメルアドがわからん」


 電話番号は知っているけど、メールアドレスを知らなかった。


「うーん。参ったなぁ」


 基本的に学校内での携帯電話の使用は禁止だ。メールすらもグレーゾーンだ。

 だから電話を掛けるには一度校外に出なければいけないのだけれど、昼休みの外出も基本的に禁止されているのだ。


「呼ばれた気がして来てみました」


「ぅおおおおううう!?」


 不意に背後から女子生徒の声が掛かり、奇声に近い形で驚きを示してしまった。

 振り返ると、そこには友軍その2が手を後ろに回して僕の顔を覗きこむように立っていた。


「お、小野口さん……」


「なんかよう? 高橋君」


 なんかよう? じゃないですよ。どれだけエスパーレベルが高ければ要件を話す前にこの場に来れるんだよ。

 相変わらず人外レベルですごい人だった。


「きょ、今日の放課後……その……旧多目的室に来てほしいんだ」


「ふーん。月ちゃんも来るの?」


「うん」


「じゃあ行く♪」


 今日一番の笑顔がそこには在った。







    ガラガラ……


「失礼しま――」


 月羽がひっそりと多目的室の扉を開ける。


「よく来たね! 月羽! お菓子あるよ!」


「ええ! よく来たわね! 星野さん! お菓子あるわよ!」


「入室早々一郎君と西谷先生が怖いです! あとお菓子頂きます」


 テンション高めな僕と西谷先生につられて、月羽もややテンション高めに持っていくことができた。

 よし、この勢いのまま小野口さんも取り込めば作戦成功だ。


    ガラッ!!


「ひゃっほぉぉぉぉぉぉい! きたよ! 高橋君! 愛してるよ月ちゃん! あとお菓子持ってきた」


 作戦を立てるまでもなく、小野口さんはテンションハイマックスで入室してきた。

 同時に月羽に頬ずりしている。いつもの病気だ。


「じゃあみんな!早速授業始めるわよ!」


 西谷先生が指示棒を片手に教卓に立つ。


「「「はいっ!」」」


 僕、月羽、小野口さんは急いで席についた。

 この時点では一同のテンションはまだ維持されていた。







「以上、本日の授業を終了します」


 西谷先生が教科書をパタンと閉じる。


「「「…………」」」


「なんで三人共無表情なの!?」


「いや……なんていうか……」


「とてもいい授業だったのですが……」


「生徒の活力ゲージを著しくゼロに近づける隠し能力(スキル)がある授業ですね」


 小野口さんの見解が的確過ぎて何も言えない。


「……って、そもそもどうして突然授業が始まったんですか!」


 なぜか僕に対して詰め寄ってくる月羽。

 うーん、テンションで誤魔化してきたけど、やっぱり説明が必要ですよね。めんどいなぁ。


「月ちゃん、私の推測だけど、西谷先生が自分の授業に対して思うところがあったので高橋君に相談した所、先生にアドバイスする為に多目的室で模擬授業を行ったのよ。でも高橋君一人じゃアドバイス役として心許ないから私と月ちゃんがこの場に呼ばれた……って所じゃないかと思うのよ」


 僕が説明する前に小野口さんが全部説明してくれた!?


「なんで私の悩みが小野口さんにバレてるのよ!?」


「状況をまとめてみたら自然とそんな答えが出ました」


 本当に何者なんだよ、この人。最強にも程があるだろう。


「ぅうう……まぁ、いいです。説明の手間も省けたし……それでみんな、私の授業どうすればもっと良くなると思った?」


 半涙目で問いかけてくる西谷先生。

 うーん。先生の授業の改善点ねぇ……


「さっき月羽も言っていましたけど、いい授業でしたよ?」


「はい。新任の先生とは思えないくらい堂々としたいい授業でした♪」


「さりげなく重要な点を復唱してくれたのは好印象でした」


 そう、いい授業なのだ。

 欠点など見当たらないほどに。

 問題点などない。それでも改善しなくてはいけないと思うのはやっぱり先生の自意識過剰なんだと思う。


「褒めてくれた割には皆表情が死んでるんだけど!」


「いや、授業なんて本来つまらないものですから」


「学生の本音をぶっちゃけないで! 高橋君!」


「授業イコールつまらないっていう方程式は決して覆らないのです」


「小野口さんが言うと絶対式に聞こえるからやめて!」


「お菓子美味しいです」


「話題に参加して! 星野さん!」


 このままでは収集が付かなくなって解散になる未来が訪れてしまう。

 僕的には全然それでいいんだろうけど、西谷先生的には良くないだろう。

 先生にはカンニング疑惑の時に田山先生へ抗議してくれた恩があるので出来るだけ力になってあげたい。


「よしっ! じゃあこうしよう!」


「……高橋君が思っていること当ててあげよっかー?」


「……私も一郎君が考えていること、わかっちゃいました」


 小野口さんと月羽がニヤけ顔でこちらを見つめてくる。

 どうやらこの二人には僕の心の内がバレていたようだ。


「――ずばり! 西谷先生の授業を面白く改善させる特訓をしよう!」


「――ずばり! クッキーたべたい――に、西谷先生の授業を(ごにょごにょ)」


 さすが僕の友人達だ、これが以心伝心というものか。一部――特に親友の方がちょっとばかし怪しかったけど。


「と、特訓?」


 一方、ぽかんと目を見開いているのが当事者である西谷先生。


「とりあえず、明日からこのメンバーはここに集合ってことで」


「ねね、期末テストも近いしさ。西谷先生の特訓が終わったらみんなここでテスト勉強しない?」


「わぁ。いいですね。それすっごくいい考えですね」


 月羽が珍しく小野口さんの意見に同意する。

 そういう僕もその意見には大賛成だった。

 小野口さんが居れば試験のコツとか教えてもらえそうだし、西谷先生から補習という形で特訓してもらえば一石二鳥である。


 しかし――


「……やっぱり私の授業つまらなかったんだ……特訓が必要なくらいつまらなかったんだ……」


「テスト勉強なんて何年ぶりかなぁ~。いつも授業内容フル暗記だけでテストに臨んでいたしなぁ」


「やっぱりタケノコよりもキノコが美味しいです。もぐもぐ……」


 このキャラが濃い集団が期末試験まで毎日集まるのか。

 拭いきれない不安感が心の中に渦巻いていた。


見てくれてありがとうございます。

今回から『期末テスト編』です。長くなるか、短くなるかは僕の気分次第w

今までは二人きりの戦いが多かったですが、今回は集団戦です。

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