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Experience Point  作者: にぃ


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33/134

第三十一話 これで、良かったんですか?

余裕の9500文字オーバーw

10000文字オーバーの日も近い気がします

 準備は整っている。

 後はこの先に乗り込んで田山先生を説得させるのみだ。


「いよいよだね」


「うん」


「全力を出し切るぞ。おー!」


「…………」


「なんで『おー』って返してくれないの?」


「……なんでいるの? 小野口さん」


 6月5日、火曜日、放課後。

 僕は一人でこの場にやってきたはずなのに、気が付いたらB組の秀才、小野口さんが隣にいた。

 本当に気が付いたら居た。

 気配すらなかった。

 どうやら小野口さんほどの秀才ともなると『気配を消すオーラ』なんて息を吸う感覚で出来てしまうのだろう。


「私だって星野さんを助けたいって言ったでしょ。だったら高橋君の手伝いをするためにここにいるのは当然だよね」


 話が飛躍している気がするが、とにかく小野口さんは僕に助力してくれる気らしい。

 本当にいい人だな。それに心強い。


「それにさっきまでここで立ち往生してたよね? それって私を待っていてくれたんでしょ?」


「いや、違うけど」


「照れなくてもいいのに」


 照れる意味がわからないが、これは僕の言い分の方が真実だ。

 別に立ち往生していたわけではなく、先生と話し合うに至って準部が必要だったのだ。それを済ましていたに過ぎなかった。


「失礼します。田山先生居ますかー?」


「いつの間にか先に入ってるし!」


 さっきから小野口さんの行動力が半端ない。

 頼もしすぎるのも考えすぎだった。


「小野口……と、昨日の男子生徒か」


 男子生徒A扱い……って、そういえば名乗ってなかったな。


「A組の高橋です。昨日と同じ件でまた伺いました」


「……またか」


 うわ。すごく嫌そうな顔している。

 そんなに生徒と話するのが嫌なのか? この人昨日から僕を遠ざけようと一生懸命な気がしてならない。

 でも先生側の事情なんて関係ない。そっちが嫌でも僕は無理矢理話を聞かせる。


「先生、昨日言いましたよね? 月――星野さんと小野口さん、両方の答案を持っていなければ話にならないって。僕もそう思ったので用意してきました。両方を」


「ちっ」


 なんでこの先生露骨に舌打ちしたんだろう。そんなに月羽を停学にさせたいのか?


「見てください。これが証拠です」


 言いながら僕はカバンの中から月羽の答案5枚と小野口さんの答案5枚を取り出した。

 計10枚の用紙が田山先生の前に並べられる。

 分かりやすいように教科ごとに重ねて並べて見せる。


「私と、星野さんの答案。誰が見ても食い違っていますよね? カンニングした答案としては不自然すぎると思いません?」


 僕の代わりに小野口さんが言いたいことを代弁してくれた。

 やっぱりこの人は頼もしい。この強気な姿勢はぜひとも僕も見習いたいものだ。


「なぜ小野口の答案を高橋が持っていた? そのせいでお前がどちらかの答案を書き換えた可能性が出てきた」


「……は?」


 その発想はまるでなかった。


「その理由付けはあまりにも強引だと思いませんか? 少なくとも私の答案は確実に私が書いたものです。本人が言うのですから間違いありません」


「そうかな? お前も星野への温情を乞いて高橋と口裏を合わせている可能性がある」


「「なっ――!」」


 僕と小野口さんの絶句が重なった。

 この人は月羽のみならず小野口さんまで悪者の共犯扱いし始めやがった!


「大体どうやって星野の答案を手に入れた? お前が二人分の答案を持っているということは星野が直接渡したということになるだろうが……その際にでも星野に頼まれたのだろう? 『小細工して自分の罪の軽減をしてくれ』とな」


 この人は――


 こいつは――


 それでも――


「それでも貴方は教師ですか!!」


「「「……!?」」」


 そう叫んだのは、僕でも小野口さんでもなかった。

 誰も予想もしない人物が教務室の真ん中で声を張り上げてくれた。


「西谷……先生……?」


「さっきから聞いていれば……どうして田山先生は二人の言葉をキチンと聞こうとしないのですか! それに星野さんの件も、明らかな証拠が一つもないのにどうして彼女を悪者扱いしようとするのですか!」


 やはり教師側もこのカンニング疑惑が色々と不自然なことに気付いているようだ。

 すると、月羽を責めているのは田山先生だけということか。

 しかし、西谷先生居たのか。田山先生にばかり目が言っていて全く気が付かなかった。


「新任は口を出さないでもらえますか。話がややこしくなる」


「話をややこしくしているのは先生じゃないですか! せめてこの子達の話を聞いてあげてください!」


「……ちっ」


 すごい。

 暴走癖がある先生とばかり思っていたが、こんな熱い一面も持っていたなんて。

 頼もしい。

 かつての敵が仲間になった時の主人公の気持ちが少しわかった気がする。

 それに西谷先生のみならず、こっちには人外レベルの秀才小野口さんも居るんだ。負ける気がしない。


「いいだろう。話を聞くくらいはかまわん。話せ」


 上から目線だなぁ。まぁ、実際目上だけど。

 よし、僕らのターンだ。思う存分語るぞ――


「では確信から話しますが、まず星野さんが私の答案を覗き見るなんて行為、出来る訳ないのです」


 ――小野口さんが語るぞ!

 僕の代わりに小野口さんが語ってくれるんだぞー!


「どういうことなの?」


 田山先生ではなく、西谷先生が聞き返してきた。

 これは昨日の放課後話してくれた切り札だな。いきなりこの話を持ってくるか。

 ていうか小野口さん自身がそれを語ってくれるんだ。なんか僕いらなくね? 今この中で一番居なくていいの僕じゃね?

 まぁ、でもこの件は小野口さんが語ってくれた方が説得力あるし、ここは任せよう。


「席順ですよ」


「席順?」


 西谷先生が首を傾げる。

 しかし肝心の田山先生は無表情を貫いていた。


「西谷先生はB組の受け持ちではないので分からなくても仕方ないですが……田山先生。先生は知らないわけないですよね?」


「……ふん」


「え? え?」


 西谷先生が一人で困惑している。

 確かにこれはB組の生徒しか知りえない事実。

 故にB組の生徒はたぶん全員月羽が無実であることを知っている。

 知っているのに皆青士さんが怖くて動けないのだ。

 でも小野口さんだけは月羽に味方してくれている。本当に良いクラスメートさんだ。月羽が少し羨ましい。


「私の席は星野さんの隣です――普段は……ですけど」


 そう、隣の席。

 青士さんは小野口さんが月羽の隣の席だったこそカンニングの矛先を彼女に向けたんだろうけど……

 それこそが青士さんの最大のミスだった。


「でも試験時は席変えますよね」


「……あっ!」


 そう、試験時は簡易的な席替えがある。

 名簿順に席を移動し、試験を受けるのだ。

 理由はよくわからないけど。採点時の関係なのかな?


「試験時、私は廊下側の一番後ろの席でした。そして星野さんは――」


「ちっ……」


 田山先生が小さく舌打ちを鳴らしたのを僕は見逃さなかった。

 やっぱりこの人、知ってて黙ってやがったな。


「星野さんは、窓側の一番前の席でした」


 そう、月羽は試験時、最もカンニングなんてやりづらい席に居たはずなのだ。


「どうやれば窓側の一番前の席に居た星野さんが廊下側後ろ席の私の答案を見ることができるんですか?」


 小野口さんが確信を突き付けた。

 どこぞの名探偵のごとく、ビシィっと言葉の矢を射る。


「しかし、星野自身は何も意義を申し立てなかったのだろう?」


「話をすり替えようとしないでください。今はカンニング疑惑の真相解明が先です」


 小野口さんが頼もしすぎてツライ。

 先生相手にまるで怯んでいない。昨日の僕とは大違いだ。


「仮にカンニングが誰かに仕組まれたものだとしても……だ。本人からの異議申し立てが無ければ、それは自身がカンニングを認めたということに直結する。故にこの話し合い自体が無意味だ」


「…………」


 ちょっと何を言っているのか分からなかった。

 それは小野口さんも西谷先生も同じなのか、口を半開きにしながら目を見開いて驚いていた。

 一番に我に返ったのは西谷先生だった。


「先生! 貴方、自分が何を言っているのか分かっているんですか!」


「分かっている。そして私の言っていることが正論であることもな」


「どこが正論ですか! 先生の言っていることはただの屁理屈です!」


「なんとでも言いたまえ。新任教師やクラスメートがどんなに吠えた所でその前提は覆らん」


 この人は最悪なタイプだ。

 最悪な権力者だ。

 誰だ? この人を学年主任にした愚か者は


「つまり、月――星野さんが『自分はカンニングなんてしていない! 陰謀だ!』って言えば、ちゃんとこの件に向き合ってくれるんですね?」


 今まで一番空気だった僕がここで発言する。

 実は言うと田山先生がこんな屁理屈を捏ねるのではないかと懸念はしていた。ここまで露骨に屁理屈捏ねるとは思わなかったけど。

 でも懸念していたからこそ対策はバッチリなのだ。


    ガラガラッ


 突然勢い良く教務室の扉が開き、中に居た職員一同がそちらに視線を移す。

 その訪問者は開口一番、こう言ってきた。


「私はカンニングなんてしていません! 陰謀です!」


 その者はすごく元気よく声を張り上げていた。

 その後すぐに顔を真っ赤にしていたが。

 とにかく彼女は精一杯頑張っていた。

 その人物はこちらに近寄りながら、僕の顔を見つめながらこう言ってきた。


「これで、良かったんですか? 一郎君」


「バッチリだよ。月羽」


 星野月羽。

 一週間ぶりの登校だった。







「ほ、星野……?」


「「星野さん!」」


 田山先生は戸惑った表情で、小野口さんと西谷先生は嬉しそうな表情で月羽を出迎えた。


「随分タイミングの良い登場だったね」


「えへへ。実は廊下で会話を聞いていて登場タイミングを見計らっていました」


 僕は月羽が今日の放課後に学校へ登校することを知っていた。

 それは昨日の経験値稼ぎの時――


『明日は……私も一緒に頑張ろうと思います』


 彼女は確かにそう言った。

 それは彼女も一緒にカンニング疑惑解明の為に戦うという意志の言葉だった。

 実は教務室の前で立ち往生していたのは彼女にメールを送っていたことが原因だった。


『今から教務室に突入する。一緒に頑張ろう』


 そんな感じのメールを送った。

 まぁ、教務室前で立ち往生していたのはそれだけが原因じゃないんだけどね。


「とにかく、これで先生のいう『前提』はクリアですよね」


「……ふんっ」


 うわぁ。すごく不満そう。

 どうしてこの人はそんなにも月羽を悪人にしたがっているのだろう?

 そんな疑問を頭に浮かべた直後、西谷先生がその疑問に対する推測を言葉で述べた。


「先生、もしかして自分の立場の維持するために星野さんを犯人で居てもらいたかっただけなのではないですか?」


「……!」


 えっ?

 今度は西谷先生が言っていることの意味が分からなかった。

 月羽も僕と同じように首を横に傾げている。


「――なるほど。ただのカンニングだったらその生徒を罰するだけでいいですけれど、それが冤罪となれば教師側に責任が付いてくる。それも学年主任ともなればその責任の追及は計り知れない……というわけですね?」


 小野口さんの補足で少し理解できた気がする。

 つまり冤罪を一発で見抜けなかった落ち度が『責任』という形で自分に降りかかってくる。

 まぁ、カンニング事件が起こった時点である程度教師側にも責任はあるだろうけど、冤罪と比べると全然軽いほうだ。

 ようするに田山先生はその『責任』とやらを受けたくないが故に月羽が犯人のままでいて欲しかったんだ!

 どこまでも性根の腐った学年主任である。


「そんなもの貴様らの推測にすぎない。憶測で真実を捏造するな!」


「その言葉、そっくりそのまま先生にお返しします」


 全く持ってその通りだ。

 穴だらけのカンニング疑惑を勝手に『真実』として捏造しているのは先生の方だ。

 だけど今重要なのはそこじゃない。


「その話は一旦置いておきましょう」


「高橋君っ! でもっ」


「そうよ高橋君っ、田山先生のやっている責任逃れを見逃すというの?」


 小野口さんと西谷先生が不満そうに僕へ言葉をぶつける。

 だけど月羽だけは薄ら微笑みながらこちらを見つめていた。

 『全部任せます』と目で言っている気がした。


「はっきり言ってそんなことはどうでもいいんです。僕達にとって重要なのは月羽の無実証明のみだ」


「「高橋君……」」


 まだ少し不満そうな顔をしているが、僕の言葉に一応は納得してくれた様子の二人。

 そう、今重要なのは田山先生のことじゃない、月羽のことだ。

 まず一時も早く月羽の無実を証明しなければいけないのだ。


「田山先生。単刀直入にお願いします。『星野月羽は無実だ』と職員会議で発言してください」


「……いや、まだ足りない」


「は?」


 今後に及んでこの人はまだこんなことを――っ!


「私が昨日言ったことを憶えているか?」


 え?

 昨日?

 僕が……田山先生に言われたこと……?


  ――『当たり前だろう。突然『星野は無実だ』なんて言われて誰が信じるか。彼女の友達が温情処分を請いに来ているだけにしか見えん』


 ちがう。これじゃない。


  ――『その二つの答案をお前は今持っているのか?』


 これでもない。この条件はクリアしている。

 ならば……


  ――『では話にならんと思わんか? 星野が小野口の答案を覗き見ていないという物的証拠すらないと来たもんだ』


 ……!

 これか!


「そうだ。『星野が小野口の答案を見た』という証言のみが間違っている可能性がある」


 なるほど。

 つまり先生は『星野月羽は小野口さん以外の誰かの答案を覗き見、カンニングをした』と言いたいのだろう。


 その証言は青士さんが言ったものだ。

 だけどその事実証拠は……


「私、聞きました! 目撃者である青士さんが『星野さんは私――小野口の答案を覗き見た』って! 確かに!」


「お前の証言など今更信用できるか。星野の為に嘘をついている可能性がある」


「そんなっ!」


 聞く耳もたずって感じだ。

 そんなに責任逃れが大事なのか。

 もはや問答無用だな。


「な、なら他のB組の生徒に証言の目撃者――あっ!」


 言いかけて小野口さんは気付いたのだろう。

 B組の他の生徒。

 小野口さん以外のB組の生徒が青士さんに不利になるような証言をするだろうか?

 いや、それ以前にB組の生徒はこの件には全力で関わろうとしないだろう。


「茶番もここまでだ。今日はもう帰りなさい」


「先生っ!」


「田山先生! それはないでしょう!」


 小野口さんと西谷先生が必死で縋りつこうとしている。

 本当に良い人達だ。


 二人が田山先生を食い止めている間に情報をまとめてみよう。

 まず一つ、田山先生は責任逃れをするために月羽に犯人で居て貰いたがっている。

 二つ、青士さんの証言を元に僕は月羽と小野口さんの二人分の答案を持っている。

 三つ、しかし青士さんの証言を目撃した者は居ない。


 ――四つ、つまり青士さんの証言を証明できれば僕達の勝ち確定ってことか。


 ならば抗える。

 教務室に入る前に行っていた準備がここで役に立った。


    バラバラッ


「「「「えっ?」」」」


 僕以外の全員が素っ頓狂な声を出した。

 僕の上着の内側からあるモノがボロボロと零れ落ちた。

 まず最初にソレの正体に気付いたのは小野口さんだった。


「そ、それ! この間、青士さんに壊されていた録音機! でもなんで!?」


 そう――僕の制服の上着から零れ落ちたのは、ボイスレコーダー『じゃがいもスターの盗聴』110円(税込)だった。

 それも――計18個ある。


「録音機……だと!?」


 田山先生が驚愕な表情でじゃがいもスターの録音機を見つめている。

 冷や汗が頬を伝っているのが肉眼でも見える。


「衣替え時期なのに僕だけが長袖で居ることに何の疑問も思わなかったんですか?」


「た、高橋っ! お前っ!!」


「あっ、ちょっと待ってくださいね。今再生します」


 言いながら僕はじゃがいもスター2号の再生ボタンを押す。




『高橋も何探偵気取りになってんの? 現実と漫画の区別がつかなくなっちゃった系? マジウケんだけど』


『まぁいいや。話は戻すけど、星野さんはどんな風にカンニングしたか教えてくれる? 時間たっぷりあげたんだし、そろそろ思いついたでしょ?』


『思いついたって何だよ! ……いいさ。教えてやる! ……見たんだよ、星野が他の奴の答案を覗き見ていたところをな!』


『ふーん。誰が目撃したの?』


『あたしさ! あたしがその犯行現場を現行犯で目撃していたんさ。巧妙に覗き見ていたつもりだっただろうけど、正義感溢れるあたしの目は誤魔化せなかったってことさ』


『星野さんは誰の答案を覗き見ていたの?』


『なんでんなことまで言わねーとならねえんだよ!?』


『……あー。また考えてなかったんだね。青士さん。犯行にまるで計画性ないね。また時間あげよっか? 設定考える時間』


『てっめ……っ! ……っち! 小野口だよ! クラス一の天才ちゃん小野口の答案を覗き見てやがったんだ!』


『ほんっとうに小野道さんの答案を覗き見てたの?』


『誰だよ小野道って! お・の・ぐ・ち! あそこに居るさえねー眼鏡女の答案を覗き見てたんだよ!』



    ピッ



「まぁ、ここまでで良いですよね」


 というわけでじゃがいもスター2号は死亡っと。

 この録音機には決定的な欠点がある。

 それは録音・再生が一回ずつしかできない消耗品という点だ。

 この使いづらさならば一個110円という値段も頷ける。

 故に20個も大人買いして正解だったなぁ。

 ちなみに青士さんに壊されたのはじゃがいもスター1号。

 試験用で録音したじゃがいもスター0号を覗いても僕の手元には後18個のじゃがいもスター達がいた。


「職員会議で月羽の無実を証言してくれますよね?」


「「「「…………」」」」


 あれ? なんで全員唖然としているの?

 田山先生、西谷先生、小野口さん、それに月羽まで口を半開きにしながらこっちを見つめていた。


「一郎君の本気……半端ないですね」


 あれ? あれ? どうして呆れ顔なの? 月羽。


「星野さんを助ける為にここまで用意するなんて。そこまで星野さんのことを想っていたんだね」


 って、どうして目を輝かせて見てるの? 小野口さん。


「勝手に会話を録音するなんて教師としては見逃せないけれど……でもよくやりました! 高橋君っ!」


 おもちゃなんで録音の件は許してください。西谷先生。


「な……ななな……あ……そ……そん……」


 日本語でおけ。田山先生。


「こっちも聞きますか? 田山先生」



    ピッ



『先生、もしかして自分の立場の維持するために星野さんを犯人で居てもらいたかっただけなのではないですか?』


『なっ――』


『――なるほど。ただのカンニングだったらその生徒を罰するだけでいいですけれど、それが冤罪となれば教師側に責任が付いてくる。それも学年主任ともなればその責任の追及は計り知れない……というわけですね?』


『そんなもの貴様らの推測にすぎない。憶測で真実を捏造するな!』


『その言葉、そっくりそのまま先生にお返しします』


『その話は一旦置いておきましょう』


『高橋君っ! でもっ』


『そうよ高橋君っ、田山先生のやっている責任逃れを見逃すというの?』


『はっきり言ってそんなことはどうでもいいんです。僕達にとって重要なのはカンニング疑惑の件のみだ』


『『高橋君……』』


『田山先生。単刀直入にお願いします。『星野月羽は無実だ』と職員会議で発言してください』


『……いや、まだ足りない』


『は?』


『私が昨日言ったことを憶えているか?』


『その二つの答案をお前は今持っているのか?』


『そうだ。『星野が小野口の答案を見た』という事実のみが間違っている可能性がある』


『私、聞きました! 目撃者である青士さんが『星野さんは私の答案を覗き見た』って! 確かに!』


『お前の証言など今更信用できるか。星野の為に嘘をついている可能性がある』


『そんなっ!』


『な、なら他のB組の生徒に証言の目撃者――あっ!』


『茶番もここまでだ。今日はもう帰りなさい』



    ピッ



 ありがとうじゃがいもスター五号。

 ちなみのこの会話の録音を遇えて聞かせたのは田山先生に対する脅しだ。

 この会話が他人に――田山先生よりも上の立場の人間に聞かれれば、彼は今の地位を完全に崩すことになる。

 つまり、だ。この会話を大多数の人に聞かれたくなければ、どうすればいいのか分かるよね? ということを間接的に伝えているのだ。

 昨日の昼休みの会話と今の会話を録音した二人のじゃがいもスターが居れば、月羽の無実照明はもう確実と思っていいだろう。


「もう一度お頼みします。月羽の無実を職員会議で証言してくれますね?」


「…………」


 もはや田山先生に反論の余地は無かった。


「一郎君っ!」


 ぅおう!

 不意に月羽後ろから抱き着いてきた。

 僕らの勝利に安堵したのか、その瞳には小さな涙の滴が浮かんでいた。

 やっぱり今まで不安でたまらなかったんだろうな。

 不安で不安で仕方なかっただろうに。

 それなのに彼女は今日頑張って僕と一緒に戦ってくれた。

 僕はそんな彼女に微笑みかけながら労いの言葉を掛けてあげた。


「言ったでしょ。月羽」


 彼女の頭にポンッと手を乗せながら言う。


「じゃがいもスターが、月羽を助けてくれるって」


見てくれてありがとうございます。


VS田山先生編決着。

だけどこのカンニング疑惑編はもうちょっとだけ続くのじゃ。



(9/7 追記)

ソタ。さんよりイラスト頂きました。

EXP31話

挿絵(By みてみん)

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