Last Point(前編) うん……会いたいんだ……私
お待たせしました。
EXPもついに大詰め。エピローグへと差し掛かりました。
エピローグは全三話。全部繋げてもそんなに長くありませんが、切り所を考慮して三話に分けました。
特に今回の話は短いです。過去最短かも。
エピローグはありがちな『あれから〇年後』展開です。
蛇足中の蛇足だけど書いたことに後悔はしていません。
ふと考えることがある。
最近は本当によく考える。
――自分は幸せなのか、と。
自分が幸せを感じる時はいつなのか?
それを考えるとやっぱり最初に『経験値稼ぎ』が浮かんでくる。
経験値稼ぎをしている時、私は幸せを感じていた。
この幸福が一生続くのだと思っていた。
だけど、もし私の生活の中から経験値稼ぎを失われたら?
それを考えるのが恐ろしかった。
ありえない。
私もあの人も経験値稼ぎが大好きだし、どちらかから経験値稼ぎを辞めようだなんて言うことはありえなかった。
ならばなぜそんな恐ろしいことを考えてしまうのか?
――その恐れていたことが起きてしまったからだ。
私達はもう経験値稼ぎをしていない。
私と経験値稼ぎを切り離されてもう一年経とうとしている。
経験値稼ぎをしなくなってから私は悲しみに明け暮れていた。
何もする気が起きず――いえ、文字通り何もしていなかった。
その状態が一年続いている。
放心状態。抜け殻のような状態だ。
経験値稼ぎから切り離さた日、私はポロポロと涙を溢して泣いた。
でもそれはその日だけ。
次の日からは涙も溢さなかった。
その代わり、私の活力は失われ、抜け殻状態が始まってしまった。
もともと身体が強いわけでもない上、この精神的ショックがいけなかったのか、私は日に日に体調を悪くしていった。
安静中のベッドの中で考えることと言えば、やっぱりあの人との経験値稼ぎに明け暮れた日々。
ただ楽しかった日々を思いだし、ふと我に返って絶望と友に放心する。
そんな日々を一年間も過ごしていた。
やっぱり私は経験値稼ぎ抜きでは生きていけないのだ。
それを痛感した一年間だった。
「(経験値稼ぎ……したいなぁ……)」
そんなことを毎日思う。
それだけじゃない。
私はもう一度あの人に会いたくて仕方なかった。
でも今や会うことなど出来ない。絶対に。
それでも会いたいと願ってしまうのだ。
「(うん……会いたいんだ……私)」
そう――私は経験値稼ぎをしたいんじゃない。
経験値稼ぎを辞めてもいいから……私はあの人にもう一度会いたかった。
あの人とお話をしたい。触れたい。甘えたい。そして……やっぱり経験値稼ぎもやりたい。
初めて会った時のように、互いに緊張しながら初々しく触れ合いたかった。
告白した時のようにトキメキ一杯の気持ちに浸りたかった。
恋人に成りたての頃みたいに気恥ずかしい暖かさを感じたかった。
大学の時のように余り溢れた時間をひたすら経験値稼ぎで埋め尽くしたかった。
初めて同居した時みたいに顔を合わせるのも照れ臭い気持ちで毎日を過ごしたかった。
社会人に成りたての時みたいに忙しながらも空いた時間に行った小さな経験値稼ぎもしたかった。
仕事で嫌なことがあった時みたいに互いに励まし合いながら支え合う信頼感を貰いたかった。
突然プロポーズしてもらった時みたいに私を驚きと感動で号泣させてもらいたかった。。
初めて娘が出来たときみたいに、二人で万歳しながら喜び合いたかった。
娘に経験値稼ぎのことを武勇伝のように語った時みたいに、人生の楽しさを二人で誰かに伝えたかった。
互いに仕事を辞め、二人で小さな学習塾を始めた時みたいに先の不安やワクワクを感じたかった。
定年退職した時みたいに若い頃を思い出しながらまた経験値稼ぎを始め、お庭のマイベンチで微笑み合いたかった。
――でもそれは私の我儘。もう絶対に叶いっこない空想。
どうして……
「どうして……先に逝っちゃったのですか……」
私の愛した人――高橋一郎はもう居ない。
一年前に私よりも先にとても遠い所へ行ってしまったから。
だから私はこうして思い出に浸る。
あの人を経験値稼ぎに誘った日から現在までに得られた幸せを――『70年分の思い出』に浸るのが今の私の日常となっていた。
見てくれてありがとうございます。
あれから〇年後展開のエピローグ前編は如何だったでしょうか。1年後、2年後なんて緩い時の流れではつまらないので、思い切って70年後の世界感を描いてみました。
まぁ、70年後の割に近未来感は皆無ですけどね。むしろ昭和っぽい気すらしますw でもそこは気にしないで頂けると嬉しいです。
エピローグ中編は一週間以内に更新できると思います。
それまでに今回の話の感想等頂けると光栄です。