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Experience Point  作者: にぃ
127/134

Hyper Bonus Point +3 あくまでも話をしてくるだけ

スピンオフ及び番外編最終章3/4です。

本当は昨日更新する予定でしたがメンテナンスが入ったみたいですね

     【main view 西谷沙織】



    プルルル……プルルル……ピッ



「もしもし、お久しぶりです。西谷ですが……」


『センセ! 久しぶり――じゃないっすよ。センセが居なくなってからまだ数日も経ってねーじゃないっすか』


 西高校へ帰った後、高橋君達と話を交わし、家に戻ってから私は早速ある生徒へ電話を掛けた。

 南高校3-D組。出席番号18番、坂田花子さん。

 またの名も『闇の親衛隊』。

 ――『元』が付くけどね。

 ……もう悪いことやってないわよね? 花子さん。


「闇の親衛隊について聞きたいの」


『おっ? おお? センセ、なかなか鬼畜っすね。私の黒歴史を掘り起こしてどうさせるつもりっすか?』


「ごめんね。嫌なことを思い出させて。でも教えて欲しいの。闇の親衛隊って『深井さんより目立っている人に制裁を』をスローガンに花子さんが作ったのよね?」


『そうっすよ。心配しなくてもちゃーんと私は闇の親衛隊の活動を永久停止しているっすよ』


「そこは心配してないわ。信じているもの。それよりも聞きたいことというのは闇の親衛隊の勢力のことなの。もしかしてもしかすると、闇の親衛隊の勢力って他校にまで伸びていたりする?」


『はっ? どういうことっすか?』


「実は今、こっちの学校でも闇の親衛隊の犯行に似た事件が起きているの。ていうか手口が一緒なのよ闇の親衛隊と。消しゴムのカスを飛ばしたり、床にワックスを塗ったりとか」


『んー……ぶっちゃけいうとそれは闇の親衛隊じゃねーっすね。どうして『他校の生徒』が玲於奈より目立っている『他校の人』に制裁するんすか。意味ワカンネーっすよ』


「……まー、そうよね」


『あー、もしかしてその犯人って『光の親衛隊』って名乗っていなかったっすか?』


「……!? どうしてわかるの!?」


『それなら納得できるっすよ。もともと『闇の親衛隊』はそちらの学校に存在していた『光の親衛隊』のパク――オマージュっすから』


「そうだったの!?」


 まさか光の親衛隊の方が先に出来ていただなんて。


『光の親衛隊――すなわち佐藤光の自演親衛隊ってことも知ってるっす。まー、私はその名前だけを借りたんすけどね。悪戯の内容まで似ているのは私も知らねっすよ。闇の親衛隊のやり方をパクったんじゃねっすか? 姑息なやつっすね』


 名前を盗んだ貴方が言うな。


「とにかくありがとう花子さん。貴重な情報頂けたわ」


『力になれてよかったっすよ。ていうか普通に通話してくれたのが嬉しかったっすよ』


「今度は普通に世間話しましょう。それじゃあね。お休みなさい」


 花子さんとの通話はこれで終わる。

 やっぱりあの子は綺麗な声だわ。電話越しでも十分伝わる声の美しさだった。


「って、美声の余韻に浸っている場合じゃなかったわね」


 花子さんがくれた情報のお陰で私も高橋君達の力に慣れそうだ。

 ていうか、こっちへ帰ってきて早々またも親衛隊絡みの事件にかかわるとは思わなかったなぁ。

 光とか闇とか。親衛隊が流行っているのかしら。次は炎の親衛隊とか出てきたりしないわよね。


「はぁ……今日は疲れたわ」


 光の親衛隊を名乗る悪戯犯も気になるけど、まずは明日の授業について計画を立てておかないといけない。

 田山先生から授業の引き継ぎをもしないといけないし、皆にこのことを伝えるのは昼休みになりそうね。

 そういえば……


「高橋君達と一緒に居た眼鏡の男子と小さい女子は誰だったのかしら?」


 相変わらず自分の担当以外のクラスの生徒は覚えられないのが新任の甘さなのかしらね。

 まだまだ精進しないと。







    【main view 池=MEN=優琉】



「シュガー=ライト」


「うっ……また何か用なのか? 池よ」


 始業前の空き時間。

 いつもより早く登校し、ファンの目を掻い潜ってきた俺は教室に着くと真っ先に佐藤光の席へと歩み寄った。

 俺から声を掛けると彼は露骨に嫌そうな表情を浮かべていた。


「昨日は光の親衛隊のことについてアレコレ聞いて悪かったな」


「そう思うなら二度とその名前を口にしないで欲しいのだが」


「おっとすまん。今日は別件で話があるのだ」


「なんだ? 手短にな」


 嫌々ながらも俺の話に付き合ってくれる佐藤光。

 悪い奴では……ない……と思うのだが。


「シュガー。キミは『闇の親衛隊』という言葉に心当たりはないか?」


「そんな痛い名の親衛隊知らん!」


 光は良くて闇は駄目なのか。

 トップレベル秀才の感性は今の俺には理解に及ばないみたいだな。


「俺の親友が『光の親衛隊』と名乗る者に嫌がらせを受けているのだが」


「昨日聞いた。そしてそれは俺の仕業ではないと昨日言ったはずだ」


「別にそこを疑っているわけではない。実はとある筋の情報によると、嫌がらせのやり方が他校に存在する『闇の親衛隊』と酷似しているらしいのだ」


「他校のことなど知らん。今の俺は受験勉強のみが生きがいだ。俺を変なことに巻き込むな」


「例の勝負に負けてから小野口クンと喋れなくなってしまったからな。生きがいを勉強に移すしかなくなったか」


「う、うるさい! 俺は在学中に一回は長谷川佐助に勝ってみせる! 光の親衛隊だか闇の親衛隊だか胡散臭い者共など知ったことか。お前もつまらん騒動に首を突っ込んでないで勉強しろ。ランキングギリギリ男が」


 この様子を見ると佐藤光は本当に今回の事件とは無関係のようだな。

 それに闇の親衛隊のことについても何も知らなそうだ。

 だが念のため、もう一度聞いてみる。


「本当に闇の親衛隊について知っていることはないか?」


「くどい! そんな親衛隊の名など初めてきいた」


「南高校に広まっている親衛隊らしいが」


「南高校など知ら――いや、そういえば……」


「何か心辺りが?」


「いや、関係ないかもしれぬが、一年の時に転校していったアイツが確か南高校在学中ではなかったか?」


「アイツ……?」


 一年の頃か。

 そういえば一人、突然転校していった男が居た。

 確か名前は――


「黒田幕次郎……か」


 確かに彼なら光とか闇とか好きそうだ。

 親衛隊の事も詳しそうでもあるしな。

 しかし、転校していった人間が今更関与している可能性なんて……


「アイツ、結局友人も出来ず転校していったな」


 ……キミがいうか。孤高のシュガー=ライト。


「でも、確かA組に仲の良い奴が居たはずだ」


「なんだと!?」


「一年の頃、昼休みになるとたまにA組の奴がE組へ遊びに来ていただろう」


「そうだったな」


 彼はA組の人間だったのか。

 なぜ佐藤光が彼のクラスまで知っていたのか、謎は残るが。


「……して、そのA組の彼の名は?」


「たしか――」







    【main view 長谷川七海】



「斉藤太郎……さん?」


 昼休み、再び旧多目的室へ集まった私達は、早速池先輩から新たな情報を聞いた

 黒幕候補……だよね。でも知らない人の名前です。

 お姉ちゃん達は知っているのかなぁ?


「誰なの?」


「誰なんですか?」


 お姉ちゃんも月羽先輩も知らない人のようだ。

 さすがに一郎先輩なら……知ってるよね?


「A組、窓際の一番後ろの席に座っている奴だ。これといった特徴はねーが……まぁ、特徴ねーのが特徴だな」


「なんで青士さんが知っているのさ!?」


 お姉ちゃんがすかさずツッコむ。

 私もまさか青士先輩が答えるとは思いませんでした。


「昨日そいつとちょこっとだけ話したからな」


「青士さん、自分のクラスメートの男子とは全然喋らないくせに」


「ウチのクラスの男子は基本的につまらねーやつしかいねーじゃん。正直言って半分以上の奴の名前覚えてねーわ」


「二年以上一緒に学んでいて名前すらも憶えられていないウチの男子って……」


 この先輩、興味のあることしか記憶力働かないタイプだ。

 もしかして私の名前すら憶えられていないかも……うん。なんかそんな気がしてきたよ。


「というか、俺からも意見いいか?」


「おっ、言ってみたいまえー、佐助君」


 今までずっと傍観していたお兄ちゃんが珍しく自分から発言をする。

 なんだかんだで被害にあっている一郎先輩のことが心配なんだろうなぁ。

 面倒くさがり屋でも友達想いなのがお兄ちゃんだし。

 お姉ちゃんを助けた時もそうだった。私は知っている。こうなったお兄ちゃんは本当に頼りになる人なんだって。


「全員薄々感づいているんじゃないか? 黒幕は『3-Aの人間』に絞られるってことを」


「えっ? どういうこと? お兄ちゃん」


「……お前はもう少し自分で考えることをしろ」


 怒られちゃった。ていうか呆れられちゃった。

 うぅー、だっていつも難しいことを考える担当はお兄ちゃんだからなぁ。


「まず、被害にあっているのは一郎と青士の二人だけだ」


「うんうん」


「次に、それぞれ被害にあっている時間は、一郎が授業中、青士は放課後だ」


「うんうん」


「……お前、やっぱり自分で考えてないだろ?」


「……うぐっ!」


 ぽけーっと話を聞いていることを気付かれた。

 だってだって、難しいこと考えるの本当に苦手だし。


「つまりだ。青士はどのクラスの人間でも狙うことができる。しかし、授業中の一郎を狙うことができるのはA組の奴だけってことだ」


「……あっ」


 言われてみればその通りでした。

 なんで気付かなかったのか不思議なくらい盲点でした。


「次に、嫌がらせのやり口が南高の『闇の親衛隊』と同じだということ。その闇の親衛隊に縁の深そうな黒井という奴と繋がっているのがA組のいるということ」


「犯人はA組の誰か。そして唯一闇の親衛隊のやり口を知っているA組の人。それを繋げると――」


「斉藤君が……今回の黒幕ってこと?」


「まっ、そうなるな」


「そっか……斉藤君が……そっかぁ……」


 一郎先輩が何かを呟きながら俯いた。

 表情が暗い。

 何かを考え込んでいるようでした。

 ショック……なんだろうなぁ。自分のクラスの人が自分に嫌がらせをしている犯人だと知って。

 どうしよう。私じゃどう声を掛けていいのか分からない。元気づけてあげたいのに。


「一郎君。大丈夫ですよ」


 月羽先輩がそっと一郎先輩の背中に手を置いた。


「どうして斉藤さんという人が一郎君に嫌がらせをするのかはわかりません。ですが相手にどんな理由があろうと犯人が分かった限りはもう嫌がらせをさせたりしません。私が……斉藤さんを説得してみせますから」


「月羽……」


「月ちゃん! もちろん私も――私達も一緒にいくよ!」


「その通りだぜ。つーかアタシも嫌がらせされた被害者だっつーの。黒幕には一言ってやんねーと気がすまねぇ」


 みんな、一郎先輩が心配で死力を尽くそうとしている。

 私だってっ!


「じゃあ早速みんなで3-Aへ突撃しましょう!」


 気分は最終決戦。

 気力を十分にいざ3-Aへ!


「まて愚昧。斉藤が一番黒幕である可能性が高いだけで犯人確定なわけじゃないんだぞ。万が一冤罪だったらどうする。青士の拳により無駄な血が流れるだけだぞ」


「アタシがぶん殴る前提かよ! 停学にならない程度にジャブ打つだけのつもりだっつーの」


 それって逆に難しいんじゃ。


「メンタルイケメンなら本当にやりかねんな。俺も慎重に動いた方がいいと思う」


 池先輩もお兄ちゃんに同意する。

 そうだよね。突撃するなら犯人であると確信してからじゃないとダメだよね。


「そんな悠長なこと言ってられっか! 時間を置けば置くほどアタシらの被害は増えてくっつーの!」


「そうですよね。早く事件を解決しないと一郎君達がもっと酷い目に合ってしまいます」


「そうだよ! 事は一刻を争うんだから!」


 お兄ちゃんと池さんは慎重派。

 青士先輩、月羽先輩、お姉ちゃんは行動派。

 派閥が二分されてしまいました。

 私は……どっちだろう。

 そうだ! 西谷先生は?


「……」


「先生?」


 先生はこの昼休み、顔を見せてから一言も言葉を出していない。

 一郎先輩と同じように深刻そうな顔で終始何かを考えていた。


「決めた! 私が斉藤君と話し合って黒幕かどうか確かめてくるわ」


「先生……」


「私はA組の子がそんな酷いことをしているなんて信じられないって気持ちが今も強いの」


 そっか。

 先生にとっては自分の受け持つクラスで起きた事件なんだ。

 たぶん、誰よりも悲しんでいるんだろうな。


「だからって、担任である私が放置しっぱなしってわけにはいかないわ。だから私が斉藤君と面談してみる」


「そう……だな。ここは担任の教師に任せるのが一番打倒かもしれん」


「沙織さんがそういうならアタシも文句はいわねーよ」


 先生の一声が皆の意見が纏められる。

 立派な先生だな。憧れる。

 ここは先生に全てを任せて――


「待ってください。先生」


 全てが纏まりそうな所で一郎先輩が待ったを掛けた。


「高橋君?」


「面談の前に……僕が斉藤君と話をしてみていいですか?」


「え? でも……」


「お願いします」


「…………」


「お願いします」


「……分かったわ」


 一郎先輩の必死な気迫に先生が折れた感じだった。


「どうするつもりなのだ? セカンドイケメン」


「今言ったとおりだよ。斉藤君と話をしてくるだけ」


「わ、私も一緒に行きます!」


「私も!」


「ありがとう月羽、小野口さん。でも大勢でいくと斉藤君を驚かせちゃうからさ」


「喧嘩なら味方は大勢の方がいいだろ」


「喧嘩に行くわけじゃないよ青士さん。あくまでも話をしてくるだけ」


「……分かった。セカンドイケメンの意見を尊重しよう」


 意外だった。

 この会話で一郎先輩の印象がガラっと変わった。

 言っては悪いけど、見た目の印象から少し情けなくて頼りにならなそうな人だと勝手に思っていた。

 だから一郎先輩はこういう場面では絶対に先生任せにすると思っていた。


 それが普通なのだと思う。私が一郎先輩の立場だったら絶対にそうしていた。

 私と同じだと思っていたから一郎先輩の持つ空気に安心感を得られていた。


 でも違った。

 意地でも自分で解決したいという強い意志。しかも結構頑固に。

 一郎先輩は私なんかと違って強い人なんだ。

 その強さが私には煌いて見えた。


「で、でも、遠くから見守るくらい……い、いいですよね?」


「七海さん?」


「口出しはしないから……その……見てるだけだから!」


「い、いいけど……」


 私が突然声を張り上げるものだから一郎先輩が驚いている。

 でも私はどうしても見たくなった。

 私と同じ雰囲気の人がどのような強さを見せてくれるのかを。

見てくれてありがとうございます。

これで一通り皆にメイン視点を回せたかなと思います。

出来れば深井さんのメインも回せたかったけど、残念ながら出番なしということで。

ちなみで忘れた人も多いと思いますので補足しますが、今回名前だけ出てきた『黒田幕次郎』くんですが、沙織先生主役のExtra Pointに出てきています


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