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Experience Point  作者: にぃ
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第百二話 私は何をしたら良いですか?

ここにきて新キャラ登場

    【main view 星野月羽】



「明日!?」


 翌日の月曜日。

 いつものように唐突にB組へやってきた池さんの言葉を聞いて、思わず甲高い声を上げてしまいました。


「ああ。ついさっき職員室で得た情報だ。間違いない」


「そんなぁ。いくらなんでも急すぎない? 職員会議が明日だなんて……」


 小野口さんの意見に同意するようにコクコクと首を縦に振る私。

 青士さんの処分を決める職員会議が今週行われることは事前に知っていました。

 だけど、それが明日だなんて……


「俺達が自由に動けるのは今日が最後と言うことだ」


「「…………」」


 今日が最後。

 明らかに時間が足りなかった。


「とりあえず俺は今日も南校へ出向こうと思う。中黒君と会う約束もしていてな。上手く行けば深井嬢にも合えるかもしれん」


「池君。私も行くよ。私も深井さんを探る」


「ああ。それはありがたい……と言いたいところだが、小野口クンには他に頼みたいことがある」


「ん? なに?」


「今日もメンタルイケメンの家に行って欲しいのだ」


「それは構わないけど……それだといつもと同じ……」


「それでいい。それでなんとか明日までにメンタルイケメンを学校へ戻してくれ」


「サラッと無茶ぶり言ってきた!?」


「無茶ではないだろう。小野口クンだからこそ頼めることなのだ。キミになら出来る。キミにしかできない」


「う、うん。わかった。わかった! じゃあ全力で青士さんを復活させて見せるね!」


「うむ。頼んだぞ」


 役割を言いつけられ、やる気に満ちた表情を見せる小野口さん。

 その様子に触発され、私もやってやるぞ! という気持ちにさせられる。


「池さん。私は何をしたら良いですか?」


「「今日もセカンドイケメン(高橋君)の所にいってくれ(いくんだよ)」」


「ハモられました! もちろんそのつもりですけど、他にも出来ることが……」


「いや、セカンドイケメンの手助けに行ってくれるだけで十分だ」


「高橋君を復活させられるのは月ちゃんだけだよ! 頑張って!」


 応援されてしまいました。

 とりあえず私にできるのは一郎君の家に行くことだけ、ということでしょうか。

 少し悲しいですが、でも私が最もやらなければいけないことでもあるのでそちらに全力を尽くせということかもしれませんね。

 ここはポジティブに考え、一郎君を復活させる作戦を再度考えることにしましょう。


「おっと、大事なことを言い忘れる所だった。二人とも、放課後に行動を開始する前に一度この場に集まってくれ。一度全員でやらなければいけないことがある」


「うん。いいけど……何するの?」


「教師達へ交渉する」







 その日の放課後、私達は池さんの言われた通りに全員で行動を開始した。

 着いたのは職員室。

 私達はノックと共に入室すると真っ直ぐに教頭先生の元へと歩み寄った。


「2年E組の池=MEN=優琉です。教頭先生、今お時間よろしいでしょうか?」


「あ、ああ。2年生のイケメン君か。どうしたのかね? 女の子を引き連れて」


「結論から言います。俺達を明日の職員会議に出席させて頂きたくここへ伺いました」


「い、いきなりだな。どうして生徒の身分で職員会議に出席したいと申す? そもそもどうして明日職員会議が開かれることを知っているのかね?」


「後者の質問は俺がイケメンだからと答えておきましょう。前者の質問ですが……職員会議の議題が俺達の仲間に関することだからです」


 後者の質問の答えはそれでいいのでしょうか……?

 なんかすごいはぐらかし方を見た気がします。


「……ふむ。キミにはもう全てが筒抜けのようだな。明日、2年B組の青士有希子さんの処分を決める会議は確かに開かれる。だが、キミ達を会議に出席させる理由としては薄い」


 教頭先生は『仲間だから』という理由だけでは参加を許さないつもりらしいです。

 でもここで引き下がるわけにはいきません。


「お願いします。先生。私達、どうしても参加して、青士さんが意味もなく暴力を奮ったわけではないことを主張したいんです」


「教頭先生、私達は事件の日、青士さんと友にアルバイトをしていたんです。当事者ですので事件のことは誰よりも詳しい。それに他校の生徒とのトラブルなのだから誰よりも情報が欲しいのは先生達じゃないですか?」


 小野口さんの言葉が相手の痛い所を付いたらしく、教頭先生の顔色が少し悪くなる。


「うぐ……っ! 確かに私達は人から聞いた詳細で話し合わなければならない所だったが……うーむ……しかしなぁ……」


「――教頭。私からもお願いします」


 後方から第三者の声がした。

 だけどそれは私達も良く知っている女性の声。

 振り返ると険しい顔で教頭先生を見つめる沙織先生が立っていました。


「この子達はきちんと事実のみを伝えてくれます。自分達の都合の良いように事実を改変して喋ったりは絶対しません。私が保証します。ここに居る誰よりもこの子達を知っている私が保障します」


「沙織さん……」


「沙織先生……」


「お願いします! 教頭!」


 沙織先生が大きく頭を下げる。

 それに習うように私達も頭を下げてお願いした。


「だがなぁ……南校の先生方も出席する会議なんだ。そんな大事な場に生徒を居させるわけには……」


 それでも渋る教頭先生。


「――いいではありませんか、教頭。こいつらを会議に参加させてみても」


 またも背後から、今度は男性の声が会話を遮った。

 そして今度も聞き覚えのある声。

 だけど私は振り返ってその姿を見るまで、その正体が信じられなかった。


「田山先生! 貴方まで……!」


 そう、私達の背後に立っていたのは私の担任であるあの田山先生でした。

 まさか田山先生まで私達の味方をするなんて予想外すぎて目を見開いてしまっています。


「このまま会議が開かれてしまっては青士は十中八九退学になります。そんな相手方に言いなりになって本校の生徒を退学させてしまっては面白くないのでは?」


「面白いとか面白くないとかそんな次元の話では――」


「面白くありません。私は自分のクラスで退学者を出したくはない。担任の責任を私は負いたくないのです。減給程度で済むとは思えませんしね」


「しょ、正直だな、キミは……」


 青士さんを心配しているのか、自分の将来を心配しているのか、よく分からない先生です。


「私の保身が約束されるためには何でもやります。だから私からもお願いします。こいつ達を会議に出席させてやってくれませんか」


 前半の言葉が無ければ田山先生を全面的に見直す場面だったのに……

 で、でも、私達に協力しようとしてくれているのですから素直に感謝しないと!


「まぁ、学年主任の田山先生がそういうのでしたら、特別に許可しましょう。だけど大勢は駄目だ。まぁ、キミ達三人までなら構わないが」


「ありがとうございます!」


「やったね! 月ちゃん! 池君!」


「ああ。なんとか最低条件は満たせたな。沙織さん。田山ティーチャー。ありがとうございます。お二方のおかげです」


 池さんに習って、私も先生方に頭を下げる。


「別にいいのよ。私だって青士さんの為に何かしたかったんだから! 会議でも一緒に頑張るわよ! 皆」


「「はい!」」


「お前ら、会議に出席させてやったのだからキチンと結果を残せ」


「わかりました! 田山先生!」


「最低限、私の地位を守れ。それさえ守れれば会議が荒れようが、青士が退学になろうが構わん」


「「「…………」」」


 本当にこの人は……なんて残念な担任なのでしょう。

 また別の意味で田山先生に苦手意識を持ってしまった瞬間でした。







    【main view 池=MEN=優琉】



「合言葉は?」


「……いや、知らんが」


 放課後、いつものように南校へと赴き、グラウンド裏手の人気のない場所にて俺は待ち合わせをしていた。


「ふむ。ノリが悪いな中黒君」


「いやいや、ノリとか言われても知らんし」


「セカンドイケメンならばノリノリで回答してくれるんだがな」


「……もはや俺の知ってる高橋はこの世に存在しないみたいだな」


 中黒龍人。

 セカンドイケメンの中学時代の知り合いにて、深井嬢の元恋人。

 その二人の間の位置に存在する彼は、数々の情報を持っていた。


「無駄話はこの辺にしておいて、本題といこうか」


「無駄話を始めたのはお前の方だけどな」


「それで、過去のセカンドイケメンに関する噂に矛盾はありそうか?」


「……物凄くマイペースなのな、お前」


 この中黒君と言う男は話をしてみると中々楽しい奴である。

 この淡々としたツッコミ、俺は嫌いじゃない。

 しかし、最初見たときは頭に血が上りやすい熱血漢と思ったが、実際はそうではなかった。

 むしろ逆かもしれんな。


「まず、高橋に関する数々の噂。その内いくつかは確かにおかしな矛盾点があった」


「聞かせて貰おう」


「なんか超上から目線だな。まぁ、別にいいが……まず一つ、『高橋が体育館に飾ってある横断幕に悪戯書きした』って噂は他に真犯人がいやがった。それを高橋のせいにして面白がっている連中が居たんだ」


「俺の思った通りの真相だな」


「……アンタ、後付けで同意すんの辞めたほうがいーぞ」


 しかし、この中黒君、結構ツッコんでくるな。

 小野口クンのツッコミとはまた違う味があって面白い。


「生徒会長の腕章に悪戯書きしたのも数学教師のでっかい三角定規を叩き割ったのも別に犯人がいた。その阿呆らは『もう時効だろうし、話してやんよ』とか言ってベラベラ語ってくれたぞ」


「なるほど……他には?」


「元3-Cの……名前なんだっけな……まぁいいや。彼氏持ちの何とかって女子に高橋の宛名でラブレター書いたのも別の奴だった」


 これで三つも事実が覆った。

 つまり、セカンドイケメンは別の誰かに填められ、まんまと冤罪を着せられたことが分かった。


「わずか三日でそこまでの情報を得るとはな。予想以上だった。正直助かる。ありがとう」


「礼とか別にいーから。俺が過去の真実を調べたかっただけだ。この報告はついでだ」


「男のツンデレは気持ち悪いな」


「他に言葉なかったのかよ!」


「ちゃんとありがとうと言っただろう?」


「無駄に一言多いんだよ!」


 何はともあれ、中黒君の捜査のおかげでセカンドイケメンに関する過去の噂はほとんどが……いや恐らくは全てが冤罪なのだろう。


「ちっ、どうやら高橋クズ説は改めなければならねーみてーだな。くそっ! だったらなんで傷心の玲於奈に付け込むようなことをしやがったんだ!」


 そうか、中黒君からすれば、セカンドイケメンは自分の元恋人を誑かせた悪者であることは変わりない。

 だけど、過去を調べれば調べるほどセカンドイケメンの内面が分からなくなっていく……そんなところだろう。


「中黒君。その事実すらも虚である可能性を考えたことは……あるのだろうな」


「……お見通しなら聞くな。俺だってその可能性も考慮して捜査したさ。だけど、玲於奈と高橋の間に在ったことをしっている奴はどこにも居なかった」


「そうか……」


 二人のことを知っているのは二人だけ、というわけだな。

 しかし、深井嬢から真相を聞くことは不可能だろうな。

 だとすれば、その辺りの真実を知るにはセカンドイケメンの復活が不可欠というわけか。


「そうだ。一つ思い出したことがあったのだが、明日、お前らの学校で職員会議があるんだってな」


「そんなことまで知っていたか。中黒君、探偵になれるんじゃないか?」


「茶化すな。俺、今から結構大事なことを言おうとしてんだから」


「む。どういうことだ?」


「被害者とその証人として、相田、鷲頭、そしてあの時その場に居た玲於奈も職員会議に出席するらしいんだ」


「なんだと……!」


 思いもよらぬ情報。

 思いもよらぬ展開。

 中黒君のくれた情報により、今後の展開に視界に光明が刺した。


「もしかしたら明日、お前らの学校で玲於奈達に会えるかもな」


「会うさ。こんなチャンス、逃すわけがない」


 そう、チャンス。

 決戦の舞台が整った、といった感じか。


「中黒探偵、他に情報はないか?」


「さりげなく変な役職付けんな。あー、そうだ。大切なことを言い忘れてた」


「キミは思い忘れや言い忘れが多いな。それも重要なことほど後になって思い出している。キミは大事なイチゴを最後に食べる方だろう?」


「別にいいだろうが! 最後に喰ったって! 俺のイチゴがどうなろうとお前にはかんけーねーし!」


「全く持ってその通りだな。イチゴの話なんてどうでもいいから、早く思い出したことを言うのだ」


「お前が! お、おおおお、お前がぁぁ――!」


 中黒君がいい感じに壊れて――もとい打ち解けてきたな。

 中黒君は敵か味方がよく分からない位置に居るからこそ、是非とも味方に引き込みたい。


「なんかもうお前に情報与えんの嫌になってきた」


「まぁまぁ、キミの情報には期待しているのだから言ってみたまえ」


「マイペースに加え、常に上から目線なのなお前。もう慣れたけど……それでだな――」


 結局今日は深井嬢に会うことはできなかった。

 しかし、それ以上の収穫をこの中黒探偵が与えてくれた。

 特に最後の情報は中々確信に迫るものがあった。


 決戦は明日の放課後の職員会議。

 だが、舞台は整ってもまだ役者が揃っていない。

 だけど役者を集めるのは星野クンと小野口クンの仕事だ。


「信じているぞ。皆」


「……それ、イケメンじゃなかったら超痛いセリフだからな」


 中黒探偵は最後の最後まで辛辣だった。


見てくれてありがとうございます。

教頭は初登場……だったはず?

あれ? 以前にも出たことあったかな?

……まぁ、全然重要キャラではないのでどちらでもいいのですがww


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