3話:親友と俺。
俺は家に着いた。両親は帰っていない。兄貴もだ。
部屋に入り、俺は力なくベットに倒れこんだ。
「ハァ‥‥。疲れた‥。」
とため息を吐く、女と話すなんて久しぶりだったので。すごく緊張したのだ。
しばらく、ため息ばかり吐いているとケータイが鳴った。メールではなく電話だった。
画面には、『高山 智弘』〈タカヤマ トモヒロ〉の名前だ。智弘は中学時代の友達だ。電話取る。
「もしもし。タカマ?」
タカマとは、智弘のあだ名だ。すると電話ごしにタカマが、
「そうだよ彰!!そろそろ行くか!?」
「えっ‥。どこにだよ?」
「おい!!とぼけんなよ!!今日は、『鬼畜』の奴らと走りに行く日だろぅが!!」
「‥‥‥。」
ド忘れしていた。そういえば、三日前の飲み会の時に言ってた気がする。
まぁ、断る理由もないし
「ワリィ。忘れてたよ。」
タカマはすぐに、突っ掛かった。
「バカ!!このオバカ!!すぐに行く準備をしやがれ!!」
「わかったって。特攻服は着てくの?」
「着ていけ!!」
「凶器は?」
「喧嘩じゃねんだから、いらねぇよ!!」
「あいよ。じゃあ、迎えにきてくれよ。」
そういうと、一方的に電話を切った。
「ふぅ。もう若くねぇのになんで、『鬼畜』の連中と走らにゃいけねんだよ。」
『鬼畜』とは、今の有名な高一の奴等が、作った暴走族だ。
一年だけを見れば、他の族よりも、はるかに強いのだが、当然他の族には二、三年がいるわけだから、鬼畜は県下でかなり弱い族と言われている。
「‥‥ッタク。OBでもねぇのによ。」
タカマが勝手に、
「いっしょに走ってやる。」
なんていうから。
あの時は『鬼畜』が県下で有名な『ジョーカー』の連中に潰されかけてたときに、
「ヒーロー、見参!!」
なんて言って喧嘩に、混ざったから、それからタカマは『鬼畜』の連中を気に入ったらしい。
「ブォォォン!!オンオン!!」
タカマの、バイクの音だ。すぐに、外に出る。
「おっせぇぞ!!彰!!早く乗れ!!」
真紅の単車にまたがる、ヒゲヅラの男。タカマだ。
「いやぁ、待たして悪かったよ。」
と微笑みながら、彰は、タカマの単車の後部座席にまたがった。
なんだかんだいって、友達と出掛けるのは楽しい。
「じゃぁ出発するか!?」
「おう!!」
バイクは新井町を、走っていた。
冷たい風が体に当たって気持ちいい。夜空には、星が散らばっている。
「‥‥これがデジャヴかな?どこかで見たのに思い出せない。」
少し考えていると、タカマが、
「おぅい!!なんだ。黙って?なんか、悩み事か?」
とケラケラ笑いながら、言ってきた。
もう一回、空を見上げてみた。すると、バイクが大きく揺れた。足が痛んだ。
「どうだぁ!!俺の二輪ドリフトは!?」
思い出した。今日、女と喋ったんだ。
彰は、タカマに言った。
「今日、『鬼畜』のとこ行かないで二人でトークしたい。」
「アキラァ‥‥。なんかあったん?」
「うん。相談したい‥‥。」
すると、タカマはニコッと笑って
「任せろ!!」
と言ってくれた。
へびがわの川原に、座った。タカマは、
「酒、買ってくる。」
と言って一人で買い出しに言った。
草原がザザーッと音をたてている。
なぜか、心が落ち着く。そう考えていると、彼女のことを考えていた。
「バカっぽい娘だったなぁ。」
顔も、もう忘れてしまったがそういう雰囲気だった気がする。
「ブロロロ‥‥」
タカマが帰ってきた。
「ホレ、ビール!!」
とタカマが言い、缶ビールを投げた。
それを片手で、受け取った。
タカマはビールを飲みながら、俺の横にどかっと、座る。
「『鬼畜』は大丈夫だった?」
俺から話しを切り出した。
「おう。相棒の急用だ!!って言ってやったぜ!!」
「うれしいこと言ってくれるねぇ‥‥。だけど、『鬼畜』襲ってこないかな?」
「そんときゃ、返り討ちだぜ!!ゲハハ!!」
そういうとタカマは、ビールをゴクリと飲んだ。
「そんで、相談ってなんだよ?」
今度は、タカマが話を切り出した。
彰は空を見つめ、一呼吸おいて言った。
「俺さぁ‥‥。」
「な‥‥なんだよ?」
タカマが唾をゴクリと飲んだ。
「東高の頭を、潰そうと思う‥‥。」
「な‥‥なに言ってんだよ!!俺!!」
と心の中で叫んだ。タカマが、俺の肩をがしっと掴み、
「俺も、手伝おうか?」
と目をキラキラさせながら言った。
タカマは、根っからの喧嘩好きだ。これはヤバいと思い。
「あんなん敵じゃないから、一人でやるよ。」
と言ってしまった。
「そっかぁ、分かったよ!!それにしても楽しみだな!!東の頭が彰になるなんてよ!!」
タカマは、すっかりその気だ。
「まだ、決まったわけじゃないだろ。」
と彰は、苦笑い。
「今日は、祝いってコトで沢山飲もうぜ!!」
「おう!!ガンガン飲もうぜ!!」
もうヤケクソだった。その日は、タカマと夜深くまで飲んだ。