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ガーディアンパレスの日常

作者: Irene
掲載日:2026/10/27

王都が一望できる小高い丘、

そこにはまるでお城のような館が建てられている。

そこはこの国の今代随一と言われた美しき魔導師の住居……


さすが魔導師の館、庭には森までもある。

噂ではドライアドが守護していて、色々な希少な薬草までもがあるらしい。

そしてその森の中央にはこれまたセイレーンが守る聖なる泉が存在するとか。


そして何より、この館には魔導師の最愛の宝があるとも言われている。



これまでは何人もが魔導師の館に忍び込もうとしたが、

誰一人、帰ってこなかった……

宝どころか、館にすらたどり着かないとか……



これはそんな館のある日の様子である。



麗らかな日差しの元、花が咲き誇る庭のガゼボに、ふたつの影が……





「お嬢様、本日は僕の育てた花で作った、

遠い異国のお茶、『花茶』なるものに挑戦させて頂きました。

香りもさることながら、蒸らす時間の間も楽しめる伝統茶にございます。」




そう、恭しい仕草でお茶を入れるのはおそらくこの屋敷の執事だろう。

なぜおそらく、なのか……


それはその者の出で立ちの為だ。


その漢(おとこ)、白髪混じりの髪をツーブロックにしているかと思いきや、

襟足部分はまとめていて、まるで細いしっぽの様に垂らされている。


顔には少しシワがあり、穏やかな表情により温かみが足されている。

温かみと言えばその瞳の色。

まるで冬の暖炉の火のような橙と朱を混ぜた色をしている。


体格はやや……と言うかまるで歴戦の猛者の様な体付きだが、

洗練された仕草や丁重な言葉遣いがそれらを中和させている。


先程紅茶を入れる手つきも、そのゴツい図体に似つかわないほどの丁重さで入れられていた。




「まあ!!見てアルベルト!

ティーポットの中で紅い花が咲きましたわ!

なんて素敵なの!」


そう、透明なポットの中を見てはしゃいでいる楚々とした少女。

夜を思わせる漆黒の波打つ髪を、

銀細工と中央の紅い宝石が付いている髪飾りでハーフアップにし、

その白く美しい顔(かんばせ)をうっすらと桃色に染めた、

猫を思わせる好奇心旺盛な、まるでビジョンブラッドの様な瞳はとても愛らしい。


透明なティーポットの中にある花茶も同じ色合いなのも、

きっと彼女の瞳に合わせたのだろう。



「お嬢様にお気に召していただき光栄です。

花が開ききったので注がせて頂きますね?」



そう、いいながら透明なカップにお茶を注ぐ執事。

とたんに広がる花の香りが鼻をくすぐる。

その時、



「おや、良い香りだね。

私にもお願いしていいかな?」


「お父様!!お帰りなさいませ!!」




柔らかな風がふ、と吹いたと思った瞬間、

現れた男性。

彼に気づいた少女は嬉しそうに駆け寄った。




「ただいま、愛しいアマリーア。」




少女をふわりと抱き上げ、頬に口付けをしたこの男こそが、

この館の主である魔術師だ。


短めのウルフカットをされた少女と同じ漆黒の髪、

そして切れ長のアイスブルーの瞳。


普段は眼光鋭いそれは、

愛しい娘の為に柔らかく細められている。


「私もお茶会に参加しても宜しいかな?

マイ リトル レディ?」


「もちろんでございますわ紳士様?」


娘の為に小芝居を打つお茶目さも、それに応える彼女も、

この屋敷ではよく見られる風景である。



「では、僕は追加のお菓子を持ってきます。」


「ああ、そうだ。娘に土産も買ってきているんだ。

ついでに不(・)備(・)が(・)無(・)い(・)か(・)確(・)か(・)め(・)て(・)から持ってきてくれるかい?

西(・)側(・)の(・)棟(・)にあるはずだから。」




笑顔で言った彼の言葉に執事は一瞬歩みを止め、



「畏まりました。

暫しお側を離れることをお許しください。」



と、主の方へ向き一礼した後、

また歩き出した。


父娘の話し声を聞きながら、

執事は西練へと魔術を使い飛(・)ん(・)だ(・)。


そこで感じた僅かな違和感。


飛んできた暗器を素手で落とし、異(・)物(・)を見据えた。




「はて?

本日は来客の予定はございませんでしたが……」



「悪いが、貴様のようなじじい相手をしている暇は無い。

我らの目的は噂の宝珠のみ。

そこを退け!でなければ……」



「テメエ……今なんつった?」


「! ?」



そこには先程までの穏やかな執事はいなかった。


眼光は鋭さを持ち、心なしか彼の周囲には黒いオーラも見える。


異(・)物(・)達は何故か誰もが、指1本すら動かせなくなっていた。




「この家の……俺達の宝にてぇだすたぁ……

いい根性してるじゃねーか!!」




その顔に浮かぶ表情は笑(・)顔(・)。

最凶最悪な笑(・)顔(・)であった。


そしてそれが彼らの見た最後の光景だった。


その体つきからは思いもよらない俊敏さ、

周りにある全てのものを使った戦い方、

それでいて建物などを壊さぬように配慮もするという離れ業……



哀れ、

今日も現れた名も無き異(・)物(・)達は排除された。


宝を護る、最凶の執事(ガーディアン)によって。


こうして今日も彼女は何も気づかずに守られるのであった……




「あ!アルベルト!

おかえりなさい!」


「やあ、おかえり。

問(・)題(・)は(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)か(・)い(・)?」


「全(・)て(・)滞(・)り(・)な(・)く(・)。

お嬢様、こちらを……」


「何かしら?お父様見てもよろしくて?」


「もちろんだとも。」



そう、父親に聞いたあと、少女は執事の持ってきた箱に手を伸ばした。


箱を開けるとそこには……

美しい細工の台座のスノードーム。


「まあ、綺麗!!お父様、ありがとう!!」


「台座はミスリル製で、加工は森にいるドライアドたちが頑張ってくれたよ。

アマリーアが彼女たちと遊んだ様子だそうだ。

ドームはこの間、

アルベルトが討伐したクリスタル・オイスターから取れるクリスタルパールを私が加工して、

セイレーンたちが育てたサンゴや、貝を入れてあるよ。

皆で頑張って作ったんだ。

気に入ってくれたかい?」


「ええ、とっても!

ふふ、後で彼女たちにお礼を言いに行かなくっちゃ!

アルベルトもありがとう、とっても嬉しいわ!」


「おや、私は?」


「もちろんお父様も、ありがとうございますわ!!

大好きですわ!!」



そう言って少女は父親の頬に口付けをし、

彼に思いっきり抱きついた。



これは、娘を誰よりも愛する魔術師と、

彼女を守るために選び抜かれた、

執事と精霊たちの、幸せな日常である。


ギャップのある執事、

この発想からできた話です。

どうでしょうか?

感想お待ちしてます(ペコリ)

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