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【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました  作者: ゆうき


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第七十三話 決着

「はぁぁぁぁ!!」


 もうどれだけの時間が経ったのだろうか? 一時間? 二時間? それとも数分? 時間の感覚が分からなくなるくらい、私は怒りと憎しみに身を任せて、マーガレットの影を攻撃する。


 しかし、互いにいまだに決定打になる一撃は与えられず、膠着状態が続いている。


「早く死んでよ! 私の前からいなくなってよぉ!!」


 マーガレットの影のコアを破壊するために、全力の爆破魔法を放とうとするが、やはり精霊の妨害にあってしまい、上手く発動しない。


 どうして邪魔をするの? 私があなた達に何かしたとでもいうの? 邪魔ばかりするなら、精霊だって容赦するつもりは無い。邪魔している奴らを、全員殺してやる。


 ……あれ、待って。よく考えてみれば、精霊なんていなければ、お母様が亡くなることは無かったのでは?


「そっか……そっか。精霊も、みんな死ねばいいんだ。そうすれば、私の邪魔をするものはいなくなる。みんな、みんな殺し放題だ!」


 そうと決まれば、この忌々しい影を殺して魔法を止めたら、まずはこの森に住む精霊から殺してまわろう。逃げても、命乞いをしても関係ない。みんなみんな、死んじゃえば良いんだ!


「まずは手始めに、お前から死ねぇぇぇぇ!!」


 持てる力の全てを使い、地脈から可能な限りの力を得た私は、特大の魔法陣を空中に描いた。


 この魔法は、私が使える最強の雷魔法。これで、あの影ごと辺り一帯を全て吹き飛ばして、その間に魔法を止めてやる。


「消し飛びなさ――えっ?」


 魔法の準備は直ぐに整った。後は敵に向かって放つだけ……だというのに、魔法は発動せず、代わりに魔法陣にヒビが入った。


 そのヒビは、みるみると広がっていき……最後には、音もなく崩れ去っていった。


「なんで、どうして……」


 今の魔法で終わらせるつもりだったから、残っている体力を全て使い切ってしまった。無理をしたせいで、今までで一番の激痛が体中に走り、意識もおぼろげになってきている。


「ううっ……」


 ついに限界を迎え、その場で膝を折ってしまった。そんな私に止めを刺そうと、一本の触手が襲い掛かってくる。


 私は、ここで死ぬ定めなの? 嫌だ、そんなの嫌だ! 嫌だ嫌だ!


「私は……まだ死にたくない!!」


 目をギュッと閉じ、目前にまで迫ってきた死を拒絶する。しかし、そんなのは何の意味も成さず、私の体は無惨にも引き裂かれ……?


「……??」


 おかしい。一体何が起こったのだろう。いつまで経っても、体に変化はない。

 もしかしたら、私は助かったのか。それを確認するために、ゆっくりと目を開けると……そこには、力尽きたはずのルーク様の、凛々しい後ろ姿があった。


「ルーク、様……? ちがう、ルーク様はもう……」


「シャーロット、約束しただろう? 一緒に帰るんだって」


 ルーク様は、私の方を振り向きながらニッコリと微笑んでから、手に持っていた見知らぬ杖を振る。すると、迫ってきていた触手が爆散し、物言わぬ泥と化した。


「なんで、魔法が……本当に、ルーク様……?」


「そうだよ。君は休んでいてくれ。ここからは僕がやる」


 魔法で自らの人形を作り、現実を受けいれらなくて呆然とする私の護衛を任せてから、ゆっくりとした動きでマーガレットの影に近づいて行く。


 当然、近づけさせまいと触手を伸ばしてくるが、その全てがルーク様に当たる前に爆発し、先程の触手と同じ運命をたどる。


 あんな魔法、見たことがない。そもそも、ルーク様は亡くなったはずなのに、どうして無事だったの? あの杖はなんなの? あれだけ魔法を使って体は大丈夫なの?


 駄目だ、何を考えても答えは出ないけど……唯一わかることは……。


「ルーク様は、生きてた……」


 他のことなんてどうでもいい。ルーク様が生きてさえいてくれれば、私はそれ以外のものを望まない。本当に良かった……ぐすっ、うぅ……よかったよぉ……。


「随分と、僕の大切なシャーロットをいじめてくれたな。落とし前はきっちりつけてもらうから、覚悟するといい」


 手に持っていた杖を、激しい光が包み込む。感情がグチャグチャの私には、あれがどういったものか全くわからないが、とにかく凄そうなのは伝わってくる。


 それは、マーガレットの影も思ったのだろう。たくさんいた黒い人間が合体して今の姿になってから、ずっと一人で戦っていたのに、突然何十体もの黒い人間を生み出し、ルーク様に襲わせた。


「頭数を揃えたところで、無駄さ」


 ルーク様は、辺り一帯の地面に魔法陣を作り、そこから自分の人形を作りだすと、それぞれを黒い人間達に向かわせ、掴みかからせた。


「爆ぜろ!!」


 ルーク様の掛け声に合わせて、人形達が一斉に爆発を起こし、黒い人間達を巻き込んでいく。そのおかげで、あれだけ生み出された黒い人間達は、一瞬でただの泥と化して消えていった。


「今の僕に敵はいない。潔く負けを認めるといいよ」


 ルーク様の忠告も虚しく、周りに散らばっている泥が、マーガレットの影の頭上で集まり、巨大な球体となる。その球体は剣の形に代わり、ルーク様に襲い掛かる。


「なんて大きさなの……ルーク様、逃げてください!!」


 どう見ても、今までの攻撃の中で一番強力そうだというのに、ルーク様は全く逃げる素振りを見せない。今も、ゆっくりとマーガレットの影に歩み寄っていく。


「いやっ、逃げて……!!」


 もうルーク様が傷つくのは見たくない。そんな私の願いを嘲笑うかのように、ルーク様に漆黒の剣が振り下ろされた。


 あれは、今度こそ助からない。私は、また目の前で大切な人を失ってしまった……そう思ったのだが、衝撃で巻き起こった煙が晴れると、そこには思わぬ光景が広がっていた。


 なんと、ルーク様は持っていた杖で、自分の体の何十倍の大きさを誇る漆黒の剣を、完全に受け止めていたのだ。


 そして、その杖を軽々振るだけで、漆黒の剣は勢いよく弾き、爆発させて泥へと戻した。


「無駄と言っただろう。今の僕は、世界で一番……強い!!」


 ルーク様が杖を天に掲げると、杖はルーク様の手を離れ、天高く昇っていく。そして、はるか上空に巨大な魔法陣を出現させた。


「浄化の光よ、我らの未来を阻む悪の悉くを滅せよ!」


 天に掲げた手を振り下ろすと、魔法陣から光輝く光線が発射される。それに対して、マーガレットの影は触手を伸ばしたり、更に黒い人間を作ってぶつけるが、全て無に帰されるだけだった。


 そして、そのままマーガレットの影は光に呑み込まれ……跡形もなく散っていった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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