表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました  作者: ゆうき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/82

第五十話 煽りの天才

 村での精霊の騒動が終わってからしばらくの時が過ぎた。あれから私は、大きな問題もなく、ルーク様と共にいつもの小屋で過ごしている。


「では……いきますわ!」


 私は、ルーク様が用意した魔法練習用の的に向かって、魔法の球をぶつける。日々の訓練のおかげで、確実に的が壊せるようになっているのが実感できるくらいには、上達してきた。


『へぇ……だいぶうまくなったじゃん! これも僕達のおかげかな~?』


『なに言ってるんだか。何もしていないじゃないの』


『わかってないな~。ここで見ていることが、シャーロットの安心につながるんだよ!』


 例の二人? の精霊が、私の魔法の練習を見ながら、楽しそうに会話をしている。


 ……なんだか、ちゃんとに話をしてから、随分と気にいられたみたいだ。毎日ようにやってきては、暇つぶしにと言って適当に遊んで、満足したら帰るを繰り返しているのよ。


「ふう、少し休憩いたしましょう」


『シャーロット、おつかれさま! お茶、飲む?』


『喉が渇いたのなら、僕が水を用意してあげるよ?』


「いえ、遠慮しておきますわ。みんな、お願いね」


『はーい!』


 練習を見守ってくれていたホウキ達は、仲良く跳ねながら小屋の中に戻っていった。相変わらず、あの子達の動きは可愛くて、見ていて癒される。


『ちょっとちょっと、なんで僕を頼ってくれないのさ~! つまんないの~!』


「あなた、そう仰ってお願いしたら、湖の水を私に頭から浴びせたではありませんか」


『さすがにあれは、イタズラの範疇を超えてるわよねぇ……私もドン引きだったわ』


『ちょ、ちょっと力加減を間違えただけだし~? それに、あれはイタズラじゃないし~? 普段から頑張ってるシャーロットの手助けをしたかっただけだし~?』


 男の子の精霊は、露骨に下手な口笛を吹きながら、言い訳をする。


 今話した通り、以前も同じ様に喉が渇いた時に、彼が水を持ってくると言われたのだが、湖の水の一部を持ち上げて、そのまま私の頭上から落としたものだから、頭からずぶ濡れになってしまった。


 その時はルーク様がいたから、すぐに服は乾かしてもらったが、危うく風邪を引くところだった。


『あの時のイケメンの彼、もの凄い怒ってたわよね』


『え、そうなの? なんかすました顔をしてて、怒ってるようには見えなかったけど?』


『はぁ……ごめんねシャーロット。こいつ、馬鹿で子供なのよ』


「いえ、お気になさらず。もう済んだことですから」


 彼には申し訳ないが、確かにルーク様は怒っていた。いくらなんでもやりすぎだ、僕のシャーロットが怪我をしたらどうするつもりだったんだと。


 でも、イタズラが好きとはいえ、あの時の彼が、私に嫌がらせでしたわけではないのはわかっていたから、なんとか説得して怒りを静めてもらったの。


『そういえば、ルークはそろそろ帰ってくるの?』


「どうなのでしょう? 今日は朝からとても重要な会議と仰ってましたので、まだかかるかもしれませんわね」


 大切な会議。それは、来るべく宮廷魔術師の選抜試験のための会議。

 そう……私は、ついに目標だった宮廷魔術師の試験を迎える。


 魔法の腕前に関しては、だいぶ上達したと思う。それに、ルーク様のオリジナルの魔法も、いくつか教えてもらっている。


 とはいっても、まだまだ練習が必要なのは明白だから、こうして毎日魔法の練習を続けている。


『シャーロット、おまたせ! おまたせ!』


「ありがとうございます。ごくっ……ごくっ……ふう、今日もとてもおいしいですわ」


『シャーロット、嬉しい! ぼく達も、嬉しい!』


「おや、随分と楽しそうだね」


 嬉しそうに踊るホウキ達を見ながら微笑んでいると、ルーク様が空間の裂け目を通って帰ってきた。


「おかえりなさい。会議はどうでしたか?」


「滞りなく終わったよ。予定通りの日時で、試験は開かれる。申し込みは城でできるから、一緒に行こうか」


「はい。それじゃあみんな、お留守番をお願いね」


『いってらっしゃい! いってらっしゃい!』


『よ~し、いない間にイタズラするぞ~!』


『よしなさいよ。あとでイケメンの彼に怒られても知らないわよ』


 それぞれの個性が出ているお見送りを背中に受けながら、私達は空間の裂け目を通って城にやってきた。


「僕がいない間、練習の調子はどうだった?」


「とても順調ですわ」


「それはなによりだよ。ただ、あまり調子に乗って魔法を使いすぎないようにね。地脈の力のコントロールを失敗したら、取り返しがつかないことになるかもしれないからね」


「心得ておりますわ」


 ルーク様と出会ってからの日々の練習で、だいぶ魔法が扱えるようになったとはいえ、地脈の力が扱いやすくなったわけではない。こういう時こそ、油断はしないで鍛錬を積む必要がある。


「そういえば、今日も精霊達が遊びに来てますの。相変わらず、あの二人は仲良しですのよ」


「彼ら、毎日の様に来ているよね。またイタズラをしないと良いんだが……」


「あはは……えっ? あれは……?」


 ルーク様の部屋から、申し込みができる部屋がある一階の部屋に向かう途中、例の庭園が見える道を通った。


 今日も良いお天気で、そよ風が心地いい庭園には、思わぬ人影があった。


「あれは、ハリーか?」


 そう。あの庭園に、ハリー様がいたのだ。そして、彼の細い腕に抱きつく、一人の女性の姿も見えた。


 ……庭園は誰かの物では無いのだから、彼らがいても何の問題もないはずなのだが……ハリー様がいると、あの庭園で過ごしたルーク様との思い出が、汚されるような気分になる。


「ルーク様、見つかったら面倒ですわ。早く行きましょう」


「…………」


「ルーク様? どうかなさいましたか?」


「ハリーにくっついている女性、見覚えがないかい?」


 あの女性? 見覚えがあるかと言われても……あ、あれ? あの姿……たしかに見覚えが……ま、まさか……!


「うそでしょ、マーガレット……!?」


 なんと、ハリー様と仲睦まじくしているのは、私の妹のマーガレットだった。ハリー様の腕にくっついて、その豊満な胸を押し付けたり、何度も唇を合わせたりしている。


「いつの間に、あんな関係に……!?」


「これから大切な試験の申込だというのに、なんとも気分の悪くなるものを見せつけられたものだな……」


「その、私の妹が申し訳ありません……」


「恋愛は自由だからね。君が謝る必要は無いよ。さあ、こんなところに長居しても仕方がないし、行こうか」


「そうですわね、行きましょ――きゃあ!?」


 改めて目的地へ向かおうとした瞬間、私達の行く手を阻むように、床から尖った岩のようなものが付き出てきた。


 突然のことだったとはいえ、すぐに足を止めたことと、ルーク様が私を庇うように抱き寄せてくれたおかげで、かすり傷の一つも付くことはなかったのが、不幸中の幸いだったわ。


「あ、ありがとうございます。お怪我は?」


「当たってないから大丈夫だよ。そもそも、当てる気がなかったようだ」


 ルーク様にしては珍しく、忌々しそうな表情で、庭園の方を向く。

 私もそれにつられて視線を向けると、ハリー様がこちらに向かって、手を振っていた。


「やれやれ、気づかれていたようだ。そよ風から魔力を微かに感じると思ったが……どうやら、風属性の探知魔法のようだね。無視したら後で面倒なことになるかもしれないし、ここは適当にあしらおう」


「わかりました」


 ハリー様とマーガレットがこちらにつく前に、ルーク様とコソコソ話して方針を決める。さすが兄ということもあり、弟のことはよくわかっているわ。


「おやおや、これはこれは兄上ではありませんか。今日も仲睦まじく手なによりです」


「そういう君も、素敵な女性と一緒にいるようだね」


「あはは、わかります~? やっぱりハリー様のお兄様というだけあって、あたしの魅力に簡単に気がついてしまうんですね」


 どうして今の言葉が、本当に褒められているものだと思えるのだろう? どう考えても、嫌味でしかないのに。


「あなた、どうしてハリー様と一緒にいるのですか?」


「あたし、身も心もハリー様に染まってしまったの。本当に素敵なお方なんだよ、ハリー様は!」


「…………」


 私の知らないところで、何があったかは知らないけど……我が妹ながら、なんて男を見る目が無いのだろう。心の底から嫌いな人間だけど、哀れに思ってしまうほどだ。


 私にはわからなくて、マーガレットにはわかる、ハリー様の魅力があるのかもしれない。微塵も知りたいとは思わないけど。


「兄上達は、どうしてここに? ひょっとして、彼女がまたここで過ごすのですか? いいですね、マーガレットの足元にも及ばないと思いますが、城に華が増えるのさ良いことでしょう」


 誰のせいで、ここで過ごさなくなったと思っているの? 本当に意地の悪い人間だ。人を煽る天才と言ってもいい。

 これで、本当にルーク様と同じ血が流れているのか、疑問すら感じるくらい、この人のことは嫌いだ。


「私達は、宮廷魔術師の試験の申込に参りました。用が済み次第、すぐにお暇させていただきますわ」


「ふふっ、やっぱり参加するんだ」


 マーガレットは、なにか意味深な言い方をしながらハリー様のことを見ると、小さく頷く。そして、思わぬことを口にした。


「お姉様、あたしと勝負をして。あたしが勝ったら、その杖をちょうだい」

ここまで読んでいただきありがとうございました。


読んでいただいた方々に、お願いがございます。5秒もかからないので、ぜひ⭐︎による評価、ブックマークをよろしくお願いします!!!!


ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタッチすることで出来ます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ