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【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました  作者: ゆうき


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第十六話 新たな方法

 翌日、いつものように朝の過酷な仕事を終わらせて、自由時間になった私は、部屋の中にある空間の裂け目を開き、ルーク様がいらっしゃる小屋へと向かう。


 今日もこの辺りは暖かい。洗い物と洗濯物をして冷え切った体には、日差しがとても暖かい。


「あれ、ルーク様……? おはようございます。小屋の前でどうされたのですか?」


『ああ、おはよう。僕の本体が留守だから、ここで留守番さ』


 本体……? 一体何の話だろうか?


『そういえば言ってなかったね。僕は普段こっちにいる時に、僕が向こうにいると思わせるように、人形を作って置いてあるんだ。今日は人形がこっちだけどね』


「どうしてそんなことを?」


『僕がここにいるのを知っているのは、極一部の人間だけなんだ。それを知って、非難したり、利用する愚か者もいるかもしれないから、それの対策だよ』


 そんな人はいない……とは、口が裂けても言えない。意地の悪い人間は、指摘できそうなものを見つけると、どこからか湧いて出て来て、ほとんど難癖みたいな事を言うのだから。


「でも、凄い人形ですわね。見た目はそっくりですし、普通に会話も出来てますわ」


『ああ、意識は僕の本体に繋がっているからね』


「ということは、今話しているのは、ルーク様ご本人なのですか?」


『ああ。ちょうどいま会議をしていてね。それの話を聞きながら、魔法で人形を通して、会話しているんだ』


 元々凄い魔法の使い手なのはわかってたけど、そんなマルチタスクが出来るとは知らなかった。

 やはり上に立つ人間として、多くの事を同時に出来なければ、処理しきれないのかもしれない。


『もうすぐ終わるから、そうしたらそっちに行くよ』


「わかりましたわ。でしたら、またお茶の用意をしてお待ちしております」


『本当かい!? 丁度喉が渇いて仕方がなかったんだ! キッチンは自由に使ってくれていいからね。わからなければホウキに……って、言わなくてもわかるよね』


「はい、問題ございませんわ」


 私の返事を聞いて安心したのか、人形のルーク様は、静かに目を閉じて動かなくなった。これって、ルーク様の意識が人形から離れたということかしら?


「とりあえず、準備をしましょうか。おはようございます。みんな、いるかしら?」


『おはよう! おはよう!』


『今日も良い天気!』


 小さくノックをしてから小屋の中に入ると、掃除をしていたホウキ達が、跳ねながら挨拶をしてくれた。


 そんな中、私は先日と同じようにお茶の準備をテキパキとこなしていると、キッチンの中にルーク様が入ってきた。


「お帰りなさい。丁度用意ができましたよ」


「ありがとう。それじゃあ、一緒にいただこう……って、よく僕が本体だとわかったね。どうやって判断したんだい?」


「どうと言われても……なんとなく、そうなんじゃないかなって思って」


 ここで、魔法で簡単に判別できたとか言えたら格好良いかもしれないけど、そんなことが出来ない私は、勘に頼るしかない。


「人形かどうか見破られたのは、家族以外だと初めてだよ。君は自分が思っている以上に魔法の才能があるのかもしれないね」


「そうだったら嬉しいですわ……これでよしっと」


「今日は外でゆっくりお茶にしないか?」


「それは素敵な提案ですわね」


 私はルーク様と一緒に、用意できたお茶を持って、外に置かれているテーブルへと移動した。


「今日はマカロンを持ってきたよ。一緒に食べようじゃないか」


「まあ、おいしそうですわ。色とりどりで、目でも楽しめますわね」


 ルーク様と共に、暖かい日差しの元で、おいしいお茶とマカロンを楽しむ。暖かい日差しと暖かいお茶、そして暖かい人と一緒に過ごすおかげで、心も体もポカポカだ。


「……静かですね」


「そうだね。ここ、良いところだろう?」


「ええ、とっても」


 家族の嫌味な言葉も、罵声もない……聞こえてくるのは、風で木がサワサワと揺れる音や、小鳥の歌声、湖に住む魚の跳ねる音といった、自然が奏でる心安らぐ音だけだ。


 全てが終わって、私が自由に生きられるようになったら、こんな素敵な場所で静かに暮らしたい。


「そうだ、君に伝えておきたいことがある」


「はい、なんでしょうか?」


「とても大切なことだ」


 真剣な表情を浮かべるルーク様の顔を見つめていると、何故か胸の奥がバクバクと騒ぎ始め、顔が熱くなる感覚を覚えた。


 な、なんなのこの感覚は? どうしてルーク様の顔を見ているだけで、こんなになってしまうの? ひょっとして、何かの病気?


「昨晩、ずっと君が魔法を使えるやり方を考えてたんだ。それで、かなり難易度が高いが、一つだけ方法を思いついたんだ!」


「ほ、本当ですか!? って、わざわざずっと考えてくれたのですか?」


「当然さ。約束しただろう?」


「それはそうかもしれませんけど……」


 まさか、自分の研究の時間や、休息の時間を削ってまで、私のためにずっと考えてくれていたなんて、とても嬉しい。


 嬉しいはずなのに……ほんの少しだけ、残念に思ってる自分がいる。


 どうして残念に思っているのだろうか。自分のことなのに、全く意味がわからない。せっかく考えてくれたルーク様に、失礼にも程があるわ。猛省しなさい、私。


「やり方を教えるから、少し頭を出してくれないかな?」


 言われた通りに頭を少し出すと、ルーク様は失礼するよ、と前置きをしてから、私の頭に手を乗せた。


 頭に触られる時なんて、大体が痛みを伴うことばかりだから、反射的に体がビクッとなってしまったが、それを知っていたかのように、優しく撫でられた。


 ……触られた時は、ビクビクしていたのに、あまりにも撫で方が気持ちよくて、安心感の方が強くなってきた。子供の頃、お母様が寝るまで私の頭を撫でてくれたことを思い出す。


「はい、終わったよ」


「……えっ? あ、はい……」


 そうだ、ルーク様は私を喜ばせるために、頭に触れていたのではなかった。気持ちよすぎて、つい……。


「僕の魔法で、君が魔法を使えるようになる方法のやり方を教えた」


「どういうことですか?」


「言葉通りの意味さ。口頭で伝えると、かなり大変だからね。やり方を直接頭に教え込んだ方が、互いのためと思ってね」


「なるほど……本当にルーク様の魔法は、なんでも出来るのですね」


「なんでもは褒めすぎだよ。全て人生の中で得た経験や知識を、魔法として活用しているだけだよ」


 簡単に言っているけど、そういうものを蓄積するのは大変だ。なにせ、自分の能力や環境に努力といった、多くのものが必要なのだから。


 ……私には、無いものばかりで羨ましい。なんとか努力で補おうにも、他の必要なものが欠落しすぎている。


「今後の研究で、もっといい方法が思いつくかもしれないが、現状だとこれが最もいい方法だと思う。ただ、一般的に普及しているやり方とは違うから、習得するにはかなりの時間や労力が必要だろう。それに、かなり危険でもある。それでもやるかい?」


「当然ですわ。私は、そのために生きてきたのですから」


 ルーク様の言葉に、力強く頷いて見せる。


 そうだ、私は幸運にもルーク様と出会えたことで、魔法を使えるようになるための能力の使い方、練習をする環境を手に入れたんだ。あとは努力を積み重ねれば……きっと魔法が使えるようになるはず!


「わかった。練習を見てあげたいけど、僕はこのあとまた公務があるから、城に戻らなくちゃいけないんだ。かわりに人形を置いていくから、心配はないよ」


「本当にありがとうございます、ルーク様」


「あはは、どういたしまして。戻って来たら、杖の研究をさせてもらえると嬉しいな」


「はい、もちろんでございますわ」


 今日も素敵な笑顔のルーク様に、ほんの少しだけ口角を上げてみせた。


 本当なら、もっと素敵な笑顔をするべきなのだろうけど、まだそういうのは上手く出来ないみたい。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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