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【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました  作者: ゆうき


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第十五話 褒めてくれる相手が違うと

「遅過ぎる! ていうか、死んだと思ってたのに生きてたの? つまんな~い!」


 マーガレットのところに着いて早々にこの発言……イライラするなというのが無理だと思う。


「申し訳ございません。少々トラブルにあいまして」


「ふーん。んで、工芸品は? 当然素晴らしい出来だよね?」


「こちらをどうぞ」


 私は、購入した収納箱を取り出し、マーガレットに差し出した。


「きゃ~! なにこれ、キラキラしてて可愛い――って、どうして用意できてるのよ!?」


「どうしてと言われても、現地に行って購入してきただけですわ」


「あんな格好と装備で、一日で雪山を往復できるわけないでしょ!? どんなズルをしたのよ!」


 ズルをしているかしていないかで言うと、しているという回答になってしまうけど……話が拗れるから、言わない方が良いだろう。


「お姉様が苦しむ姿が見たかったのに……! あたしの思い通りにならないお姉様なんてつまんない! つまんな~い!!」


 悔しさを前面に押し出すように、ダンダンと地団太を踏むマーガレットの姿は、貴族のご令嬢とは思えない。悔しがる姿を見るのは爽快だが、同時にこんな人が妹と思うと、恥ずかしくなってくる。


「それで、気に入ってもらえたでしょうか?」


「ぐぬぬ……ま、まあお姉様にしちゃ……悪くないわね。少し褒めてやってもいいわ」


 マーガレットは、まるで苦虫を噛み潰したような顔で、渋々私を褒めた。


 マーガレットに褒められても、全く嬉しくない。おかげで、表情も心もピクリとも動かない。ルーク様の時とは大違いだ。


「それで……これを作った職人、なんて名前なの? 今度、その人に会ってあたし専用の物を作ってもらいたいんだけど」


「ザルドという男性のお方ですわ」


「ザルドですって!? あの気難しい頑固おやじから買ってきたの!?」


「え、ええ」


 どうやら、マーガレットはザルド様のことを知っているみたいだが、少しおかしい。私が話した時は、とても気さくで気持ちのいいお方だったのに……。


「申し訳ありませんが、今日はとても疲れたので、そろそろ失礼しますわ。おやすみなさい」


「あ、ちょ……待ちなさいよ! どうやって、あの貴族嫌いのザルドに依頼を出せたのか、話しなさいよ!」


 疲れているのに、これ以上マーガレットと話すのは御免だ。だから、適当に話を切り上げ、ルーク様の待つ汚い小屋へと戻ってきた。


「ただいま戻りました。って……ルーク様、もう大丈夫なのですか?」


「とりあえず動けるようにはなったよ。ベッドに運んでくれてありがとう」


 小屋に戻ってくると、先程まで寝込んでいたルーク様が、わざわざ私を出迎えてくれた。


 こんなふうに、帰って来たら誰かに迎えられる経験なんて久しくなかったから、変な感じだ。同時に、嬉しくもある。


「そんな、私にはそれくらいしか出来ませんでしたから」


「僕のことを考えてくれたのが、嬉しいんだよ。それにしても、わかっていたこととはいえ……酷いな」


 ルーク様は、私の住んでいる小屋をぐるっと見てから、重苦しいため息を漏らした。


「君が良ければ、いつ僕の小屋に来てもいいからね。毎日でもいいから」


「そうですね、その方が研究も捗りますものね」


「研究は関係ないよ。君には、少しでも良い環境で過ごせるようにしてあげたいんだ」


「お気持ちは嬉しいですけど……あなたの負担になってしまわないか、心配ですわ」


「遠慮しないで。むしろ、ここにいられるほうが、心配で研究どころじゃくなってしまう」


 そう言われると、これ以上遠慮することはできない。ルーク様のことだから、本気で心配してくれているのだろう。


「わかりました。では、時間に余裕が出来たら、伺わせてもらいます」


「うん、わかった。ああ、まとまった時間じゃなくても、問題ないからね。軽くお茶するだけでも、互いにとって素敵な時間になるだろうから」


「そうですわね。楽しみにしておりますわ」


 いつか来る復讐の成功くらいしか、人生で楽しみがなかった私が、誰かと過ごすことが楽しみと言える日が来るだなんて。


「それじゃあ、名残惜しいけど、今日はお暇させてもらうよ。長居して君の家族に見つかったら、君に迷惑をかけてしまうからね」


「わざわざ気にかけてくださって、ありがとうございます。ルーク様は、本当に優しいお方ですのね」


「お褒めに預かり光栄だよ。それじゃあ……」


 ルーク様は、空間の裂け目に入る前に、私の前に跪いて手を取ると、そっと自分の唇を私の手の甲にあてた。


「またね、シャーロット殿」


 そう仰りながら空間の裂け目に消えていくルーク様を、ただぼんやりと見送ることしかできなかった。


「…………」


 キスされた手の甲をじっと見ることで、自分が何をされたのかちゃんと理解し始めた。同時に、恥ずかしさで体中が一気に熱くなった。


 男性が女性の手の甲にキスするのは、社交界ではそれほど珍しいことではない。しかし、私は貴族であるのにも関わらず、誰かにしてもらった経験がない。


 そんな私の初めての相手が、あんなに素敵な王子様だなんて……ドキドキしないほうが無理な話だ。


「うう、熱が出たみたいに体が熱いですわ……それに、胸が凄くドキドキする」


 この感覚自体は、経験がある。酷いお仕置きを受けた後に熱を出して寝込んだ時、体が熱かったし、ここで死ぬかもしれないという恐怖で、胸がバクバクしていた。

 今も、それに近い感じだというのに……嫌な気持ちは一切ない。むしろ、顔がニヤけてしまう。


 こんな顔を家族に見られたら、きっと馬鹿にしているのかと、殴られてしまうだろう……。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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