表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました  作者: ゆうき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/82

第十三話 優しさへのお返し

 ルーク様に杖を貸し出してから一時間が経った。あれからルーク様は、何かあった時に被害が出ないように、外に大きな魔法陣を展開し、そこに杖を空中に立たせるようにしながら、ずっと何かブツブツと言っている。


「これは、本当に凄い数値だな……どれだけ精霊の加護を受ければ、これほどのものになるんだ……いや、もはやこれは精霊そのものといってもいいような……?」


 熱心に研究をするルーク様のことを、私は邪魔にならないところに座って、ジッと見つめる。


 見ている感じでは、杖に何か悪いことをしているわけではなさそうだ。信頼しても良いと思える人なのはわかってたけど、改めて大丈夫だろうと思わせてくれた。


「せっかく私のお願いを聞いてくれたのだから、何かお礼ができればいいのだけど……」


『お礼! お礼! シャーロット、優しい!』


 私のことが気にいったのか、ホウキの一体が私の膝の上で楽しそうに跳ねながら、たくさん褒めてくれた。


 見た目はただの小さなホウキなのだけど、愛嬌があってとても可愛らしい。可能なら、一体分けてもらいたいくらいだわ。


「良い案は無いかしら……なにかルーク様のお好きなものはご存じないかしら?」


『ご主人、お茶、好き!』


 お茶か……実家でよく淹れさせられるから、普通の人よりかはおいしく淹れられる自信はある。


「ここに茶葉はあるかしら?」


『ある! こっち!』


 ホウキの後をついて小屋の中に戻り、奥の部屋に向かうと、そこには小さいけど綺麗に整頓されているキッチンがあった。


 小屋に入ってすぐに部屋だけで、明らかに小屋よりも広いと思っていたけど、キッチンも入れると更に広くなる。やはり、この空間自体を魔法で作ったというのは、本当なのね。


『茶葉、これ!』


「あら、これは海外の有名な茶葉ですわね」


 茶葉によって、適切な淹れ方があるのだけど、この茶葉は扱ったことがあるし、どうすればおいしく淹れられるか調べたこともあるから、問題は無さそうだ。


「でも、勝手に使って良いのかしら?」


『大丈夫! 後で、説明、する!』


「わかりました。それじゃあ、準備をするので少々お待ちください」


 ――その後、準備に少し手間取ってしまったが、無事においしいお茶が出来た。これを飲めば、少しはルーク様にお礼ができると思う。


 さあ、外にいるルーク様を呼びに行かないと。


「ルーク様、少しよろしいでしょうか?」


「ふむ……いや、こっちは……うーん……」


「ルーク様?」


 どうやら、研究に集中しすぎて、私の声が届いていないようだ。大声で呼んでもいいのだけど、驚かせてしまうのは申し訳ない。


「ルーク様」


「ん? シャーロット殿、どうかしたのかい?」


「お茶を淹れたので、一緒に休憩しませんか?」


 気づいてもらえるように、顔を覗き込むようにしながら呼んだら、無事に反応してくれた。そんなルーク様は、私の言葉を聞いて、ぱあっと表情を明るくさせた。


「え、わざわざ僕のために用意してくれたのかい!? わぁ、嬉しいよ! ありがとう、シャーロット殿!」


「そんなによろこんでいただけるだなんて……」


「僕のことを考えて行動してくれたという事実が、何よりも嬉しくてさ。そうだ、ちょうど城から持ってきたおいしい菓子があってね。それと一緒にいただこうかな」


「それは良いですね。私はここでお待ちしてますので、何かご用があったらお声がけください」


「……え?」


「えっ?」


 思ったことを普通に伝えただけなのに、なぜかルーク様は目を丸くしている。私、何か失礼なことを言ってしまったかしら……?


「君も一緒に食べるんだよ」


「私もですか? そんな、ルーク様のために用意させていただいたものですから。そのお気持ちだけで十分ですわ」


「遠慮しているなら、その必要は無いよ。僕は君とお茶を楽しみたいんだ」


 誰かにお茶に誘われるだなんて、初めての経験だ。いつもなら、お茶の席に呼ばれても、何も出されずにただ見させられるだけだったり、給仕をさせられていたから。


「僕の誘い、受けてくれると嬉しいな」


「……はい、よろこんで」


 そっと差し出された手に、私のボロボロの手を乗せると、そのまま優しく手を引っ張られて、小屋の中に連れて来られた。


「おお、良い香りが既に部屋を包み込んでいる! これは今から楽しみで仕方がないね! えーっと、確かあれはキッチンに……あったあった!」


 一人でキッチンに向かい、おいしそうなクッキーを持ってきてくれた。私が用意したお茶は少し苦みが強いから、甘いクッキーとは相性がよさそうだ。


「ほら、こっちに座って」


「じ、自分で座れますから……」


「女性をエスコートするのは、男として当然のことだよ。ほら、おいで」


 ルーク様はにこやかに笑いながら椅子を引き、私を座らせてくれた。


 仰りたいことは理解できるが、ルーク様は一国の王子様だ。そんな人にエスコートをされるなんて、普通ではありえないことだ。


「……あの、どうして私に優しくしてくださるのですか?」


「ん? 急にどうしたんだい?」


「とても良くしてくれるのは嬉しいのですが、私達はほとんど交流がありませんでした。それに加えて、私は何の約束も無しにやってきました。だというのに、食事や入浴、服に魔法のやり方にエスコートにと、至れり尽くせりといっても過言ではありません」


 いくらルーク様が優しいとか、杖の研究をさせてあげているとはいえ、限度というものがある。

 だから、素直に聞いてみたら、ルーク様は一度お茶で喉を潤してから、答えてくれた。


「君が優しいから、かな」


「わ、私が優しい? ご冗談を……復讐を考えるような女ですのよ?」


「まあ、人によっては復讐をする人なんて! って思うかもしれないけど、君の復讐は母君を深く愛していたから、父君が許せなかったのだろう? それって、君が優しいからだと思ったのさ。そう思ったら、放っておけなくてね」


 そ……そうなのかしら。そもそも優しい人なら、復讐なんて考えないと思うわ。


「それに、もっと酷い人なら、力を手に入れたら、徹底的に痛めつけたり、殺したりすると思うよ? その点、シャーロット殿のやり方は、優しいやり方じゃないかな」


「さすがに、そこまでしたいとは思いませんわ。そんなことをしたら、お父様達と同類になってしまいますし、きっとお母様が悲しんでしまいますもの」


「そういうところが優しいって言っているのさ」


 ……よくわからない。私は自分が優しい人間とは思っていないから、いくら説明されても、この自己評価は変わらないと思う。


「おしゃべりもいいけど、まずはお茶をいただこうかな。せっかく用意してくれたのに、冷めてしまったら台無しだ」


「そうですわね。すぐに注がせていただきますわ」


「いいからいいから。僕に任せて」


 ルーク様は、やんわりと私を制止させながら、パチンっと指を鳴らす。すると、ティーポットがフワフワと宙に浮き、カップにお茶を注ぎ始めた。


「わあ、すごい……! これもオリジナル魔法ですか?」


「ああ。風属性の魔法を基盤に開発した、物を自由に動かす魔法だよ。まあ、大きいものだと魔力の消費量が凄まじいから、軽いものしか気軽に使えないのが難点だけどね」


 僕もまだまだだねと言いたげに嘲笑するが、私からしたら既に凄すぎて、目を輝かせてしまうくらいだ。


「それじゃあ、いただきます……うん、おいしい! シャーロット殿は、お茶を淹れるのがとても上手なんだね!」


「喜んでいただけてなによりですわ。それじゃあ、私も……いただきます」


 生まれて初めてのお茶を口にすると、口の中に程よい苦みとお花の香りが広がった。


 お茶って、こんなにおいしい飲み物だったのね。ルーク様のおかげで、こんな素敵な体験ができるなんて、少し前の私なら絶対に信じなかっただろう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


読んでいただいた方々に、お願いがございます。5秒もかからないので、ぜひ⭐︎による評価、ブックマークをよろしくお願いします!!!!


ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタッチすることで出来ます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ