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【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました  作者: ゆうき


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第十二話 君は優しい女性

 話が終わった後、部屋の中は驚くほどの静寂に包まれていた。


 無理もない。自分で話したこととはいえ、楽しい話じゃないのは自覚している。こんなのを聞かされたら、嫌な気持ちに――


「うっ……ぐすっ……えっぐ……」


 よく見たら、ルーク様は号泣していた。これには、さすがに驚いた。


「大丈夫ですか……? もしかして、今の話で嫌な気持ちに……」


「違う! 無理やり連れて来られて身籠らされたのに、深く愛してくれた母君の深い愛情! 危険な場所に連れて来られても、自分の安全など顧みずに君を守り、そのうえ寂しくないように杖を残すだなんて! どれだけの愛があれば、こんなことが出来るんだ! そして、母君の事を今もずっと想っているシャーロット殿の愛情も素晴らしい!そう考えたら、涙が止まらない……!」


 お母様のことを、そんなに良く捉えて、しかも泣いてくれるのが嬉しくて、私まで泣きそうになったが、なんとかグッと堪えた。


「お母様のことを、そんなによく思ってくださり、ありがとうございます。きっとお母様も、天国で喜んでくださっておりますわ」


 本当なら、ハンカチで涙を拭って、少しでも感謝の気持ちを伝えたいのに、私はハンカチすら持たせてもらえていない。


「今の話を聞いた後だと、杖を借りるのが忍びなくなってしまったよ……」


「構いませんよ。先ほどお伝えしたように、助けていただいたご恩を返したいですし、あなたなら信用できますもの。これでも私、色々なお方の悪意に晒されてきたおかげで、人の悪意に敏感ですの」


「そ、それは喜ぶべき力なのかな……?」


 自分の服で涙を拭うルーク様の仰りたいことは理解できるが、思った以上にこの人を見る目は役に立つ。

 嫌な人には極力近づかなくて済むし、今みたいに、ルーク様がとても良い人だというのもわかる。


「それで、この杖を調べてどうするのですか?」


「杖を研究して精霊の力を学び、疑似的な精霊を作って、それを媒介に地脈を引っ張ってきて……みたいなやり方ができればいいなって思ってるよ。まあ、あくまで予定だけどね。さっきも伝えたけど、杖を奪うことはしない。君がここにいる時だけしか借りないと、約束する。もちろんタダじゃない。君の望むことなら何でもするよ」


 内容に関してはよくわからなかったけど、とりあえず凄いことをしようとしているのはわかった。それだけわかれば十分だろう。


「なんでも……それなら、私を魔法が使えるようにしてください。魔法が使えるようになって、お母様の仇を取りたいのです!」


「なるほどね……先程の話だと、君は魔力はほぼゼロで、精霊の加護が異様に高い。僕とは本当に真逆だね……そこに、あの杖があると……ちょっと時間を貰ってもいいかな? 僕はあの杖について、まだ無知すぎる。変に期待させて、ダメだった時に君をがっかりさせたくないんだ」


「わかりました、ありがとうございます!」


 自分一人では、魔法が使えるようになるまでの見通しが全然立っていなかったから、とてもありがたい。これでもし魔法が使えるようになったら、ようやく復讐が出来る!


「一つ気になったんだが、一体どうやって復讐をするつもりだい? まさか、魔法を使えるようになって、ボッコボコにするとか?」


「お、王子様がそんな汚いお言葉を使うのは、控えた方が良いかと……」


「あはは、必要な時以外は、堅苦しい言葉も態度も取らないようにしているんだよ。いつも肩肘を張って生活するのは、疲れるだろう?」


 王族の方なのに、どうしてそんな口調なのかと疑問に思っていたけど、そういう理由があったのね。確かにここなら、誰もいないから楽にしても問題は無さそうね。


「それに、こっちの方が君としても接しやすいかなと思ってね。不快だったら、丁寧に話すよ?」


「いえ、今のままで結構ですわ。親しみがある方が、私は好きです。それで、話を戻しますと……ルーク様もご存じかと思いますが、宮廷魔術師を決めるための試験がございますわよね」


「ああ。毎年行われるやつだね。確か、もう十年は合格者が出ていないね」


「はい。私の家は、多くの優秀な魔法使いを輩出したことで、爵位をいただいた一族です。当然、長い歴史の中で、宮廷魔術師の職に就いたお方もたくさんおります。その試験に、妹が来年受けることになっていて……私も一緒に受けて、私が宮廷魔術師になって大恥をかかせてあげようかと……」


 情けないことに、私にはこれ以上の復讐が思いつかなかった。

 でも、お父様もマーガレットもプライドの塊だから、散々馬鹿にしてきた私に宮廷魔術師になられたら、この上ない屈辱を与えられると思ったの。


「ふむ、なるほどね。変に痛めつけるよりも、効果的だと思うよ」


 ……もしかしたら、もっといい方法があるんじゃないかと思っていたから、こうやって認めてもらえると、少しホッとする。


「それじゃあ、早速杖を借りてもいいかな?」


「ええ、どうぞ。あ、直接は触らないように――」


 言い切る前に、ルーク様は机に置いた杖を握ってしまった。すると、杖から強烈な電撃が発生し、ルーク様を容赦なく襲った。


「る、ルーク様!? ご無事ですか!?」


 電撃の眩い光が収まると、そこには黒焦げになりながらも、目を輝かせるルーク様の姿があった。


「なるほど、これが先程シャーロット殿が言っていた拒絶反応か! 道具が自らの意志で拒絶するとは、非常に面白い! それに、魔法の威力も素晴らしい! これなら、大型の獣に誤食されても、かみ砕かれる前に殺せるだろう!」


「あ、あの……大丈夫なのでしょうか……?」


「ああ、心配をかけて申し訳ない。咄嗟に防御魔法を使ったから、特に怪我は無いよ」


 そんな黒焦げの姿で仰られても、説得力が全然無いけれど……本人がそう仰るなら、きっと大丈夫……よね?


「ホウキ達、すまないが体を綺麗にしてくれないかい?」


『綺麗! 綺麗!』


『ご主人、綺麗!』


 ホウキ達は、ピョンピョン跳ねてルーク様の所に来ると、素早く掃いてルーク様を綺麗にしてくれた。


 そうして綺麗になったルーク様だったが、つい数秒前と比べて、明らかに顔色が良くない。真っ青になっているし、プルプルと小さく震えている。


「ルーク様、本当に大丈夫なのですか!?」


「あ、ああ。大丈夫大丈夫。急に魔力を膨大に消費した影響が出ているだけだから。これ、いつものことなんだよね」


「いつもこうなのですか!?」


「致命傷になるまでは無理しないから、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、シャーロット殿。君はとても優しい女性なんだね」


 そう言いながら、ルーク様はにっこりと笑った。


 私が優しいだなんて、お母様以外の人にはじめて言われた。なんだかムズムズして恥ずかしいけど、不思議と心が温かくなるのを感じた。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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