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【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました  作者: ゆうき


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第十話 この世界の魔法とは

 結局その後、私はお魚を三匹も平らげ、いつぶりかわからない満腹感を感じていた。

 ルーク様やホウキ達、そして私の栄養となってくれたお魚達に、感謝の気持ちを伝えなくちゃ。


「ごちそうさまでした」


「お粗末様でした。満足してもらえたかな?」


「はい、とても。皆様には、感謝してもしきれませんわ」


 さっきは醜態を晒してしまったが、なんとか落ち着きを取り戻した私は、いつものように背筋を伸ばし、真剣な表情で相対する。


「それはよかった。さて、色々落ち付いたところで……改めて自己紹介をしよう。僕はルーク・クレマン。このクルマン王国の第一王子だ。ここで魔法の研究をしているんだ!」


「ご丁寧にありがとうございます。私はシャーロット・ベルナールと申します」


 互いに名前は知っているのだから、今更自己紹介をする必要があるのかは疑問だが、接点はほぼ無かったし、彼がやりたいなら付き合ってあげてもいいかなって思ったの。


「ああ、よろしく、シャーロット殿!」


「よろしくお願いいたしますわ。ところでルーク様、先程研究していると仰っておりましたが、どういうことなんですか?」


「言葉の通りだよ。僕は精霊の加護がない人でも魔法が使えるように、ここで研究に勤しんでいるのさ」


 魔法を使うには、生まれ持った魔力という才能と、もう一つ必要なものがある。それは、精霊の加護だ。


 この世界には、精霊が世界中にいるとされている。この精霊の加護というのは、生まれた時に精霊に祝福され、加護を付与される。


 魔法の仕組みとしては、魔力を使って加護を授けてくれた精霊と繋がり、魔力を渡すと、この星の生命の根源と言われる、地脈から力を引っ張ってきてくれる。その力を精霊から貰うことで、初めて魔法として発現する。


 この魔法というのは、主に火・水・土・風・雷の五つの属性に分かれている。これらに分類されない魔法も存在するが、それらを扱える人はごく稀だ。


 つまり、魔力がなければ精霊と繋がれなくて魔法が使えず、魔力があっても精霊の加護なければ、地脈の力がもらえないため、魔法は使えない。


 私の場合は、精霊の加護はとてつもないが、代わりに魔力がほぼゼロに近い。だから、いくら魔法を使っても、全然成功しないというわけだ。


 だからといって、はいそうですかと諦められないから、ずっと魔法の練習は続けている。


「僕は規格外の魔力量なのだけど、精霊の加護が全く無くてね。最初の頃は、生まれた順番や、この魔力量を評価されて、僕が王になる予定だったのだけど、三年前に、父が弟のハリーに、王位継承権を渡してしまったんだ」


「そんな、どうして?」


「魔法の才能がずば抜けて高くてね。それに頭もいいし……色々と加味した結果、弟の方が優れていると判断された。うまくいけば、素晴らしい王になるだろうが……」


 なんだか、歯切れの悪言い方だ。もしかして、何か問題があるのだろうか?


「彼は性格や振る舞いに難があってね。可能性は、大いにあり得る。父上には何度も話したが、それよりも彼の才能を評価してね……このままでは、国は衰退して滅ぶ可能性がある。そんなの、冗談じゃない。僕が国王になって、必ず民を幸せで豊かにする。そのために、僕自身が魔法を完璧に使いこなせるようにならなければならない!」


「今のままではダメなのですか?」


「今のままだと、魔力の消費が尋常じゃないんだ。だから、考えなしに魔法を使うと、疲弊してしまうんだ。この研究は、僕が完璧に魔法が使えるようになるためでもあるんだよ」


 そのようには見えないけど、顔に出していないだけで、本当はつらいのかもしれないわね……。


「このやり方を確立すれば、僕が国王に相応しいと父上に考えてもらえるはず。そして、国王になったら、この研究で得た技術を使って国の防衛を高めると同時に、いつかは精霊の加護だけではなく、魔力が無くても、みんなが平等に魔法が使えるようになって、魔法が使えない人への差別をなくしたい! だから、僕は研究をしているんだ!」


「…………」


 研究の理由が、あまりにも立派な内容すぎて、復讐しか頭にない自分が恥ずかしくなってきた。


「あはは、その顔は信じられないって感じかな? 気持ちはわかるけど、本当だよ。ほら、魔法って五属性に由来するものしか使えないのが通説だけど、このホウキとか何の属性? ってならない?」


 それは確かにそうだ。属性を応用して色々な形にする人はいるが、自我を持つホウキなんて、どの属性を使っても無理だろう。


「空間の裂け目とか、この小屋の中とか、その服もそう。全て、研究で生まれたオリジナル魔法を使っているんだ。裂け目は研究のために、多くの場所に作ってあるんだよ。そのうちの一つが、君が通ってきた裂け目だね」


「す、凄すぎて言葉が出てきませんわ……」


 精霊の加護が無いのに魔法を使うのも驚きなのに、使用している魔法の規模が普通とかけ離れている。これで驚くなというほうが無理だわ。


「あれ、でもどうして私が裂け目を開けたのでしょう……?」


「それは……僕にもわからない。裂け目は普通の人には見えないからね。それが見えて、なおかつ開くことが出来るなんて、信じられないよ」


 魔法に精通しているルーク様がわからないようなことを、私が考えてもわかるはずがない。きっと考えるだけ無駄だろう。


「さてと、僕の目的を話したところで……君に謝らなければならないことがある」


「え?」


「先程手を繋いだ時、僕は君の記憶を見る魔法をこっそり使って、ここに来るまでの経緯や、道中を見させてもらったんだ。知っている人とはいえ、ここに来るなんて、何か企んでいるのかと思ってね。大変失礼なことをしてしまい、申し訳ない」


 いつのまに、そんなことを? 見られて困る物は無いけど、ちょっぴり恥ずかしい。


「かまいませんわ。突然お邪魔した人間を警戒するのは、当然のことですもの。それに、理解していただいているほうが、話が進みやすいですし。そもそも、私のことなど、社交界では有名ですからね」


「寛大な心に、深い敬意と感謝を。それにしても、良い待遇を受けていないのは、なんとなくわかっていたが、口に出すのも憚られるようなことを経て、ここにたどり着いたんだね……全て見たわけじゃないが、それでも心が痛んだ。本当に、苦労したんだね」


「お心遣い、痛み入ります。何とか目標のために、今日まで生きてこられましたわ」


 目標というより、野望に近いかもしれないけど……わざわざ言う必要は無いだろう。そもそも、言わなくても知られてしまっている可能性もある。


「なるほど……一つ、質問いいかな?」


「はい」


「君の中に隠れている……杖かな? それは一体何なんだい?」


 杖……もしかして、この人もこの杖が欲しいのだろうか。どこにいっても、この杖を欲しがる人がいるのね。

 普通なら警戒するが、助けていただいた恩があるから、教えたり見せるくらいなら、別に構わない。


「これは、お母様の形見です」


「立派な杖だね……杖から感じる精霊の力が、とてつもない。こんなの、精霊しか作れないだろうな」


「お母様が、人間と精霊のハーフなのです。そのおかげか、私は精霊の加護が人一倍あるうえに、精霊と話したり出来たりします」


「精霊と? 長い歴史の中でも、精霊と話が出来るのは、数える程度しかいないが……なるほど、精霊の血があるのなら、納得できる話だ」


「ですが、お母様がいなくなってから、話すことも姿を見ることも出来なくなってしまいましたの」


「母君が……本当に、大変だったね」


 形だけの心配かもしれないけど、心配してもらえるだけでも、こんなに嬉しく思えるんだ。


「話を戻しましょう。どうして杖のことを聞いたのですか?」


「君が良ければ、杖を貸してほしいんだ」


「え、えぇ!? もしかして、あなたも私から杖を……?」


「か、勘違いしないでほしい! 別に君から取り上げるわけじゃないんだ! 君が一緒にいる時でいいから、実験で使いたいんだ! もちろん壊さないから、そこは心配しなくていいからね!」


 ……嘘をついているような感じではなさそうだ。本当に、ただ借りたいだけなのだろう。


「は、はあ……本当は借したりもしないのですが、あなたには恩がありますし、信頼するに値するお方だと思うので、お貸しするのはやぶさかではありません。ただ、私以外の人が触れると、拒絶反応が出るから、お気をつけてください」


「ありがとう! ちなみになんだが、母君の形見と言っていたが、母君はどこで手に入れたんだい?」


「……この杖のことを話すと、長くなってしまいますが……よろしいですか?」


「もちろん。僕から聞いたんだ、何時間でも聞くさ」


「わかりました。それではお話いたします。私の過去、そして私のことを愛してくださった、大切なお母様と杖のことを――」

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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