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プロローグ

 週末の午後。ユニバーサル・デジタル・ラボラトリーズという、日米の企業が合弁で開設したコンピュータ関連技術の研究所の一室では、最近実用化されたVRシステムの使用データがシステムのチェックを兼ねて検証されていた。

「おい、このデータ、今朝の見学会のやつか?」

 AIにデータ検証を行わせていた職員は、一人のデータを異常として検知して報告している画面を見つめていた。

「え? ああ、そうですよ。ここに被験者のデータが」

 問われた職員が表示されたデータを触ると、より詳細なデータが表示された。

「高校の見学者か。誰のだかわかんねえな。個人データ抽出できる?」

「ちょっと待ってください。名前だけは閲覧可になってますね。社外秘ですよ」

「ここ以外で出すこともないよ」

 もう一人の職員は、キーボードを前に引き出し、叩く。

「マリー=クロード・デュラン? 外国人か? 留学生か何かか?」

「さあ。あの金髪の女の子でしょ。可愛いし見栄えもするからって、選んだんじゃないですか」


 VRシステムで様々な乗り物や機器を遠隔操作、または搭乗体験できるようになり、人々は居ながらにしてリアルな体験が出来るようになった。VRシステムは、娯楽用途以外にも、人が直接赴くことが難しい、深海での作業や、高熱・高圧の発生する工業施設などでも使用されるようになっていた。

 そうしたVRシステムも、耳や目を介さずに直接脳に情報を送る、ブレイン・マシン・インターフェースによる製品も一部で普及の兆しを見せていた。

 そうした技術を開発する企業は、開発競争で優位に立つべく様々な手段を講じていた。企業が開発している製品を一般にアピールすることが目的の、テレビ局などの報道も入っている見学会のような、従来からあるような地味な活動も相変わらず行われていた。

 学生の見学者を迎え入れて、それをテレビやネットのニュース映像として視聴させるのもその一つだった。


「で、何がおかしいんですか?」

「いや、今日の体験イベントは、月面のローバーを操作するやつだっただろう?」

「ああ、みんな四苦八苦してましたね」

 月と地球の距離は、約38万km。光のスピードで1.3秒弱。地球上のVRシステムから月に送信し、それが帰ってくるまで2.6秒ほどかかることになる。自分が動かした結果は2.6秒後でなければ分からない。動かしては2.6秒待つ、ということを繰り返し、フラストレーションをためるものもいた。

「この子だけ、操作を待っている、タイムラグが無いみたいなんだ」

「そうなんですか? あれじゃないですか、結果を待たずに適当に動かしたとか」

「そうならいいんだがな。今日のは決められたコースを辿るやつで、一周に30秒くらいかかる。それを一度も止まらずに走らせてる。初見でな」

「それは……。 前にも見学会に来たか、事前に練習させたとか?」

「それが知りたいな。以前のデータは閲覧可能か? 個人データ含めて?」



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